もっといい曲をたくさん書いて、曲で評価されるようになりたい
──清水さんは今、ご自分は日本の音楽シーンにおいてどんな存在だと思いますか?
どんな存在でもないと思いますよ。だって、今の清水翔太がどういう音楽をやってるか知っている人が少ないから。もちろん知名度はそれなりにあると思うけど、やっぱり昔のイメージが強いみたいで。これは前々から言ってるんですが、今の自分が理想の姿であって、メジャーアーティストが下手の横好きでこういう音楽をやってるんじゃない。だから、もっといい曲をたくさん書いて、曲で評価されるようになりたいんです。そうなったときに初めて、日本のシーンにおける自分の立ち位置について話せると思う。
──今の清水さんは、「PROUD」より前の作品があまり好きではないんですか?
全然そんなことないですよ。やっぱり自分が作ったものだし、最近の楽曲と同じくらい愛おしい。それに過去に作った曲があるから、今の自分がある。僕が言うのはおこがましいのかもしれないけど、今はこういうコアな音楽を広めるために少しでも力になりたい。ヒップホップには興味がないけど、僕のファンだという人たちが、KANDYTOWNとかを聴くきっかけになったらいいなって思っているんです。
──今作はすごくパーソナルな内容ですよね。サウンドはラフなんだけど細部まで作り込まれていて、そのバランスにヒップホップへの愛を感じました。
実は「PROUD」くらいの頃は、自分のライティング能力を認めさせたくて、作曲面でもナチュラルじゃない瞬間もたくさんあったんですよ。けど以前共演したKEIJU(KANDYTOWN)たちは僕の曲を素直に「カッコいい」と言ってくれた。それがすごくうれしくて、肩の力が抜けたような感覚になれたんです。だから今作は、自分の音をすごくナチュラルに表現できた。誰に聴かれても恥ずかしくない、これが自分の音だって胸を張れる作品になったと思います。
──「WHITE」というタイトルには今話されたようなニュアンスが込められているんですか?
うん。「WHITE」というタイトルには、自分の中のいろんなものを省いた真っ白でピュアなクリエイティブという意味がある。例えば歌詞の表現で、難しい言い回しがあってもあえて簡単にせず、自分の中から出てきたものをそのまま表現して。僕は最近、音楽がものすごく簡単に消費されているなと感じるんです。アーティストがこだわって作っても、すぐに忘れ去られて別の作品が求められる。僕はこの作品を簡単に消費されたくない。聴く人もピュアな真っ白な状態で向き合ってほしい。そんな気持ちも込めています。
お互いに刺激を受けあうソウルメイト・SALU
──今作では「MONEY feat. 青山テルマ, SALU」以来、再びSALUさんをフィーチャーしていますね。
SALUはKEIJUらと共に、いつも僕を勇気付けてくれる存在なんです。別にしょっちゅうごはんを食べに行ったりするわけではないんですが、連絡は常に取り合ってて。もともと(青山)テルマが紹介してくれたんですよ。当時の僕には全然友達がいなくて、テルマは唯一の親友だった。ある日テルマから「みんなで集まってるからおいでよ」と誘われて、気乗りしないけどその集まりに行ってみたらSALUがいました。僕はSALUがミックステープしか出してない頃から大好きで。でも、当時の僕はまだJ-POPでラブバラードを歌ってるイメージが強かったから、彼のようなヒップホップの本職の人にどう思われてるのかちょっと不安だった。そしたらSALUは「翔太くん、最高でしょ」と言ってくれて(笑)。それが「MONEY」につながったんですよ。
──いい話ですね。
そこからSALUとはずっと連絡を取り合っています。同世代だし、SALUも自分のやりたいことをメジャーで表現するためにいろいろとチャレンジしているから、いつもすごく刺激を受ける。たぶんSALUがいなかったら、僕の活動スタンスもこうはなってなかったと思う。ちょっとわかりにくい表現も、「SALUも挑戦してるし俺もやってみよう」と思えるようになったと言うか。しかもそういう話を実際することはなくて、お互いのやってることを見て刺激を受け合ってるような関係性。
──お二人がコラボした「alone」は孤独や葛藤がテーマになっています。
この曲のテーマは「アーティストの孤独」です。SALUにはそれだけ伝えました。そしたらこの歌詞とラップが返ってきた。こういうテーマの曲だと「孤独だけど、俺たちは仲いいよ」みたいな方向に行ってしまうこともあるけど、SALUはお互いに背中を向けつつも一緒に戦ってる感じを出してくれた。SALUは自分と同じような孤独感や葛藤を感じていると、今回「alone」を一緒に作ってみて、改めて感じましたね。
口当たりのいいJ-POPばかりじゃ日本の音楽シーンは終わってしまう
──今作は歌詞の表現が素晴らしいですね。例えば「Good Life」は、清水さんの半自伝的なストーリーに、自分を信じるというヒップホップ的なメンタリティを落とし込んでいる。普通この内容だったら、ベタベタな応援歌や異常なボースティング曲になりがちだけど、この曲はバランス感覚が絶妙だと思いました。
歌詞はこの作品における超重要な要素なんです。僕は昔からものすごくこだわりを持って作詞していたんですが、それが自分の作る曲にうまくハマらなかったんですよ。乗せてみるとなんだかダサい。それで当たり障りのない日本語に変えたり、ハマりやすい英語にすることもあった。逆に日本語の詞が乗りやすいように曲を書いたり。だけど、今回は自分の作る音とメロディと歌詞が初めて完全に一致したんですよ。
──ポイントはなんだったと思いますか?
