しゅーずがニューアルバム「DEEPEST」を8月7日にリリースする。
2009年に“歌ってみた”動画を投稿し、今年で活動10周年の節目を迎えるしゅーず。最新作「DEEPEST」では、色気のあるアダルトな作風で独自の路線を切り開いてきた彼の強みが前面に押し出されている。音楽ナタリーではアルバムの発売を記念して、しゅーずへの初インタビューを実施。しゅーずの作風を決定づけた作家・みきとPが手がける新曲「Highway Lover」などアルバム制作にまつわる話や、活動10周年という節目を前にした現在の心境を語ってもらった。
取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 星野耕作
「XYZ」の時期は特に気合いが入る
──しゅーずさんは今年の10月で活動10周年を迎えます。10年間活動を続ける中で、音楽への関わり方はどう変わりましたか?
活動初期の頃と違うのはもちろん、1枚目のアルバム「Shoose Box」(2015年11月発売)の時期と比べても、音楽との関わり方はだいぶ変わったと思います。それこそ、1stアルバムのときは「CDを出させていただいてありがとうございます!」という感じで、もうリリースできるだけでうれしかったわけですけど、最近はCDを出すのであればよりよく見せるためにどういうコンセプトにしたらいいか、どういう曲を選んで、誰に書き下ろしを書いてもらうべきか、すごく考えるようになりました。ただ、僕は音楽活動以外の仕事もしていて、最近はそっちがわりと忙しくなってきて……。
──音楽活動との両立が難しい?
そうですね、1つの悩みではあります。自分のツアーだけじゃなくて「XYZ TOUR」にも定期的に出させてもらっていて、ちゃんと音楽活動も続けていきたいんですけど、どうしても両立が難しい時期もあって。こう言うとファンの方が不安がるかもしれませんが、昔は「音楽活動はいつでも辞められるし」と思ってたんですよ。でも今は辞めるに辞められなくなってきたからこそ、どっちもしっかりやるのは難しいなと感じています。
──ご自身のソロ活動だけではなく、しゅーずさんは「XYZ TOUR」に初期の頃からに参加し続けているメンバーでもありますよね。
ツアー形式なので全公演に出演するのは難しいんですけど、僕、最初のツアーから毎年参加させてもらっているんですよ。最初からいるメンバーって、オーガナイザーであるluzくん以外では、僕、nqrse、un:cさんくらいじゃないかな。
──年を重ねるごとに規模感が拡大している「XYZ TOUR」の変化について、初期の頃から携わっているしゅーずさんはどう感じていますか?
最初の頃と比べて格段にレベルが上がってると思います。メンバーの歌唱力はもちろん、ステージ上の演出とかがものすごく豪華になっているし、新しいメンバーが次々と入ってきて、それがみんなすごいパワーを持ってるんですよね。どんどん豪華に、パワフルに進化していってるのが「XYZ TOUR」だと思います。
──しゅーずさんの1年の活動の中で、ツアーへの参加はどういう意味合いを持っていますか?
「XYZ TOUR」でしか会えない人もたくさんいますし、いろんな方と共演するのは刺激になりますね。ツアーの期間中はみんなに感化されて音楽活動につい力が入っちゃうというか(笑)。1年の中でも特に気合いが入る時期だと思います。
みきとさんに書いてもらわないと困る
──今作「DEEPEST」を作るに当たって、しゅーずさんはどんなアルバムを作ろうと考えましたか?
