湘南乃風インタビュー|これが俺たちの20年!ベストアルバムに詰め込まれた反骨と反逆のレゲエ (2/2)

湘南、新橋、新宿

──そんな湘南乃風の音楽性を濃密にパッケージしたのが、今回リリースされた「湘南乃風 ~20th Anniversary BEST~」。20周年にふさわしい大ボリューム作になりましたね。

SHOCK EYE 20年もやってると入れたい曲が多すぎて削れないんですよ(笑)。代表的な曲だけを収録した1枚のアルバムにすると、湘南乃風としての色が見えづらくなるので、今回は3枚組にしようと。さらに、それぞれの盤をコンセプチュアルなものにしたのがこだわりですね。

HAN-KUN そこは旦那がかなりこだわってたよね。

若旦那 それぞれに地名をつけたとこね。ちょっと悪ふざけな感じですけど(笑)、単純にDISC 1、DISC 2、DISC 3っていうのはイヤだったんですよ。

若旦那

若旦那

──3枚にはそれぞれ「湘南 ~134号線~ 編」「新橋 ~ガード下~ 編」「新宿 ~歌舞伎町~ 編」というタイトルが付けられていて、その地名のイメージにまつわる楽曲が収録されています。

若旦那 まず地名を決めてから曲を振り分けていった感じで。

HAN-KUN 選曲はスタッフさんたちにある程度リードしてもらったんですよ。その結果、自分たちのベストアルバムを客観的に知れた感じがあって面白かったですね。

若旦那 すべてを自分たちで選ばなかったからこそ、「いいね」って素直に言えたところもあったと思う。衝突一切なし、ノンストレスでスムーズに進みましたよ。今の湘南乃風はそういう風潮なんでしょうね。

SHOCK EYE 風潮(笑)。

若旦那 肯定的な風潮。世の中もそうなってほしいよね。みんなで足引っ張って、傷つけ合うんじゃなくてさ。いろんな正解があっていいんだよってことを認め合う世の中になってほしいもんです。

HAN-KUN スケールがデカい話になっちゃってるけど(笑)。

若旦那 そういう気持ちが込められてるベストでもあるってことですよ。あとね、今回はそれぞれの盤のイメージに合わせて複数のジャケ写を撮ったんですよ。新橋ならほっぺたを真っ赤にした、酔ってる風の4人で。新宿はちょっと悪そうな感じで撮ったり。

SHOCK EYE 「龍が如く」的なね(笑)。そういう遊び的な部分も楽しみにしていてほしいですね。

──「湘南 ~134号線~ 編」には、夏や海といった湘南乃風のアイデンティティを感じさせる曲がまとめられていますね。

RED RICE みんなが想像する湘南の夏っていう感じですよね。俺らの明るい部分が詰まった1枚なんで、ドライブをするときに聴くとテンションが上がるんじゃないかな。新旧バランスよく、いい歌が入ってますね。

SHOCK EYE めっちゃいいラインナップだよね。入れたい曲が全部入った。

RED RICE 個人的には「Summers」が好きなんですよ。さまぁ~ずさんの番組(「7つの海を楽しもう!世界さまぁ~リゾート」)のために書き下ろしたんだけど、すごくハマったんですよね。「睡蓮花」を追い超したいって気持ちで毎年のように強力な夏曲を出し続けてきた中で、ちょっと肩の力を抜いた曲を作れたことがうれしかったですね。

SHOCK EYE ベスト盤には新曲も入るから楽しみにしててください。

HAN-KUN 新曲では「魔法のiらんど」っていう小説投稿サイトとコラボレーションさせていただいて。“終わってしまった恋”というテーマで投稿していただいた小説の中から1つを選んで、それをもとに曲を仕上げました。小説の物語とリンクしてるところもあるので、小説を読みながら聴いてもらっても楽しいと思います。

HAN-KUN

HAN-KUN

湘南乃風のセカンドステージ

──「新橋 ~ガード下~ 編」は、働く人たちへの応援歌となる楽曲を中心に構成されています。

若旦那 父ちゃん母ちゃんに向けた曲が中心です。湘南乃風の曲には喜怒哀楽のすべてが詰まっていますけど、この盤の曲たちは“哀”が強め。

SHOCK EYE 人情とか、そういう部分だよね。

若旦那 うん。酒に涙を浮かべて、濁った自分の顔を見ながらクッと全部飲み干してっていう。そういう感じが俺はやっぱ好きだし、そんな弱々しい自分に喝を入れてくれるのも湘南乃風だと思うんですよ。ギュッと抱きしめて、「いいんだよ、それで」って言ってあげるのも湘南乃風。人間って所詮そんなもんですよねっていう部分を感じてくれたらいいなって思いますね。俺らはよく「勝ち上がれ!」って言ってますけど、別に勝ち上がらなくてもいいんじゃないのってことを「新橋盤」では主に歌ってます。成功だけがすべてじゃないよっていう。

