ナタリー PowerPush - シギ
ニューシングル「輝いた」誕生 葛藤の果てに新たな扉を開く
心の奥の孤独も傷もエモーショナルに美しく歌い上げるシンガーソングライター、シギ。2月18日にリリースされる2ndシングル「輝いた」では、新しい疾走感と共に先へ先へと走り出そうとするエネルギッシュな声を聴かせてくれている。早くもネクストステージへと駆け上がる彼女に現在を語ってもらう。
取材・文/上野三樹
「後ろ向きで暗い」自分のイメージを変える曲
――2ndシングル「輝いた」は躍動感あふれる1曲ですね。早くも新しい扉が開けている感じがしました。
そうですね、今までにないテンポ感ですよね。これまではハードでどっしり重い感じが私なんだと、私は思い込んでいたんですけど。今回は上田(健司)さんが全体的な曲のオケを作ってきてくれて、それを私が聴いてメロディを付けていくやり方をしたんですね。何せテンポが速かったので「追いて行かないでー!!」って感じでした(笑)。この曲をリリースするにあたって、色々と葛藤や不安もありましたね。
——それは具体的にはどういう不安ですか。
少し後ろ向きで暗いのが私だと思ってたから、こういう曲はもしかしたら私ではないのだろうかとか、嘘をついていることにはならないだろうかとか、そういういろいろなことを考えて悩んだりしてたんですけど。でも結局何をするにしても私がやれば、それはすべて私のものに、シギの色になっていくんだと。やってみて、葛藤や不安もいい経験になりました。
——自分で作ってしまっていたシギというイメージを自分で打ち破ったってことですか。
でもそれって大したことではないと思うんですよね、自分で自分の限界を作ることはすごく狭い世界だと思うし。きっと自分で見えてないところで人がイメージしてる部分もあるんだろうし。だから自分で自分の限界を作るのは止めようと思って。もっと先に目を向けてやっていこうという前向きな考え方に変わりました。
歌詞にも変化「体交われど 血は交われず」
——新しいテンポ感とメロディの中で、書かれてる歌詞にも変化が感じられます。
そうですね。今までは自分の目線でしか話をしなかったというか、デビューする前なんかは人に理解されようとも思わなかったし、いろんな人に聴いてもらおうとも思わなかった。一人きりだと思って自分で作って自分で歌って、お客さんがいたとしても私は一人だと思ってたけれど。デビューをきっかけに、だんだん人と音楽によって交わることに意味を見いだせるようになってきたんです。それで今回の作品はアニメのタイアップのお話もいただいたということで、もっといろんな人に聴いてもらえる機会なんだから、大衆――という言葉はあんまり好きじゃないんですけど、そういう大衆の人たちに私が寄り添う感じで音楽を作ろうかなっていうところで、言葉も今まで以上にシンプルにしました。
——これまでは一人きりの世界で作った曲も多かったと思いますが、今回はアーティストであるという立場で人に何を放つかを意識して作った曲でもあるということですね。
ああー、職人的な(笑)。ただ「走り出す時がきた」と歌っていますが、これは最初、恋愛の歌詞だったんですよ。だけどアニメのお話をいただいた際に友情物語だったので、そこでもう一度考え直そうと全部取っ払っていろんな人たちにスッと入ってくる言葉を選んだけれども。その中でもやっぱり私の言いたいことというのは、しっかり乗せようというところで1行目の「体交われど 血は交われず」という、どんなに男女間で体が交わったとしても、血液は交われないし肉親にもなれないというね。その最終地点が孤独だったとしても、やっぱり一人一人であることによって、違う体温であることを感じ合えるというか。そこで孤独は癒される、けれどもそれによってまた孤独になるし、人は人によって孤独を許される。そういうところを歌いたかったんです。
シギ
1987年生まれ、埼玉出身の女性シンガーソングライター。名前の由来は、幸せを運ぶと言われる鳥「鴫(シギ)」から。都内や関東近郊で地道なライブ活動を行っており、自主企画イベントも多数開催している。2008年にシングル「証明」でメジャーデビュー。激しいサウンドと独特のボーカルが織りなすパワフルで艶やかなパフォーマンスで、多くのファンを惹きつけている。