ナタリー PowerPush - 真空ホロウ

思春期の苛立ちを爆発させた 濃厚ジレンマソング

会う人会う人に「ナルト」って言われる

──ちなみに「NARUTO-ナルト-疾風伝」はもともと知っていました?

村田智史(B)

松本 はい。主人公が小さい頃の話を原作のマンガで読んでいました。昔はアクションマンガとして読んでいたんですが、改めて読み直してみたら主人公のナルトくんは孤独を抱えていて、僕も同じような経験をしていたなと思って感慨深くなりました。

村田 このタイミングでマンガを一気に読んだんですけど、仲間とのチームワークや信じる力の大切さを学びましたね。今の自分に必要だったなって。

──エンディングテーマとして採用されることが決まったときはどんな気持ちでした?

村田 俺ら茨城出身なんですけど、自分たちがやってる音楽を毎週故郷に届けられるのがうれしかったですね。がんばってやってるんだよっていうのを口で言わなくても発信できるわけだから。初めてアニメのエンディングの映像を観たときは興奮しましたね。「うおー流れてる!」つって(笑)。

大貫 僕も思わずテレビ画面を写真で撮っちゃいました。

──周囲からの反響もすごそうですね。

村田 会う人会う人に「おうナルト」って言われます(笑)。俺らより前にエンディングテーマを担当していたTOTALFATやムックに「ナルト決まったじゃん!」って言ってもらったし、今度SUPER BEAVERに会うんですけど、きっとその話になると思います。

小学生時代を思い出して作った「エビフライの曲」

──カップリングの「バタフライスクールエフェクト」も「虹」に通じるメッセージがあると感じたんですが、いかがでしょう?

松本 これを作ったのは「虹」の少し前なので、同じような思考回路だったかもしれないです。僕は括られるのが昔から苦手で。例えば、今の僕ら3人は世間から見たら“バンドマン”。グループを形成しているとそれが人格で、人間がグループの一部になってしまっている気がするんです。本当は全員主人公なはずだし、それを自分でも認めてあげたいと思って作りました。

松本明人(Vo, G)

──このタイトルの意味は?

松本 「バタフライエフェクト」っていうのが、どこかで起きた小さな出来事が遠いところで影響を及ぼしていつか大きな結果になってるってことなんですけど……それが学校生活でも起きていると、小学生の頃を思い出して書きました。

──小学生のときに起きたことが今現在の松本さんの人格形成に影響を与えていると。

松本 とらわれているんです。そこから抜け出せないのか、抜け出したくないのかはわかりませんが……。だからこそ詞にしていると思うんですけど。

──「世間の目が気になり過ぎてるだけじゃないって信じさせて」っていう歌詞を見て思わずハッとしまして。思春期の頃ってすごく自意識過剰で、例えばクラスの女子が笑っているだけで「もしかして自分のことを笑ってるんじゃないか?」って思ったりするよなって。

松本 すごくよくわかります。僕がそうだったから。

──気になるんだけど、そうじゃないと信じたいっていう。そのあたりのジレンマが「虹」に非常に似ていると思いました。ただ一方で、この曲はこれまでの真空ホロウの作品の中でも特に歌詞の言葉遣いがウイットに富んでいるのも印象的で。「十人十色エビフライセレクト」もそうだし、「雄しべと雌しべがこんにちは」「花一匁のチャイムが鳴りました」もすごく好きです。

松本 やった! 小学生の頃の思い出をここまで笑い話みたいに書けるようになったんですよね。

──真空ホロウの持つ“陰”の部分を、シリアスになり過ぎずに見せる新たな手法になるんじゃないかと。

松本 僕もそれはちょっと思いました。小馬鹿にするんじゃないんだけども。

──疾走感もあって、ライブでもすごく盛り上がりそうですよね。

左から大貫朋也(Dr)、松本明人(Vo, G)、村田智史(B)。

村田 確かにライブでも言われますね。「エビフライの曲よかったね!」って(笑)。

──(笑)。そうなんですね。

村田 でもそうやって言ってもらえるのってすごくいいなと思っていて。「虹」でいったら「解ってんだよ」だし、この曲だと「エビフライ」。ワンフレーズが聴く人の頭に残る作品ができたのは大きいですね。

松本 仕上げの段階で2人に「本当にエビフライでいいんですか?」って確認したんですけど……。

村田 面白いからこのままいこう、って話して。

大貫 むしろなくすほうが嫌でしたね。言葉の運びとかも曲調にマッチしているし、僕も好きな曲です。

ニューシングル「虹」2014年2月19日発売 / 1000円 / ツクモガミ / ESCL-4150
収録曲
  1. バタフライスクールエフェクト
  2. スノーホワイト
真空ホロウ(しんくうほろう)
真空ホロウ

松本明人(Vo, G)、村田智史(B)、大貫朋也(Dr)による茨城県出身の3ピースロックバンド。日常の違和感を冷徹な視線ですくい上げる歌詞と、ストレートでキャッチーなバンドサウンドが特徴。2006年に結成し、メンバーチェンジを経て現在の編成に。2009年に「RO69JACK 2009」を勝ち抜き、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009」に出演。その後「contradiction of the green forest」「ストレンジャー」という2枚のミニアルバムを発売した。2012年10月にミニアルバム「小さな世界」でEPICレコードジャパンよりメジャーデビュー。2013年5月8日に2ndミニアルバム「少年A」をリリース。2014年2月19日にアニメ「NARUTO-ナルト-疾風伝」のエンディングテーマに採用されたメジャー1stシングル「虹」を発表。