音楽ナタリー Power Push - 霜月はるか

歩み続けた音楽人生を総括したベスト盤

私のやりたいことを1枚に

──3枚目は「ORIGINAL FANTASY SONGS」。このアルバムには霜月さんが活動初期から自主的に作り続けてきた「ファンタジー」をテーマにした曲が収められています。

活動の原点がファンタジックな世界観の仮想RPGのサントラで、やりたかったことっていうのは、最初も今も「ファンタジックな世界観や物語を音楽で表現したい」ってことなんです。私のライフワークでもあるこれまで作ったファンタジーな曲たちを1枚にまとめたいなと思い、このベストアルバムが生まれました。ただ「ファンタジー」とひと言で言っても、振り返ってみるとCDごとに曲で表現した世界観が違うんですよね。アルバム1枚ごとに異なるストーリーがあるから、カラーの異なる曲が集まってバラエティに富んだ内容になっています。

──2002年に発表されたレアな初期ナンバー「ユラグソラ」を聴くことができるのが、この「ORIGINAL FANTASY SONGS」ですね。

昔から作り続けていたわけですから、学生の頃や会社勤めをしながら作った曲も収録してますし。もしかしたらタイアップものの作品で私を知ってくれた方からすると、オリジナルってなかなか手に取りづらいカテゴリかなとは思うんです。でもRPGが好きな方にこそ聴いていただきたい曲がたくさん入っています。

──収録曲は霜月さんが作詞と作曲を手がけている曲ばかりですが、書き下ろしの曲はZABADAKの吉良知彦さんが作曲を担当しています。

霜月はるか

実は私がファンタジックな世界観の音楽を歌モノでやりたいって思ったきっかけがZABADAKさんだったので、このアルバムの書き下ろしをお願いするのは吉良さんしかいなかったんです。高校を卒業した頃くらいの、ちょうど作曲を始めた時期にZABADAKさんの音楽を聴いて「RPG的な世界観の歌ものって存在してたんだ!」って驚いて。幻想的な歌詞と、目の前に情景が広がるような音に感銘を受けて、当時私がぼんやりと思っていた「やりたいこと」が明確になったというか。

──吉良さんにはどのようなオーダーを?

あんまり楽曲的な要望は伝えませんでした。ただ吉良さんから「どういう曲がいいですか?」と聞かれたので、歌詞の設定みたいなものを書いてイメージ写真と一緒に渡したんです。こういう情景が浮かびそうな曲がいいですっていう意味で。

──“情景が浮かぶ音楽”が好きな霜月さんならではのオーダーの仕方ですね。

細かく言葉で説明するよりイメージ写真を渡したほうが、表現したいファンタジーの世界が直接伝えられるかなと思って。ただZABADAKさんの音楽は私の原点みたいなところがありますから、どんな曲が来ても大丈夫だなとは思っていたんです。予想通りというか、予想以上の曲を書いてもらって本当に念願のコラボレーションが叶ったという感じでした。

「あしあとリズム」のアンサーソング

──4枚目「MESSAGE SONGS」も霜月さん自身が作詞・作曲を担当した曲で構成されていますが、「ORIGINAL FANTASY SONGS」とはテイストが違いますよね。

このアルバムには「ボーカルワークスアルバム」という、これまでリリースしてきたボーカルのお仕事をまとめたアルバムに1曲ずつ書き下ろしてきた曲や、WEBラジオのテーマ曲などが入っています。同じ書き下ろし曲ですけどファンタジックな曲と違って、自分の価値観とか言いたいこと、感じていることをそのまま曲にしたものが入っています。

──このアルバムだけ、収録曲が年代順に並べられているのはなぜですか?

