音楽ナタリー Power Push - 霜月はるか

歩み続けた音楽人生を総括したベスト盤

原点はやっぱりRPG

──霜月さんのキャリアの中でキーワードになるのが「ゲーム」だと思うんですけど、ご自身はどういうゲームがお好きなんですか?

いわゆる「王道RPG」と言われているドラクエ(「ドラゴンクエスト」)やFF(「ファイナルファンタジー」)とかですね。「ロマンシング・サガ」とか「聖剣伝説」、「クロノトリガー」、あと「テイルズ」シリーズも好きです。挙げ出すとキリがないですね。

──「ORIGINAL FANTASY SONGS」というアルバムをリリースするだけあって、ファンタジー色の強い作品が多いですね。

霜月はるか

そうです。世界観が作り込まれているゲームが好きと言うか、私は物語と映像や音楽がすごいリンクしてるゲームが大好きなんです。音楽を聴いてゲームの情景を思い出したりするし、音楽も物語の一部みたいに感じるし。振り返ってみると、私のルーツというか原点はやっぱりRPGの音楽にあると思っています。

──2004年にPS2用ゲーム「イリスのアトリエ エターナルマナ」の主題歌を担当してから、「アトリエ」シリーズに何度も携わっています。まさに念願のRPGに関わることができたということですよね。

幸運にも私の声や作っている音楽の世界観と「アトリエ」シリーズの相性がすごくよかったみたいなんです。今では「『アトリエ』シリーズといえば」みたいに言ってくださる方も多くて、とても光栄に思ってます。最初はボーカルとして参加したわけですけど、「アトリエ」と同じ制作会社のガストさんが出している「アルトネリコ」シリーズや「サージュ・コンチェルト」シリーズではゲーム内の音楽の作曲もさせていただいていて。

──念願のサントラを作る側の人間になれたわけですよね。

作曲のお仕事をいただいたときって、ボーカリストとしてはいろいろな経験を積み上げていましたけど、作曲家としては全然仕事をしてなかった時期なんです。なのにゲームの中の曲作りに携わることができたのは作曲家として自信につながったし、仕事の幅を広げる大きなきっかけになりました。

“この曲知ってる率”No.1のアルバム

──では、ここからは同時リリースされる4枚のベスト盤について1枚ずつお話を聞かせていただければと思います。まずは「ANIME GAME CD SONGS」。このアルバムはアニメやゲームのテーマ曲を集めた1枚です。

おそらく4枚の中で“この曲知ってる率”が高いのがこのアルバム。選曲するに当たって120曲くらい候補曲があって、15曲に絞るのに非常に悩みました(笑)。

──ベスト盤の制作前にはファンからのリクエストを受け付けていました。Twitterで発表されたランキングによると1位はRevoさんとのコラボ曲「schwarzweiβ~霧の向こうに繋がる世界~」でした。

霜月はるか

自然とキャリアの転機になった曲が上位に入ってきてうれしかったですね。Revoさんとのコラボがあってから、Sound Horizonのツアーにも参加させてもらったんです。複数人でコーラスを担当したり、演技をしたり、ソロではできないことをたくさん経験させていただいて、私のソロ活動においても選択肢をたくさん増やしてくれたと思っています。ほかには「カザハネ」とか「白夜幻想譚」とか、私にとっても大切な曲を皆さんに投票していただいたので、リクエストには応えつつ年代やジャンルやゲームのメーカーさんが偏らないように気を配りながら選曲しています。

──このアルバムには光田康典さんとのコラボ曲も収録されています。光田さんはいろいろなRPGの音楽を手がけてきた方ですから、霜月さんのようなゲーム好きにとっては憧れの人だったと思います。

私がゲームで聴いてきた音楽を作ってきた作家さんなんです。光田さんの音楽って昔からアイリッシュとか、トラッドのカラーのある楽曲が多くて。実は私がアイリッシュに興味を持ったきっかけを与えてくださった方でもあるんです。これまで一方的に憧れを抱いていただけなんですけど、いつか音楽制作をご一緒してみたいと思っていたので、この機会にということでお声かけしました。

──「一方的に思っていただけ」と言いますが、7月に開催された光田さんのライブ「THE BRINK OF TIME 光田康典 & Millennial Fair」ではボーカリストとして霜月さんも参加していましたよね。

そうなんです。たまたまいろんなご縁がつながって、ちょうど私がコラボのお願いをした同時期に、光田さんのほうからもライブ参加のお願いがきて。ずっと憧れ続けてきた方と、今になっていろんなところでリンクしてきたのが不思議な感じだったし、すごく光栄なことだと思いました。

