音楽ナタリー PowerPush - 真空ホロウ

“化け物”になるための新たなスタートライン

新しい一歩を踏み出して、新しい扉を開けてみた

──今回のアルバムにはライブでプレイしている楽曲も多数収録されていますが、ファンに披露することで作品に対するスタンスも変化していきますか?

松本 変わっていきますね。僕は楽曲に対する第三者的視点を最初からはなかなか持てないタイプなので、ライブでのリアクションから教えてもらうことが多いです。お客さんにとって楽曲のどういうところがツボで、どういうふうにノッてくれるのかとか。それによってステージングも変わってくるし、ライブでのファンの皆さんの反応は毎回勉強になりますね。

──「アナフィラキシーショック」での「おかわり頂戴」という掛け合いも今やライブの定番になっていますよね。

松本 それも最初から想定してたわけじゃなくて。ライブでそういうコール&レスポンスが生まれることで自信にもつながりますし、もっと自分を出していいんだって思えたんです。お客さんからはいろんなことを教えてもらいますね。あと、自分が思ってもみなかったところで、その人にとっての人生の1曲になっていることにも気付かされて。あとでライブ映像を観たときに、一緒に口ずさみながら泣いてくださってる方がいたりするんですよね。そういう姿を見ると、ストーリーテラーとして、もっとちゃんと歌の中の世界に導いてあげられるボーカリストにならなきゃなって。そう思ってから、より歌を大事にするようになりました。

──今回の収録曲の中で「MAGIC」は特にライブでお客さんと一緒に盛り上がれそうな作品ですよね。今回、今までにない四つ打ちのダンスロックにトライした理由は?

松本 新しい一歩を踏み出して、新しい扉を開けてみようと思ったんです。そうすることによって何か未来予想図のようなものが描けるのであれば、その扉を開けるべきなんじゃないかって。だから、いろいろな可能性を増やしてみようとしました。

──アルバム収録曲の編曲で「MAGIC」だけが生駒龍之介さんとの共同クレジットになってます。

松本 そうですね。もともと、僕が作った曲をどう変化させたらどういう形のものができあがるか……そういう“研究”のようなものをしたいと思ったんです。その中で、メンバーと話していて「今回のアルバムで真空ホロウに新しい風を吹かせるならこの曲にしてみよう」ということになって、生駒さんに編曲をお願いしました。

──真空ホロウが楽曲制作に外部スタッフを迎えるのは初めてのことですが、やってみていかがでした?

大貫 正直、最初はメンバー以外の人とやることに抵抗があったんです。でも実際にやってみたら音楽的な引き出しも増えたし、何より、誰とやってもこの3人で演奏すれば真空ホロウの音になるんだっていうことがわかって。それが大きかったです。

村田智史(B)

村田 俺も同感です。「自分はこう捉えているけど、第三者にはこう見えてるんだな」って思うこともあったし、その戸惑いも含めて生駒さんとやれていい意味で振り出しに戻れたというか。でもそれは、過去のスタート地点っていうことじゃなくて、また新しい振り出しなんですよね。螺旋階段みたいに、同じ場所なんだけど少しだけ上に昇れてるみたいな。

松本 できあがりに関しては、スタッフなどの周りの評判がすごくいいので、あとは(リリース後に)聴いてくれた人がどういう評価をしてくれるか。今は、その反応を待ってる状態ですね。

村田 その手応えはきっとライブが証明してくれると思うんです。まあ、ライブで披露するときはCDの音源を超えないといけないと俺は思ってるんで、「MAGIC」に関してもどうやっていいものにするかっていうのがこれからの課題ですね。この曲はすごく作り込まれているので、正直かなり“強敵”なんです(笑)。

大好きで大嫌いな渋谷

──アルバムの中では「回想列車」がリード曲としてビデオクリップも制作されていますが、松本さんにとってどういう曲なんでしょうか?

