音楽ナタリー PowerPush - SHISHAMO
急成長するスリーピースバンドが追求した“らしさ”
SHISHAMOが3月4日にニューアルバム「SHISHAMO 2」をリリースした。昨年10月に前ベーシストの松本彩が脱退し、新たに松岡彩(B)が加入したSHISHAMO。新体制でレコーディングされた今作には宮崎朝子(G, Vo)が前作の「SHISHAMO」の収録曲よりも“SHISHAMOらしい”と語る11曲が収められている。
SHISHAMOがナタリーに登場するのは今回が初めて。このインタビューでは「SHISHAMO 2」の制作秘話のほか、彼女たちがここまでバンドを続けてきた理由や6月と7月に東西の野音で行われる単独公演「SHISHAMO NO YAON!!!」の意気込みを聞いた。
取材・文 / 清本千尋 撮影 / 上山陽介
SHISHAMOって恋愛の曲ばっかり
──「SHISHAMO 2」は「SHISHAMO」と同じように曲ごとのテーマが明確でストーリー性があるという部分を残しつつ、それぞれの曲の主人公の心情に少し踏み込んだ歌詞が多いと感じました。
宮崎朝子(G, Vo) 前のアルバムは一聴しただけでそれぞれの楽曲の世界がわかるストーリーになっていたと思うんです。でも今回は物語に収まらない気持ちというか、結末のないもやっとした気持ちも曲にするようになりました。なんかちょっと私、大人になったのかもしれないです。
──なるほど。SHISHAMOの曲はこれまで恋愛がテーマになっている曲が多い印象だったんですが、「SHISHAMO 2」には友情を描いた「ともだち」が収録されていますね。
宮崎 恥ずかしさから今まで自分のことは歌詞にしてこなかったんですけど、「ともだち」は私の気持ちを歌った曲なんです。私には友達と呼べる人が1人しかいなくて、友情の曲を書こうと思ったら、結果的に自分の気持ちを歌うことになってしまったんです。
──なぜ友情の曲を作ろうと思ったんですか?
宮崎 さっき指摘されたように、恋愛の曲が多いと思われてる節があるんじゃないかと不安に思ってて。
──でも実際多いですよね?
宮崎 多いかもしれないです。でも私は恋愛をテーマに曲を書いてるつもりはあまりなくて。例えば「君と夏フェス」なら「夏フェス」をテーマに書いたものだし。
松岡彩(B) 正直に言うと、SHISHAMOに入る前、私はSHISHAMOって恋愛の曲ばっかりやなって、ちょっと思ってました。あ、ダメだとかそういう意味じゃないよ?
宮崎 うん、大丈夫。でもそう思われてるのって、ちょっとヤだなと思って。
──自発的に新しいことをやりたかったわけではなく、そういうリスナーからの反応を受けてトライした部分もあった?
宮崎 そうですね。聴いた人に、同じことばっかり歌っててつまらないと思われたくなかったんですよ。
──なるほど。吉川さんは「ともだち」を聴いたときにどう思いましたか?
吉川美冴貴(Dr) まず友情の歌詞に新鮮さを感じましたね。あとこの曲に出てくる“友達”って、私の友達でもあるんですよ。朝子も私もその子と同じクラスで仲がよかったんです。その対象となってる人のイメージがあるのは、今までとはまた違った感覚でした。それと、単純にとてもいい歌詞だなって思いました。
「SHISHAMO 2」はSHISHAMOらしいアルバム
──「SHISHAMO」と「SHISHAMO 2」って、曲の雰囲気がけっこう変わったなと思うんですよ。歌ってる内容が前作より深いものになったというのもあるし、サウンドのバリエーションも増えましたよね。メンバーチェンジ(参照:SHISHAMO、松本彩脱退&新体制で新曲発表)があったことが大きいとは思うんですが、自分たちでは変化って感じますか?
宮崎 聴いた人には変わったねと言われるんですよね。でも表面的には変わってるように見えるかもしれないけど、SHISHAMOというバンドの芯の部分は変えたくない、変わらないでいたいという気持ちが私には強くあるんです。私はバンドが変わってしまうことを寂しく思う派なんですよね。だからSHISHAMOのいいところは変えてないつもりです。
──宮崎さんが思うSHISHAMOのいいところってどこなんでしょうか?
宮崎 曲ですね。
──確かに楽曲にすごくオリジナリティがありますよね。そう思う理由の1つに歌詞があるんですが、歌詞はどのタイミングで生まれてくるものなんですか?
