ナタリー PowerPush - 色即ぜねれいしょん
今、くすぶっているすべての人々へ。心熱くする青春映画、誕生。田口トモロヲ&渡辺大知インタビュー
撮影前から「これはやばいぞ……」って思ってました(大知)
──この映画は大知さん以外のキャスティングも非常にユニークですよね。峯田さん、岸田さん、リリーさんを始め、音楽にかかわる人がすごく多いんですが、これはどういう意図なんでしょうか?
田口 自分にしかできないキャスティングっていうことを考えたらこういう風になったっていうことです。自分が懇意にしている監督さんとかが、どれだけ苦労して愛情を注いで、1本の映画を作っているのかを考えると、やっぱり自分は、おいそれとそういう人たちと同じ土俵でやることはできないという気持ちがあって。じゃあ何ができるかっていえば、まず脚本にこだわることと、キャスティングとスタッフィングなんですね。
──なるほど。
田口 でも保証はないわけですよ、はっきり言うと。役者じゃない人を使ってうまくいくかどうかっていうのは、ある意味賭けですから。
──前作の「アイデン&ティティ」が成功したからといって、今回もうまくいくとは限らないと。
田口 そう、だからこのキャスティングが実現したのは、これを許してくれたプロデューサーの男気や、面白いって言ってくれたスタッフの協力のおかげですね。
──でも実際、演技経験のない人を連れてきて演技をさせるというのは、監督としてはかなり苦心されるところじゃないですか?
田口 あの、俳優っていうのは、脚本に不自然なことが書かれていても、その不自然なことを自然に見せられる。それがプロの俳優なんですよね。でもミュージシャンや他の表現者の方はそうじゃない。だから僕はまず最初に動いてもらって、不自然だなって思うことは一切やらせないっていう方向で演出します。その人が自然に見えることだけをやってもらう。うん、そこは特に気を使います。ただ、峯田君はもはやちょっと別格で、僕は勝手にロック界のデ・ニーロって呼んでるんですけど(笑)。
──ロバート・デ・ニーロ?
田口 峯田君はその人間力がずば抜けているので。峯田君でありながら他の人になれる力を備えているんです。
──なるほど。じゃあ峯田さんはともかく、大知さんの場合は素の大知さんをなるべく活かす方向だったということですね。
田口 そうです。自分を役に近づけるんじゃなくて、役を自分に近づけちゃうんです。“乾純”じゃなく“乾大知”だと思って、一応教科書として台本はありますけど、もう自分で好きにやってください、って。
──大知さんは演技に関して、戸惑う部分はなかったですか?
渡辺 いや、ありました! ありまくりで! もう最初から最後までですよ。
──最初から最後まで(笑)。
渡辺 リハーサルが始まる前から、もう「あれ?」という感じで。最初に他の共演者の方と台本の読み合わせをしているときに「これはやばいぞ……」と思って。「練習をしなければ」と思ったんですけど、練習の仕方もわからなくて。ずっと不安でした。
──結果的にはどうやって不安を克服したんですか?
渡辺 あの、トモロヲさんに「素のままでいいから」とか言っていただいて。それでもできないんですけど。あれ、じゃあ克服してないのかな……(笑)。
田口 (笑)。
渡辺 いや、でも最終的に後悔はしてないです。今やったらもっとできるかも、という気持ちはありますけど、あれがそのときのベストだったと思うし。まあ、しゃあないというか(笑)。よかったな、と思います。
映画「色即ぜねれいしょん」
- 出演:
- 渡辺大知(黒猫チェルシー)、峯田和伸(銀杏BOYZ)、岸田繁(くるり)、堀ちえみ、リリー・フランキー、臼田あさ美、石橋杏奈、森岡龍、森田直幸、大杉漣、宮藤官九郎、木村祐一、塩見三省
- 監督:
- 田口トモロヲ(「アイデン&ティティ」)
- 原作:
- みうらじゅん(光文社文庫刊)
- 脚本:
- 向井康介(「リンダ リンダ リンダ」)
- 音楽:
- 大友良英
スペースシャワーTV20周年記念作品 / タワーレコード30周年記念作品 / KBS京都テレビ開局40周年記念作品 / ユースホステル誕生100周年記念作品
2009 / 日本 / カラー / 35mm / 114min / ビスタサイズ / DTSステレオ
8月15日(土)よりシネセゾン渋谷、新宿バルト9、吉祥寺バウスシアターほか全国公開。
8月8日(土)より梅田ガーデンシネマ、なんばパークスシネマ、シネリーブル神戸ほか関西先行ロードショー。
8月7日(金)にMOVIX京都にて“前夜祭”イベント開催決定。
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