ナタリー PowerPush - 真空ホロウ
本性むきだしの「少年A」で青山裕企と再タッグ
人生嫌なこと8割、いいこと2割
──歌詞の内容でいうと、「眩しい暗闇」「愛したら終いそう」「あなたのことが大好きだからあなたのことが大嫌いさ」など、相反する2つの関係を描いているのが印象的でした。“光と影”がひとつのキーワードというか。
松本 はい。そうですね。
──真空ホロウというバンドは、“心の闇”を描いた歌詞のインパクトが強いですが、一方で“光”についても歌っているんじゃないかなと。それは微かな光なので見えにくいですが……。
松本 ありがとうございます。
村田 すごくうれしいです。まさにそういう感じだと思うんですよ。俺、人生は嫌なこと8割、いいこと2割っていうイメージがあるんです。下手すりゃ嫌なこと9割、いいこと1割かもしれない。嫌なことって一瞬にして幸せを打ち消しちゃうじゃないですか。例えば、1分前までコーヒー飲んでておいしいって思っていても、カップを落としたらもう最悪じゃないですか。さっきのおいしかったことなんてもう忘れちゃって。だから世の中、嫌なことに押しつぶされそうなことが多いと思っていて。真空ホロウはそういうことを表現しているバンドなんだと思います。
青山 ちょっと違うかもしれませんが、智史くんの気持ちはなんとなくわかりますね。例えば僕の「ソラリーマン」という作品は、普段は“黒”いサラリーマンが、ジャンプして“白”になった瞬間を収めた写真なんですよ。で、着地するとまた“黒”に戻る、みたいな。僕の場合、黒白の関係が8割2割じゃなくて、半々ぐらいの感覚なんですけど。
村田 そうなんですね。俺ら、その8割のほうばっかり伝わってるけど、もし残りの2割を見てもらえたら、このアルバムに対してまた違う感性を持ってもらえると思うんですよ。俺はそれを信じていて。
──松本さんが描く歌詞や世界観には“白(光)”もある、と。
村田 はい。何年も一緒にいるから、彼(松本)の性格もわかっているので。インタビューでうまく説明できないところも含めて(笑)。もう本当に家族みたいな感じというか……。まあここ何年かで言ったら家族よりいるな(笑)。
松本 そうですね。毎日一緒にいますよ。
大貫 確かに。
村田 今はメンバー間の状態もすごくいいし、俺は本当に楽しくて。
松本 最近よく会話をするようになったよね。
──会話自体がなかったんですか?
松本 この2年くらいで人と会話することが楽しくなってきました。
──それは何かきっかけがあったんでしょうか?
松本 自分に自信がなかったのかな……。例えば人に気を遣いすぎて逆に気を遣わせてしまうことってあるじゃないですか。それがライブで顕著に出てしまうことが昔よくあったんです。でも、僕が楽しいとみんなも楽しいっていうことが最近わかってきたんですよね。人とのつながりっていうのが大切なのかなって。
大貫 昔よりお客さんとの距離が縮まって、一緒に楽しんでいる感じは多くなってきましたね。
村田 俺も2年くらい前から、お客さんのためにって思わないとすべては成立しないんだなっていうのをすごく感じていて。みんなが喜んでくれればそれでいいかなっていう思いは強いですね。
いい作品ができたからツアーへの意気込みが違う
──「少年A」リリース後にはお客さんと直接触れ合うツアーも始まります。
村田 今回は2カ月も前から準備してるので、今までとは意気込みが違いますね。いい作品ができたっていう自信があるからだと思うんですけど。
松本 そうですね。レコーディングのときから準備しているので。
青山 すごく楽しみですね。
──ファイナルは水戸公演なんですよね。
村田 はい、地元で。とにかくもう、真空ホロウというバンドを自分たちでもより深く追求しています。だから、ただ真空ホロウの世界観に浸ってくれればいいです。準備しておきます(笑)。
真空ホロウ「"Pe(r)son A" TOUR」
- 2013年5月10日(金)愛知県 池下CLUB UPSET
- 2013年5月11日(土)大阪府 福島LIVE SQUARE 2nd LINE
- 2013年5月16日(木)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
- 2013年5月19日(日)福岡県 福岡graf
- 2013年5月22日(水)兵庫県 神戸太陽と虎
- 2013年5月23日(木)京都府 京都MOJO
- 2013年5月31日(金)宮城県 仙台LIVE HOUSE enn 2nd
- 2013年6月2日(日)北海道 札幌COLONY
- 2013年6月7日(金)新潟県 新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
- 2013年6月21日(金)茨城県 水戸ライトハウス
- ミニアルバム「少年A」/ 2013年5月8日発売 / 1575円 / EPICレコードジャパン / ESCL-4037
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収録曲
- アナフィラキシーショック
- 思春の生贄
- 娼年A
- 4月某日
- Balance cont(r)ol
- ミラードール
真空ホロウ(しんくうほろう)
松本明人(Vo, G)、村田智史(B)、大貫朋也(Dr)による茨城県出身の3ピースロックバンド。日常の違和感を冷徹な視線ですくい上げる歌詞と、ストレートでキャッチーなバンドサウンドが特徴。2006年に結成し、メンバーチェンジを経て現在の編成に。2009年に「RO69JACK 2009」を勝ち抜き、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009」に出演。2010年に1stミニアルバム「contradiction of the green forest」を、2011年に2ndミニアルバム「ストレンジャー」をリリースした。2012年10月にミニアルバム「小さな世界」でEPICレコードジャパンよりメジャーデビュー。2013年5月8日に2ndミニアルバム「少年A」を発表した。
青山裕企(あおやまゆうき)
1978年生まれ。写真家。2007年キヤノン写真新世紀優秀賞受賞。スーツ姿のサラリーマンがジャンプした瞬間を収めた写真集「ソラリーマン 働くって何なんだ?!」(ピエ・ブックス)や、思春期の少年の視点で、女子高生の無防備かつ挑発的な魅力を捉えた写真集「スクールガール・コンプレックス」(イースト・プレス)など、次々と話題の写真集を発表。最新刊は「スクールガール・コンプレックス (女子校) SCHOOLGIRL COMPLEX 3」(イースト・プレス )。また2013年8月17日より、同シリーズをモチーフにした映画「スクールガール・コンプレックス─放送部篇─」が公開される。