いろんなボーカリストが自分のカラーというものを持っていて、僕にとってのそれが何か考えたとき、僕は自分の “アダルトな歌い方”が1つの武器なのかなと思うんです。いろんなボーカリストがいますけど、そこに特化した方はあまりいないんですよね。これまで僕は「Shoose Box」「Shoose Case」と2枚のフルアルバムを発表してきましたけど、今作はこれまでの作品よりもっと“アダルト”な部分に特化していいんじゃないかなと。
──これまでのアルバム作品のアートワークはさわやかなイメージでしたが、今作「DEEPEST」ではそのイメージをガラッと変えたわけですよね。
はい。これまではアダルトな曲は歌っていても、アートワークはちょっとさわやかなイメージだったんですけど、今回はアートワークからちょっとダークな感じにしたほうがいいと思って。それと、これまでアルバムには「Shoose」という言葉を使ってきたんですけど、正直もうネタ切れで(笑)。「界隈でもちょっとディープな存在になったよね」という意味を込めて「DEEP」の最上級を意味する「DEEPEST」という言葉をタイトルにしました。
──しゅーずさん自身は「アダルトな曲が合う」というイメージをどう感じているんでしょうか?
本音で言うと「エロさ」をガンガン前に推し出して注目されたいとは思ってなくて。ただ、アダルト曲を歌うと再生数が伸びることもわかっていたし、「XYZ TOUR」ツアーでもそういう曲を歌うことが求められてしまう。だったらこれは1つ武器にしてしまったほうがいいなと吹っ切れたんです。客観的に考えてみて「セカンド・キス」(2017年5月発売のアルバム「Shoose Case」収録曲)とか今作に収録されている「Highway Lover」とか、こういう大人っぽいラブソングを艶っぽく歌うとして、誰が歌える?と考えたときに先陣を切れるボーカリストにはなれているよなと思って。自分の武器をようやく自覚した感じですね。
──その「アダルトな作風」の大きな要因となっているのがみきとPさんの提供曲だと思うんです。特に「セカンド・キス」の存在が大きく、「Highway Lover」は「セカンド・キス」と地続きの作品として書かれたものですよね。
「セカンド・キス」を書いていただいたときは「こんなエモすぎる曲が僕に歌えるのか」と驚いていたくらいなんですよ。ここまで振り切ることができるのか、自分でもわからなかったんですけど、実際に歌ってみるといろんな方から「セカンド・キス」を評価していただいて。今回アルバムを作る際には僕のほうから「みきとさんに書いてもらわないと困る」とオファーさせていただいたんです。
──「セカンド・キス」という評判の高い楽曲がすでに生まれている以上、次のコラボはハードルが高くなりますよね。しゅーずさんからみきとPさんにはどんなオーダーをしたんですか?
まずみきとPさんに書いていただく曲が「DEEPEST」というアルバムのリード曲になることを先に決めていたので、そのことと、「セカンド・キス」が不倫の歌なので、その世界観は引き継いでほしいと伝えました。アルバムの1曲目に収録することまで考えていたんですけど、みきとさんに書いてもらう新曲は、みんなの心をバッチリつかむようなキャッチーなものである必要はないなと思っていて。いわゆるスルメ曲と呼ばれる、何度も聴いて曲にどんどんのめり込んでいくような、そういう曲を書いてほしかったんです。あと、自分で言うのもアレですけど、「2番手の女性の歌は得意です」みたいな話をして……(笑)。
──「セカンド・キス」と同じテーマであることが、すでにしゅーずさんの武器になっていると。
はい。楽曲のイメージとして「深夜の首都高」とか「首都高を照らす光が車の窓に当たってふわふわしてる感じ」とか、自分なりの“2番手の女性”の恋愛をテーマにした情景を伝えました。結果として、予想以上の曲が返ってきたので、みきとPさんは本当にすごい方だなと。
──しゅーずさんが伝えたイメージはミュージックビデオの映像に生かされています。
MVは僕が歌唱したバージョンと、みきとさんのボカロバージョンの2種類がアップされていて、カバーができるようにオフボーカル音源も公開されているんです。みきとさんには「書き下ろし曲のインストを上げることについて、どう思う?」と聞かれたんです。僕が正直に「いろんな人に歌ってもらえるのはありがたいんですけど、越えられると困ります」と答えたら、みきとさんが「でもこの曲は書き下ろしなんだから、しゅーずくんが一番であるべきだし、どんなにうまく歌ってもしゅーずくんの歌にはかなわないよ」って言ってくれたんですよね。尊敬する作家さんにそう言ってもらえて、本当にうれしかったですね。
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