──この盤には、NHK「みんなのうた」の6、7月期の放送曲「君に」が収録されています。

SHOCK EYE 湘南乃風として子供の歌を作ったのは初めてじゃないかな。子供に対して親の価値観を押し付けてしまうことはよくあるけど、そうではなく、もっとその子自身の個性を尊重すべきだよねっていうことを歌っています。この曲のようなメッセージは、湘南乃風セカンドステージの大切な要素になってくるような気が僕はしているので、ファンのみんなの反応が楽しみですね。

──そして「新宿 ~歌舞伎町~ 編」には漢気あふれる熱い曲がたっぷりと。

HAN-KUN このディスクの曲たちを携えて、歌舞伎町にステージを立ててライブしたいくらいですよね(笑)。湘南乃風のライブにおけるベストセレクション的な内容だと思います。

SHOCK EYE 昔はね、ライフスタイル的にも「この野郎、負けてたまるか!」みたいな感情が曲にそのまま投影されていたところがあったけど、活動を重ねてきた中で、そういう闘争心みたいなものはライブに向かっているような気がしていて。自分の中に眠っている炎、エネルギーみたいなものを放出する曲たちっていうのは、やっぱりライブには必要不可欠なツールだと思いますね。

SHOCK EYE

SHOCK EYE

──新曲として収録される「天上天下唯我独尊」は、今年1月の武道館ライブに参加した人は聴き覚えがあるかもしれないですね。

HAN-KUN そうですね。武道館のラストで、横浜スタジアム公演を発表するときに流した、1分ちょいくらいの短い曲です。改めてバースを加えることも考えたんですけど、あえて武道館で流したままの形で収録しました。ある意味、原点回帰というか、20年経っても変わらない湘南乃風の根幹を歌詞と音に込めた感じです。

次の一歩を刻む場所

──8月12日に横浜スタジアムで開催されるライブ「風祭り at 横浜スタジアム~困ったことがあったらな、風に向かって俺らの名前を呼べ! あんちゃん達がどっからでも飛んできてやるから~」は20周年イヤーの集大成になると思います。最後に、この公演への意気込みを聞かせてください。

HAN-KUN ツアーを通してみんなに担いでもらった神輿を横浜スタジアムに奉納できることが本当にうれしいです。同時に、一発勝負のライブを誰が観ても最高のクオリティになるように完成させなきゃいけないという責任感も湧き上がっているので、音楽家として気を引き締めて挑もうと思います。

SHOCK EYE 10周年のときに立った横浜スタジアムで「またこの地で」と歌ったことが、奇しくも20周年で実現できるのが本当にうれしいですね。紆余曲折はあったけど、このメンバーでまたあの場所に立てることが誇らしくもあります。湘南乃風の次の1歩を刻む場所として、後悔しないように臨むつもりです。

RED RICE この20年、つらいこともいろいろあったけど、そのすべてを今、力に変換できていると実感しています。順風満帆じゃなかったからこそ、自分たちの限界を超えるライブができると信じています。ぜひみんなで、ありえないような景色を一緒に見ましょう。

RED RICE

RED RICE

若旦那 ……言いたいことは、ほぼみんなに言っていただいたな(笑)。そのうえで1つ言うならば、横浜スタジアムで終わりにする気はないっていうことですね。僕は阪神ファンなんで、次はぜひ甲子園でライブをしたいです。

SHOCK EYE おお、いいね。いつか甲子園でやれたらいいよね。

若旦那 うん。梅田から甲子園までの駅を湘南乃風がジャックして。みんなで虎の縦縞のユニフォーム着てさ。

RED RICE 全然いいんだけど、旦那はややこしいよね。世田谷出身なのに湘南乃風を名乗ってるし。そのうえで阪神ファンっていう。複雑(笑)。

若旦那 反逆者だね。甲子園が実現したら神宮球場とかマリンスタジアムとか東京ドームとか、いろんなスタジアムをツアーで周りたいよね。そのための1歩として、横浜スタジアムを大成功させようと思います。

湘南乃風
湘南乃風

湘南乃風

ライブ情報

湘南乃風 二十周年記念公演「風祭り at 横浜スタジアム~困ったことがあったらな、風に向かって俺らの名前を呼べ! あんちゃん達がどっからでも飛んできてやるから~」

2023年8月12日(土)神奈川県 横浜スタジアム

プロフィール

湘南乃風(ショウナンノカゼ)

RED RICE、若旦那、SHOCK EYE、HAN-KUNの4人からなるジャパニーズレゲエグループ。2001年頃からコンピレーションアルバムや他アーティストの作品にゲスト参加するようになり、2003年7月にアルバム「湘南乃風 ~REAL RIDERS~」でメジャーデビューを果たす。2006年に大ヒット曲「純恋歌」を含むアルバム「湘南乃風~Riders High~」をリリースし、約60万枚を超えるヒットを記録。ジャパニーズレゲエシーンを牽引する存在として支持を獲得する。2020年5月に中田ヤスタカ(capsule)とタッグを組み、「一番歌」などを収録したアルバム「湘南乃風 ~四方戦風~」をリリース。2021年7月に加山雄三の楽曲「海 その愛」を使用したシングル「湘南乃『海 その愛』」を発表した。2023年7月にメジャーデビュー20周年を記念したベストアルバム「湘南乃風 ~20th Anniversary BEST~」が発売された。