“ループもの”全体をくくる書き下ろし

──ベスト盤2枚目は「PC GAME SONGS」。PCゲーム音楽も霜月さんのキャリアを語る上では欠かすことのできないカテゴリですよね。

最初にお仕事をいただいたのがPCゲームだったこともあり、初期の頃はPCゲームの歌唱曲がものすごく多いんですよ。ボーカリストとしての私を育ててくれたのが、PCゲームの音楽だと思っているので、思い入れのある曲が多いですね。

──ファン投票ランキングでは1位が2014年発表の「Re:Call」、2位が2005年の「恋獄」と新旧どちらの曲も愛されているのが印象的でした。

1位になったのが昨年の曲っていうのはうれしかったんです。皆さん愛着のある曲もあると思うんですけど、新しい曲をちゃんと聴いていただいて、そこに票が集まるっていうのはアーティストとして成長できてる証のような気がして。もちろん、昔の曲がランクインすることで昔の曲まで聴いていただいていることを実感できたのもうれしいですし。

──古い曲にばっかり票が寄る、ということがなかったわけですからね。

霜月はるか

私も人気のゲームの曲とかにもっと票が寄るかなと思っていたんですけど、けっこう万遍なく選んでいただいたんですよね。なので「PC GAME SONGS」の収録曲は、わりとファンの皆さんの選曲を反映させています。

──「PC GAME SONGS」にも書き下ろし曲「Loop Breaker」が収録されています。PCゲームのテーマ曲ってシナリオありきで制作されることが多いと思うんですが、今回の書き下ろしはどういう取っ掛かりから作り上げたんですか?

この曲に関しては、今回作曲をお願いした折戸伸治さんにまず「ドラマチックで切なげな曲を」とお願いして。上がってきた曲に合わせて私がストーリーを頭の中で作って「そういうゲームがあるとしたら主題歌はこんな感じだよな」と考えながら歌詞を書いていきました。ただやっぱりゲームがあるわけじゃないから、ある程度ストーリーを想像できるくらいの歌詞を意識して書いてます。

──この曲はいわゆる“ループもの”と呼ばれている設定をテーマにしているんですよね?

端的に説明すると、何度も同じ時間を繰り返し過ごすことになってしまった主人公の男の子が女の子と出会って時間のループからどうにかして抜け出そうとする、みたいなストーリーなんです。こういうお話に出てくる登場人物ってどうしても切なさを抱えることになるし。私自身こういう設定が好きだったのもあって、“ループもの”全体をくくるような感じを想像してみました。

メジャーデビュー10周年記念3カ月連続マンスリーソロライブ
「霜月はるか 10th Anniversary Solo Live "Melody Line"」
  • 霜月はるか 10th Anniversary Solo Live "Melody Line" ~side GREEN~
    ※テレビアニメ・コンシューマーゲーム・CDソング中心ライブ
    2015年9月23日(水・祝)
    東京都 Zepp DiverCity(全席指定)
    OPEN 16:45 / START 17:30
  • 霜月はるか 10th Anniversary Solo Live "Melody Line" ~side RED~
    ※PCゲームソング中心ライブ
    2015年10月24日(土)
    東京都 新宿BLAZE(オールスタンディング)
    OPEN 17:15 / START 18:00
  • 霜月はるか 10th Anniversary Solo Live "Melody Line" ~side BLUE~
    ※オリジナルファンタジーソング中心ライブ
    2015年11月23日(月・祝)
    東京都 調布市グリーンホール(全席指定)
    OPEN 16:45 / START 17:30
霜月はるか(シモツキハルカ)

宮城県出身のシンガーソングライター。2001年頃から趣味で作曲や歌手活動をスタートさせ、「コミックマーケット」や「M3」といったイベントで自主制作の音源を発表。ファンタジックな物語や世界観を音楽で表現する「オリジナルファンタジーボーカルアルバム」をはじめとした作品で地道にファンを増やしていき、2004年にはrefio+霜月はるか名義でアニメ「ローゼンメイデン」にエンディングテーマ「透明シェルター」の歌唱を担当した。2005年9月にはアルバム「あしあとリズム」をリリース。これを機に当時勤めていた会社を辞め、音楽活動に専念することになる。2006年にはSound HorizonのRevoとのコラボシングル「霧の向こうに繋がる世界」を発表。その後Sound Horizonのサポートボーカルや、ユニット「kukui」「canoue」での活動も行う。また「アトリエ」シリーズや「アルトネリコ」シリーズといった人気ゲームへも歌唱や楽曲提供といった形で携わっている。2015年8月、これまで発表してきた楽曲をまとめたベストアルバム「SHIMOTSUKIN 10th Anniversary BEST」を4枚同時リリースする。