ナタリー PowerPush - シギ
ニューシングル「輝いた」誕生 葛藤の果てに新たな扉を開く
友情に寄り添う「僕等」という表現
――お互いに孤独である、という部分は前提としてこれまでにも曲を書かれてたと思うんですが「輝いた」では「僕等」という言葉で歌いかけられているのも特徴的ですよね。
その部分は、もっと一体感を出したいと思ったのと、アニメの友情の部分に寄り添って「僕等」にしたんですよね。
——最近の日常生活においても孤独の感じ取り方に変化はありましたか。
最近……テスト勉強ばかりしているので孤独を感じるどころではないというか(笑)。ノートを書き写すのに精いっぱいなんですけれど!
——そうなんだ(笑)。もともとシギさんの場合、ご自身の孤独感と歌を歌うことは深い繋がりがあると思うんですけど「違う体温と感じあえて孤独は消えていくんだね」と、早くも何かが見えてきた感じなのかなと。ちょっと気持ちがスッキリしました?
うーん……スッキリというか、この曲を作ってるときはモヤモヤしている部分が正直あったんですけど、先ほど言ったような点で。けれども作り終ったときにスッキリしましたね、歌詞を自分で見直してみて、もしかしたらこれは、そのときの自分に言い聞かせるように書いてたんじゃないかと思いました。
——「輝きたい」っていう想い?
そうですね。「輝きたい」って思ってるんだけど、あえてタイトルには「輝いた」という宣言をしています(笑)。
自分をブチ壊すため「踏み出しました!」
——過去との決別ソングっていうわけではないんですよね?
そうですねえ、それはないですね(笑)。変化はつきものじゃないですか、生きていく上で。変化っていうものにはきっと葛藤もつきものだと思っていて。だけど絶対に変わりたくない、変えられない譲れないもの、私が私としているものってたったひとつで良くて。それだけを持っていれば周りのほとんどが変わったとしても、私は私でいられると思ったんですよ、この曲によって。だから核となるもの、本質的なものは変わらないですね。過去と切断したものにするというよりは、過去のエキスも持ったまま行こうと。変化するということは今よりも先に走り出すことじゃないかなと思いますね。それが「走り出す」、そして「輝いた」という歌詞になってるんです。
――作って歌ってみて、この曲から何を教わりましたか。
えへへ……ちょ、ちょっと待って。今ね、変化って言ってたからオバマさんが気に入りそうな曲だなと思ったら、おかしくなってきちゃった(笑)。あの人CHANGEって好きですよね。
――あはははは、まさにCHANGEな曲だと思いますけど(笑)。
すいません!タイムリーな曲ですよね。うん、変化するということを教えられた曲だと思います。自分に対して保守的になったり頑なな部分、自信はないのにプライドだけ高いところが昔からあったんで。そういう自分をブチ壊すというか、あるいは否定したり、自分は黒だと言ってることに思いっきり否定するように白を投げつけるような行為も生きていく上では何度か必要だと。頑固な自分がそういう風に思えたことは凄く進歩したなと、それはこの曲でいろいろと学びましたね、今回。
――それにしても変化のタイミングが早いですよね。
2ndですよね、まだ。ちょっと先走っちゃったかな(笑)。でもきっとまた葛藤する時期も来ると思いますよ、この先に。また次の曲で立ち止まるかもしれないし。きっとそうやって繰り返していくけれども、それは決して後ろ向きなことではなく、先に進みながら繰り返していくんだと思います。
――うん。シギさんにはいつでも誠実に音楽と向き合っていたいという芯の気持ちがあって、その中での変化なんでしょうね。
初めに思ってた、この曲は嘘なんじゃないか?っていうのが、ちゃんと飲み込めたときに、この変化すら私であると思えたんですよね。これが今の私ですという点では非常に誠実であると思います。
――引っかかってた部分って、そこなんでしょうね。誠実でありたいと思う傍ら、では何が本当の意味で誠実なんだろうか?誰に対しての誠実なんだろうか?っていう。
そうです。あくまでも自分を頑なに守ることが真実なのかって言われたら、きっとそうじゃないなと。
――踏み出しましたね。
踏み出しました!
――ここはけっこう、別れ道だったというか重要な選択だった気がしますけど。
そうですね、私もそう思います。でも踏み出して良かった。
シギ
1987年生まれ、埼玉出身の女性シンガーソングライター。名前の由来は、幸せを運ぶと言われる鳥「鴫(シギ)」から。都内や関東近郊で地道なライブ活動を行っており、自主企画イベントも多数開催している。2008年にシングル「証明」でメジャーデビュー。激しいサウンドと独特のボーカルが織りなすパワフルで艶やかなパフォーマンスで、多くのファンを惹きつけている。