宮崎 私歌詞がないと曲が作れないんですよ。だから曲を作るために歌詞を書いていて、歌詞は先にできるものの、ある種副産物的な位置付けなんですよね。一番大事なのは曲そのものなんです。歌詞を元にして、音の重なりやメロディで一番グッと来るところを探しながら曲を作っています。
──曲を作るときはすべての楽器が重なった状態、完成形をイメージして作るんですか?
宮崎 そうですね。私の頭の中で作り上げた完成形をどうバンドで再現するか、みたいな感じです。本当に細かなところまでイメージしているので、デモ音源だったり言葉でそれをきちんと共有してます。
吉川 今回は特にそのイメージを再現することに重点を置いていたかもしれないですね。昔は曲の世界観をバンドの中でちゃんと共有できないまま、お互いのイメージがズレてても勢いで作ってしまってるときがあったんですよ。でも「SHISHAMO 2」はそのズレをできる限りなくして、同じものをきちんと共有するための話し合いをたくさんしました。
宮崎 そうだね。私、今回のアルバムは「SHISHAMO」とは違って、ライブ好きな若い子が好きになるアルバムじゃないのかなって思っていて。今みんなが抱いてるSHISHAMO像はもっとポップでキャッチーなもの、わかりやすいものだと思うんですよ。でも今回はライブで騒ぐだけじゃなくて、私の中から出てきたイメージをちゃんとわかってほしい、聴いてほしいっていう思いが強いものになったんですよね。私が思う“SHISHAMOらしさ”が色濃く出てると思います。
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収録曲
- 僕、実は
- きみと話せないのは
- 彼女の日曜日
- ともだち
- 君と夏フェス
- 量産型彼氏
- 恋愛休暇
- 昼夜逆転
- デートプラン
- 花
- さよならの季節
SHISHAMOワンマンツアー2015春「さよなら、僕のともだちと花の季節」
- 2015年4月4日(土)神奈川県 CLUB CITTA'
- 2015年4月11日(土)愛知県 Zepp Nagoya
- 2015年4月12日(日)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- 2015年4月19日(日)大阪府 なんばHatch
- 2015年4月28日(火)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2015年4月29日(水・祝)北海道 帯広MEGA STONE
- 2015年5月9日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2015年5月10日(日)香川県 高松オリーブホール
- 2015年5月16日(土)福岡県 DRUM LOGOS
- 2015年5月17日(日)鹿児島県 CAPARVO HALL
- 2015年5月22日(金)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
- 2015年5月30日(土)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2015年5月31日(日)石川県 金沢EIGHT HALL
- 2015年6月6日(土)宮城県 Rensa
- 2015年6月7日(日)新潟県 新潟LOTS
- 2015年6月13日(土)沖縄県 桜坂セントラル
SHISHAMO NO YAON!!!
- 2015年6月27日(土)東京都 日比谷野外大音楽堂
OPEN 17:15 / START 18:00 - 2015年7月25日(土)大阪府 大阪城野外音楽堂
OPEN 16:45 / START 17:30
SHISHAMO(シシャモ)
宮崎朝子(G, Vo)、松岡彩(B)、吉川美冴貴(Dr)からなるロックバンド。神奈川・川崎総合科学高等学校デザイン科 軽音楽部にて結成し、3人組バンド「柳葉魚(ししゃも)」として活動を開始する。高校3年生のときに顧問のすすめで「TEENS ROCK IN HITACHINAKA 2012」に応募し、優秀賞とベストボーカル賞を受賞。これをきっかけにSHISHAMOに改名した。2013年1月に高校時代の楽曲をまとめたアルバム「卒業制作」をリリース。同作をひっさげ全国11カ所を巡る対バンツアー「卒業旅行」を実施した。同年11月にデビューアルバム「SHISHAMO」を発表。2014年には初のワンマンツアー「彼女ができたバンドマンに恋する休日」を開催し、追加公演を含む全10公演をソールドアウトさせる。7月にはシングル「君と夏フェス」をリリース。9月に「about SHISHAMO 大事なお知らせ編」でベースの交代を発表し、現体制初シングルを「量産型彼氏」を10月に発売した。そして2015年3月にアルバム「SHISHAMO 2」を発表。4月から6月にかけて全国ツアー「さよなら、僕のともだちと花の季節」を開催し、6月に東京・日比谷野外大音楽堂、7月に大阪・大阪城野外音楽堂でワンマンライブを行う。2016年1月には東京・日本武道館での単独公演も決定している。