霜月はるか

ここに入ってる曲って、ある意味自分の日記みたいなものなんですよね。「このときはこんなこと考えてたのか」とか、「こんなことで悩んでた時期だったな」とか。そういう思いの変化みたいなものを順番に並べることで伝えられるかもしれないなと思って、このアルバムだけは発表順に並べています。

──アルバムのラストナンバーは、霜月さんの書き下ろし曲「Melody Line」では、これまでの活動を総括したような歌詞を書かれています。

これまでの感謝の気持ちを込めて「記念ソングとして作るぞ」って気持ちでいつも以上に気合いを入れて作った曲です。活動を振り返ってみると山あり谷ありで、悩んだ時期もうまくいかないと思った時期もありましたけど、音楽を続けてこられたことに改めて感謝しなければならないなって。2005年に、会社を辞めた直後に書いた「あしあとリズム」って曲があるんですけど、今回の「Melody Line」はその曲へのアンサーソングなんです。歌詞やメロディがリンクしていて、「『あしあとリズム』の頃に悩んでいた私が、10年経ってこうなったよ」っていうのを聴いてもらいたいと思っています。

──この曲の歌詞の中に「いつか叶えたい願い」ってありますよね。歌手活動に専念してから10年経って、これから先で叶えたいことってなんですか?

けっこう叶えたいことだらけなんですよ(笑)。誰かと仕事でご一緒したいとか、こういう作品を作りたいとか。よく「言葉にすると願いは叶う」って言うじゃないですか。だから自分が思い立ったときに願いをリストみたいにして書き留めるようにしてるんですよ。それでふと何カ月とか何年かあとに振り返ると、そのリストに書いた願いがけっこう叶っていたりして。だから叶えたいことがある以上はたぶんずっと活動を続けていきたいし、それが途切れることもおそらくはないだろうなあと思っています。

──具体的にリストに書いた目標って何かありますか?

霜月はるか

いろいろ目標というか野望はありすぎて……(笑)。新しいファンタジーアルバムは出したいし、オーケストラコンサートみたいなのもやってみたい。あと「シモツキン」っていうマスコットキャラクターをもっと“ゆるキャラ”として売り出していきたいとか(笑)。それらとは別に自分の底上げをしたいっていう風に今年はすごく感じていますね。

──それはなぜ?

「努力は嘘つかない」ってすごくその通りだなと思っているんです。歌唱力とか表現の技術って努力を怠ると、すぐに崩れてしまうだろうなって感じることが多くて。昨日よりも今日、今日より明日、と続けていくことで大きなステージに立つこととか、より大きな野望につながったりすると思うから。たゆまない努力っていうのは続けていきたいです。

メジャーデビュー10周年記念3カ月連続マンスリーソロライブ
「霜月はるか 10th Anniversary Solo Live "Melody Line"」
  • 霜月はるか 10th Anniversary Solo Live "Melody Line" ~side GREEN~
    ※テレビアニメ・コンシューマーゲーム・CDソング中心ライブ
    2015年9月23日(水・祝)
    東京都 Zepp DiverCity(全席指定)
    OPEN 16:45 / START 17:30
  • 霜月はるか 10th Anniversary Solo Live "Melody Line" ~side RED~
    ※PCゲームソング中心ライブ
    2015年10月24日(土)
    東京都 新宿BLAZE(オールスタンディング)
    OPEN 17:15 / START 18:00
  • 霜月はるか 10th Anniversary Solo Live "Melody Line" ~side BLUE~
    ※オリジナルファンタジーソング中心ライブ
    2015年11月23日(月・祝)
    東京都 調布市グリーンホール(全席指定)
    OPEN 16:45 / START 17:30
霜月はるか(シモツキハルカ)

宮城県出身のシンガーソングライター。2001年頃から趣味で作曲や歌手活動をスタートさせ、「コミックマーケット」や「M3」といったイベントで自主制作の音源を発表。ファンタジックな物語や世界観を音楽で表現する「オリジナルファンタジーボーカルアルバム」をはじめとした作品で地道にファンを増やしていき、2004年にはrefio+霜月はるか名義でアニメ「ローゼンメイデン」にエンディングテーマ「透明シェルター」の歌唱を担当した。2005年9月にはアルバム「あしあとリズム」をリリース。これを機に当時勤めていた会社を辞め、音楽活動に専念することになる。2006年にはSound HorizonのRevoとのコラボシングル「霧の向こうに繋がる世界」を発表。その後Sound Horizonのサポートボーカルや、ユニット「kukui」「canoue」での活動も行う。また「アトリエ」シリーズや「アルトネリコ」シリーズといった人気ゲームへも歌唱や楽曲提供といった形で携わっている。2015年8月、これまで発表してきた楽曲をまとめたベストアルバム「SHIMOTSUKIN 10th Anniversary BEST」を4枚同時リリースする。