今日が最後だと思ってキスしていいのよ
柴田 お二人のお話やご著書を拝見し、そのお言葉を心がけながら生きていると、困難なことがあっても乗り越える努力をできるようになったり、自由に物事を考えられるようになり「怖い」や「不安」という感覚に振り回されることが少なくなりました。怖いものはもはやなくなりつつあるくらいのところまできたものの、ゴキブリは本当に怖くて出会うたびに震え上がってしまいます。昆虫がお好きな恭子さんにゴキブリのすごいところを教えていただけないでしょうか?
恭子 そんなにゴキブリに遭遇されるのですか?
柴田 (笑)。私のようなものは街とかで遭遇することがありまして……。
恭子 YouTubeに共食いの映像があるのです。
美香 虫の共食いのカテゴリーですよね。
恭子 ムカデが多かったでしょうか。ゴキブリも出てきます。そういう映像では、わたくしもゴキブリを見たりしますが、かと言って、わたくしが生のゴキブリに遭遇することはないですね。
柴田 私も北国出身で、だいぶ大人になるまでゴキブリは映像の中だけのものだったんです。
美香 寒いところには出てこないですものね。
柴田 それですごく怖いものだと聞かされてたせいか……。
恭子 人間のほうがもっと怖いですよ。
柴田 確かに!(笑) 今ちょっと溜飲が下がりました。
美香 虫と言えば、私たちがアンバサダーをしている、たかの友梨ビューティクリニックさんの商品の展示を日本橋に見に行ったのです。大都会の中だったのですけど、私の花柄のスカーフに蜂が止まって。あらまあと思ったのですよ。
柴田 おお。
美香 ふふふ。お花と間違えたのでしょうか。
恭子 そのお話のついでにお話しさせていただくと、わたくしの美しいお顔がパッケージになったシートマスクがあるのですよね。それがとっても効果があって。わたくしのお顔を見ながら使っていただけると、違う世界に連れて行かれるような感覚になるそうです。
美香 柴田さんにとっても癒しになるかもしれませんね。私たちの日めくりカレンダーと一緒にサインしてお送りさせていただきます。
柴田 わー、一生使えないかもしれない……。カピカピになる未来を想像してしまいました。
恭子 何をおっしゃいますか。シートマスクは使うためにあるのですよ。10枚もあるから10回使えます。
柴田 では特別な日の前に……。
美香 いえいえ、特別な日と言わずに!
恭子 よく「特別な日」と言われるのですが、毎日が特別な日なのです。明日が絶対に来ると思って生きている方がほとんどでしょ? でも、わたくしはそう思ってない。なぜそう思えるのかが不思議なのです。だから、わたくしはいつも言ってるのですよ。「あなたがわたくしと会うのは今日が最後だと思ってキスしていいのよ」って。
柴田 ハハハ。
恭子 そうすると涙目になって「どうして?」と尋ねてくるグッドルッキングガイたちもいるのですよ。それで「あなたの熱量が全然伝わってこないから」って言うと……泣いてしまうのよね。
美香 そうですね。
柴田 わあ……。私がゴキブリに加えて怖いと思うものに「死んでしまう」ということがあって、お二人に「死」についてのお考えを聞きたかったんですが、今のお話でお答えいただけたように思います。
恭子 わたくしは「死」について、ネガティブに思っておらず、恐れてもおりません。「死」というのはENDではないのですよね。なぜ皆さんは死が終わりだと思うのだろうって。かと言って、アニメのように死んだら魚に生まれ変わるとか、そういうふうに思っているわけじゃないのですよ。だけどENDではない。
柴田 誰かの死を思うときにそんな考えが助けになりますね。
恭子 そうですね。わたくしの場合はベンガル猫のファビュラスくんだったり。
柴田 動物というのはまた違いますか?
恭子 わたくしはファビュラスくんを動物と思っていないですね。
柴田 すみません!