松本 初めて自分以外の誰かのことを書こうと思って書きました。それまでは、自分が言いたいことや他人に対して感じていることを、妄想というか物語にして歌詞を書いていたんです。でも、茨城から東京に出てきて、そこで生活するようになって……ある日、渋谷にいるときにふと思ったんです。ここには、僕みたいなバンドマンもいれば、サラリーマンもいるし、ギャルもいて、警察官もいる。駅に行けば駅員さんがいるし、お店に入れば店員さんがいる。その人たちには、それぞれに自分が主人公の物語があるんだと。そんなことを考えている中で、僕は人の思いを汲むということができていなかったと気付いて。

──渋谷という街から生まれた歌なんですね。

真空ホロウ

松本 今日の取材でも撮影した銀座線の渋谷駅が、この曲の着想地点でした。そこで、電車から降りた1人の人に照準を合わせて、その人のストーリーを書いていきました。完成した曲を人に聴いてもらったとき、「血が通っている曲が書けたね」って言われたことを覚えてます。

──これまでにも「スノーホワイト」など、渋谷が舞台の楽曲を制作されていますが、松本さんにとって渋谷という街に対して何か特別な感情はありますか?

松本 渋谷club乙-kinoto-というライブハウスが東京でのホームというか、そこで過ごす時間も多かったのでそういう意味ではあるかもしれないです。

大貫 今でも渋谷club乙-kinoto-に足繁く通っていた当時を思い出しますね。

松本 ただ渋谷はなんでもあって便利だし大好きな街だけど、同時にすごく嫌いでもあって。誰も他人のことを見ていないし、なんでもありすぎて、いるだけで荒んでいくような気もするんです。

村田 俺も、正直言って苦手です。都会に対する憧れはあるけど、自分がいるところではないのかな。茨城出身だし、やっぱり田舎者なのかもしれないです(笑)。

1stフルアルバム「真空ホロウ」2015年4月8日発売 / EPICレコードジャパン
初回限定盤 [CD+DVD] 3700円 / ESCL-4398~9 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 3000円 / ESCL-4400 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. 開戦前夜
  2. 被害妄想と自己暗示による不快感(“N”ew take ver.)
  3. アナフィラキシーショック
  4. MAGIC
  5. 回想列車
  6. CAGE
  7. Highway My way
  8. バタフライスクールエフェクト
  9. Tokyo Blue bug
  10. こどものくに
  11. ミラードール
初回限定盤DVD収録内容
  1. Highway My way Music Video
  2. アナフィラキシーショック Music Video
  3. 虹 Music Video
  4. 回想列車 Music Video
  5. Highway My way Making Video
  6. アナフィラキシーショック(alternative ver.)
  7. 虹(alternative ver.)
真空ホロウ TOUR 2015梅雨 ~回想列車で全国へ。嘘です本当は機材車です。~
  • 2015年6月5日(金)香川県 DIME
  • 2015年6月19日(金)北海道 COLONY
  • 2015年6月21日(日)宮城県 enn 2nd
  • 2015年7月3日(金)福岡県 Queblick
  • 2015年7月5日(日)大阪府 LIVE HOUSE Pangea
  • 2015年7月10日(金)愛知県 APOLLO BASE
  • 2015年7月18日(土)東京都 東京キネマ倶楽部
真空ホロウ(シンクウホロウ)

真空ホロウ

松本明人(Vo, G)、村田智史(B)、大貫朋也(Dr)による茨城県出身の3ピースロックバンド。日常の違和感を冷徹な視線ですくい上げる歌詞と、ストレートでキャッチーなバンドサウンドが特徴。2006年に結成し、メンバーチェンジを経て現在の編成に。2009年に「RO69JACK 2009」を勝ち抜き、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009」への出演を果たす。その後、2012年10月にミニアルバム「小さな世界」でEPICレコードジャパンよりメジャーデビュー。2014年2月にアニメ「NARUTO-ナルト-疾風伝」のエンディングテーマに採用されたメジャー1stシングル「虹」を発表し、その年の12月31日には「COUNTDOWN JAPAN 14/15」にてCOSMO STAGEの大トリを務めた。2015年4月に1stフルアルバム「真空ホロウ」をリリース。6月から全国7都市を回るツアーを実施する。