それはね、自分でもわからないんです(笑)。
──僕はヒップホップとR&Bの境界線が曖昧になったトラップのサウンドに清水さんが影響を受けているから、今回のようなフロウができたのかなと思ったんです。
それはあるかもな。昔だったら「Range Rover」のトラックに「Range Rover」という言葉は絶対に乗せなかった。でも一時期本当にラップばかりやってた時期があったんですよ。そしたら、いろんな音に違和感なく言葉を乗せられるようになって、今はそれが当たり前になった。言い慣れたんでしょうね。
──ちなみに歌詞とトラックがマッチしなくてボツになった曲もあるんですか?
そりゃもうむっちゃある(笑)。トラックはすごくカッコいいのに、日本語を乗せると途端にダサくなっちゃったり。今回は録音作品として、自分が「最高の出来だ」と思えるものを厳選しました。
──7月には本作を携えたツアーが始まります。どんなツアーになりそうですか?
どうなるんだろう。もちろんやりようではあるけど、過去作はどこかでライブを意識して作ってるんです。ちょっとアップテンポの曲が足りないかなとか。でも今回はそういうのが一切ない。録音作品としては本当にすごく満足できる内容になったけど、これをライブでどう表現するかは完全に未知数ですね。
──逆にツアーが楽しみになってきました。
「WHITE」はすごくパーソナルな内容だけど、独りよがりな作品だとは思わないんですよ。聴く人に対して開けた内容だと思う。わかってほしいし、むしろわからせたい。いわゆる口当たりのいいJ-POPばかりじゃ日本の音楽シーンは終わってしまう。僕はそんなふうに思っています。
- 清水翔太「WHITE」
- 2018年6月27日発売 / Sony Music Records
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初回限定盤 [CD+DVD]
4212円 / SRCL-9852~3 -
通常盤 [CD]
3240円 / SRCL-9854
- CD収録曲
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- dance with me.
- Good Life
- Friday
- (I'm fine)
- Silver & Gold
- 踊り続けよう
- Range Rover
- Beautiful
- alone feat. SALU
- Rainbow
- 初回限定盤DVD収録内容
-
「SHOTA SHIMIZU 10th Anniversary Event for Family」より
- Sorry Not Sorry
- My Boo
- HOME
- your song
- Tokyo
- SHOTA SHIMIZU LIVE TOUR 2018 "WHITE"
-
- 2018年7月3日(火)愛知県 Zepp Nagoya
- 2018年7月13日(金)北海道 Zepp Sapporo
- 2018年7月19日(木)大阪府 Zepp Namba
- 2018年7月20日(金)大阪府 Zepp Namba
- 2018年7月30日(月)東京都 Zepp Tokyo
- 2018年7月31日(火)東京都 Zepp Tokyo
- 2018年8月4日(土)香川県 レクザムホール
- 2018年8月7日(火)岩手県 盛岡市民文化ホール
- 2018年8月9日(木)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2018年8月11日(土・祝)福島県 郡山市民文化センター 大ホール
- 2018年8月19日(日)静岡県 静岡市清水文化会館(マリナート)
- 2018年8月24日(金)広島県 上野学園ホール
- 2018年8月26日(日)島根県 島根県民会館
- 2018年8月28日(火)福岡県 福岡サンパレス
- 2018年8月29日(水)福岡県 福岡サンパレス
- 2018年9月4日(火)石川県 本多の森ホール
- 2018年9月10日(月)東京都 日本武道館
- 2018年9月11日(火)東京都 日本武道館
- 2018年9月17日(月・祝)大阪府 大阪城ホール
- 清水翔太(シミズショウタ)
- 1989年生まれ、大阪出身のR&Bシンガー。2008年2月にシングル「HOME」でメジャーデビューを果たし、同年11月に1stアルバム「Umbrella」を発表。2009年5月にリリースした加藤ミリヤとのコラボシングル「Love Forever」は同世代リスナーの大きな反響を呼んだ。2012年には小田和正をフィーチャーしたシングル「君さえいれば feat. 小田和正」やカバーアルバム「MELODY」、2013年1月には初の日本武道館公演の模様を収めた映像作品「Naturally Tour 2012」をリリースした。2015年2月、初のベストアルバム「ALL SINGLES BEST」を発売。以降もコンスタントにリリースとライブを重ね、デビュー10周年を迎える2018年1月にシングル「Good Life」をリリース、2月には10周年イベント「SHOTA SHIMIZU 10th Anniversary Event for Family」を東京・大阪・名古屋で開催した。5月にシングル「Friday」を発表し、6月に1年ぶりのアルバム「WHITE」をリリースする。
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