自分の求めているものと真剣に向き合う

──最初タイトルを聞いたとき、「不完全であることがパーフェクトなんだ」という意味なのかと解釈したのですが違うんですね。

TK　それを僕が言うことは簡単なのかもしれないけど、自分にとってそれは逃げてるとしか思えないんです。人から見て未完成であることが時雨にとってのパーフェクトな状態だったとしても、僕はそれを求めて音楽を作ってるわけではないんで。いつか未完成がパーフェクトと思える日が来るのかもしれないんですけどね。そうしたらもうちょっとハッピーな気持ちで曲作りができるかもしれない（笑）。

──今は違う？

TK　そうですね。でも自分を表現するために作らざるを得ないんです。呼吸に近いのかもしれない。頭の中でどれだけイメージしても、何かに投影しないと人には伝わらないし、そうしないと前に進めない。そうなると自分たちと向き合わざるを得なくて。自分の求めているものと真剣に向き合うっていうのは、生半可な気持ちではできないですし。音楽をやってる理由っていうのはあんまり自覚してないですね。ソロのときは自分の違った一面だったり、余白を楽しんでるような感覚なのでちょっと向き合い方は違うんですけど。

──時雨だと？

TK　まったく違う精神状態ですね。音像は近くても、向き合う形はぜんぜん違って。時雨の場合、2人にリスナーとして聴いてもらうっていう意識もあるんで、彼らに対してカッコ付けたいというのがありますね（笑）。2人に「この曲を演奏したいな」って思ってもらえるかどうか。それって本当に稚拙なことかもしれないけど、そもそも自分たちがやってることに意味を持たせることが意味がない気がして。時雨に関しては「俺たちこういうことを伝えたいよね」とか明確なものはまったく見えてない。だからそういうことを言える人ってすごいなって思うんですよね。自分たちが進みたい道がはっきり見えていて、そこに対して自分たちが何をすべきか考えながら前に進める人はうらやましいなと思うし、物事が進めやすいなと思うんですよ（笑）。

──進めづらい自覚があるんですか？

TK　ありますよ。迷ったりしているわけではないんですけど。周りは苦労してると思います。

──でもそう言いつつもこのバンドは10年続いているわけですよね。

TK　そうなんですよね。でも昔と変わってなさすぎて（笑）。

345　うん。10年経った感じがしないんですよね。

ピエール中野　でも続けてきたかいは感じますよね。認められるようになったことで、やりたいことがやれるようになって、やれることも増えたし。今回だったらいろんなエンジニアの方と試したりもできるし、それぞれソロでいろいろやれるようになったりとかもして。続けてきたから広がってきたところもあるのかな。

すべてを3人の音に変換したい

──アルバムリリース後はツアーが始まりますね。以前、時雨はCDとライブは別モノだと言ってましたが、そのスタンスは変わらないですか？

TK　感覚としてはあくまで別モノですね。もちろん音源に究極の形を詰め込んでいるつもりなので、それをそのまま鳴らしたいという思いはありますが、やっぱりライブでしか生み出せない空気があるし、その瞬間において自分たちの限界を超えるつもりでステージに立ってますね。

──ライブにおけるカッコよさの基準は？

TK　ライブっていうのは自分たちでは一生観ることができないので……説明できないです。教えてほしいくらいですね（笑）。悪い意味でなく自分たちとお客さんの隙間って一生埋まることはないと思うんですよね。それがわかっていても、その溝をできるだけ埋めたいと思ってて。きっとその中で自分たちにしか見えないハードルを満たせない苦しみもあると思うんですけど、それも含めてすべてを3人の音に変換したいし、それがステージ上から伝わるといいなと思ってます。