ナタリー PowerPush - シギ

ニューシングル「輝いた」誕生 葛藤の果てに新たな扉を開く

「黒い雨」はまだ自分の肉になっていない

――ではカップリングの「黒い雨」に関しては?

これはけっこう前に書いた曲で、できたけどライブでも1回も歌ったことがなくて。だけど自分の中で密かに、この曲をバンドで重厚に鳴らしたらきっとドラマチックな仕上がりになるだろうと思っていて。言葉の意味合いというよりはメロディと全体的な音の流れを重視した曲です。昔書いた曲って、何度も歌ってライブでもやっていくうちに「あ、あのときの自分はこういうことが言いたかったんだ」とか「上手いこと言うね!」とか(笑)、自分で思い返すんですけど。書いた当時はまるで人様の作品のような印象で、どんどん自分の肉になっていくんです。でも「黒い雨」に関してはまだ肉になってない。だけどライブではこれから、私の中ではメインにしたいくらい、やって行きたい気持ちが強い曲です。これからこの曲がどんなことを私に伝えてくれるのかも、自分で楽しみにしています。

――けっこう、昔に書かれた曲のほうが無意識的に作ってたそうですね。

そうなんです、昔は今のようなことができなくて。よく他のミュージシャンの方がライブで「これはあのとき、こんなことがあって作った曲です」みたいに言うじゃないですか?ああいうのが一切できなかったんですよね。無意識的な言葉の遣い方しかできなかったんですけど、でもデビュー前後をきっかけに、そういうのがだんだん作れるようになってきて「言いたいことを言うのってなんて気持ちがいいんだ!」と思ったんです。音楽を初めて10年目なんですけど、今はようやくそういう感触を得た感じなんです。

――そういう意味では意識的に今を切り取った「輝いた」と、過去に無意識的に書かれた「黒い雨」ではすごく対照的なんですよね。

そうですね!

自分の理念と美学を追求「バカを見てもいい」

――どちらもライブで演奏されるのもまた楽しみにしています。ちなみに今は大学の試験中?

はい。ぜんぜん学校に行かなかったから……今それを身に沁みて罰を受けているところです(苦笑)。でも大学のテストってノートの持ち込みがOKだったりするので、友達にノートを借りてプリントして、それを自分のノートに書き写すんですけど、それが楽しくてしょうがないんです!私は自分のことを「単純作業の鬼」と呼んでるんですけど、それぐらい同じことの繰り返しが好きなの!昨日も6時間ずっと書き写してました(笑)。

――では学校の試験もクリアしてもらいつつ(笑)。

1月は制作もずっとやってたので、音楽と勉強が一気に押し寄せてきてます。今年はきっと去年以上に変化するだろうし、そこに葛藤も不安もつきものだと思うんですけれども、なんかそれすらも曲にしてみなさまに差し出せたらなと思いますし……でも、ほんとはもっと人目を気にする人なんです私は。だから誠実でありたいとか、嘘なく音楽を作りたいとか、きっとそれは綺麗事というか、ちょっと意地悪な人からは「なんだそれ?」って言われるような恥ずかしいことなのかもしれないと思う部分もあるんですね。けれども、本気で何かをやろうとする人たちっていうのは、必ず人にバカにされたり笑われるものだろうなと自分では思っていて。でもそれを気にしてやりたいこともやらずに死んでいくくらいだったら、バカを見てもいいから自分の理念と美学を追求して行きたい。それが音を作る私のあるべき姿なんじゃないかなと思っています。だから今年も「誠実」という言葉を持ってやって行きたいですね。

――いつも音楽と懸命に生きることが直結してますもんね。

そうですね。でももっと……あれかしら?もうちょっとラーメンみたいな曲も作りたいなと思いますね。自分でも血管切れそうな歌ばっかりなので、フルアルバムが出来たときにはそういう、ラーメン的な曲が自分でも作りたいですし。

――うん。ラーメン的なっていうのがちょっとどういうのかわかんないけど(笑)、聴いてみたいです。

伸び伸び~みたいなね。伸びちゃったよみたいな、そういう曲(笑)。そういうのも私なんで、作っていきたいなと思います。

――ああ、歌い上げる感じの曲じゃなくてね。ウィスパー系の柔らかい感じの歌とか。

ウィスパー?お化け?

スタッフ:それキャスパーでしょ!!

――あはははは。まあ、キャスパーでもいいですけどね。

あ、ウィスパーね!あはははは!

2ndシングル『輝いた』 / 2009年2月18日発売 / 1020円(税込)ESCL-3164 / Epic Records

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<CD収録曲>
  1. 輝いた
  2. 黒い雨
<初回仕様>

アニメ『銀魂』描下し スーパークリア アナザージャケット付

シギ

1987年生まれ、埼玉出身の女性シンガーソングライター。名前の由来は、幸せを運ぶと言われる鳥「鴫(シギ)」から。都内や関東近郊で地道なライブ活動を行っており、自主企画イベントも多数開催している。2008年にシングル「証明」でメジャーデビュー。激しいサウンドと独特のボーカルが織りなすパワフルで艶やかなパフォーマンスで、多くのファンを惹きつけている。