恭子 いえいえ。わたくしの生きていくうえでのプライオリティは1番が美香さん、2番がお金、3番がファビュラスくん、4番がシューズ、5番がグッドルッキングガイたちなのですが、ファビュラスくんは去年、毎日のように病院に行っていて。
美香 一時期かなり危険な状況になって入院もしたのです。
恭子 病院に行った美香さんが動画で状況を送ってくれるのですが、涙が勝手に出てくるのですよ。悲しいのかなんなのかわからないのですが……それもたぶん自分がかわいそうで悲しいのだと思いますね。そんなときに「もしかしたら今日が山かもしれない」と先生がおっしゃって。わたくしは「何を根拠にそう言ってるのですか」と聞いたのですよ。先生たりとて人間なわけですからね。結果的にそうなったとして、それは仕方なく受け止めますよ。でも今生きているものに対して「今日が山だ」なんて軽々しく言わないでほしい。
美香 姉にそっくりな猫なのです。ちょっとゴジラにも似ていて。
柴田 Podcastで美香さんが「おい~っ!」というファビュラスくんの声真似をされていますよね。きっとそっくりなんだろうと感じさせるもので、とても素敵でした。
美香 ふふふ。姉のように私を呼ぶのですよ。
絹ごし豆腐じゃなくていいのですよ
柴田 本当にお二人からは学ぶことばかりです。
恭子 いえいえ、わたくしも皆様とお話ししている最中に「人様はそういうふうに感じるのだな」と思うことがたくさんあります。「ファビュラスワールド」では恋愛関係の悩み事をたくさんお寄せいただいておりますが、その中で、わたくしは「どうしてこの人は相手が自分とだけしか付き合ってないと確信を持ってらっしゃるのだろう」とか「彼氏とか彼女とかどう決めていらっしゃるのだろう」とか「どうして相手が自分と同じ熱量だとわかるのだろう」とよく言っておりますよね。そして最も思うことは、女性が男性に対して、あまりにも気を使いすぎているということ。
美香 男性から選ばれようとしていますよね。
恭子 なぜ自分が選ばないのだろう。なぜご自身が“選ぶ”立場ではないのか。なぜ“選ばれる”が自然なのか。それはわたくしにとって最大の謎。「選ばれるためにはどうしたらいいですか?」というお悩みに対してのわたくしの答えはいつも同じなのです。「なぜあなたは自分で選ばないのですか?」って。
柴田 自分も含めてたくさんの女性が「選ばれる」という考えを内面化しているような気がします。
恭子 なぜそんなにまでして、男性に気を使わないといけないのか。そうやって甘やかすから、だんだんとそれが普通と思われてしまうのではないでしょうか?
柴田 積み重ねで……。
美香 お姉さんのメンズへの態度と同じですね。足元を見て、もっともっとと厳しい要求をしてしまうのでしょうね。
恭子 わたくしは足元を見てるのじゃないのよ。研究。人間研究。
柴田 私も自分で選び取るとか、対等に付き合ったり、意見を言い合ったりすることが本当にできていなかったんです。そういう自分に向き合うのもかなりつらかったんですが、思ってみれば変な話だったなって。
恭子 「対等」と今おっしゃったのですけど、対等じゃなくても構わないのですよ。対等であったほうがいいというのは、ある意味で「きれいごと」。「選ぶ」のと「選ばれる」のでは対等ではないですから。「対等にしよう」と思うこと自体がメンタリティ的には、もう相手に罠に掛けられている。わたくしがよく言っているのは「フェア」。わたくしは勝手にするし、嫌だったら相手もわたくしに会わなければいい。これがわたくしにとってのフェアな関係ですが、わたくしのメンズへの言動を見た美香さんには「とても対等ではない」とよく言われますね。
柴田 確かにそうですね……。なぜ「対等」を目指すのかはあまり考えていなかったし、そこでまた歪みが生まれていたなって。
恭子 柴田さんはあまりにも神経質に考えすぎなのじゃないですか?
柴田 あっ、そうかもしれません……。
恭子 絹ごし豆腐じゃなくていいのですよ。
柴田 き、絹ごし豆腐……!
恭子 お豆腐の中で、絹ごし豆腐が絶対的に一番おいしいとは限らないでしょう?
美香 とろんとして、すぐ潰れちゃいますものね。
恭子 木綿豆腐が一番おいしい場合もあるわけです。絹ごし豆腐はあまりに柔らかすぎて、繊細すぎて、壊れやすくて、結局はおいしいところが食べられないということもあります。柴田さんはそういうふうになってしまっているような気がします。
柴田 おっしゃる通りかもしれません……。年々、絹ごし豆腐になっていますね。すごく胸に刺さりました。恭子さんの例えは、とてもわかりやすいし、ユーモラスだし、心に残りやすくて。「私は今、絹ごし豆腐だ」と思うと、ちょっと考え方を変えられますね。
恭子 そうでしょう? 湯葉もあるのですよ。
柴田 わあ(笑)。
恭子 絶対的にそうじゃなければいけないというものは、わたくしの中には存在していないのです。柴田さんもそういうふうに考えたら、とっても楽しい人生を過ごすことができるのじゃないですか?
柴田 本当ですね! 「湯葉があるんだ」と思った瞬間、本当に楽しくなりました。
美香 ふふふ。
柴田 湯葉というものをちゃんと味わったことがないかもしれないです。
恭子 だとすれば、すくい湯葉もなかなかいいですよ。固い湯葉になる直前、なる瞬間にすくって醤油を付けて食べる。もちろん何を付けてもいいのですが、すくい湯葉のように人生を味わってみてはいかがでしょう。
柴田 ありがとうございます……! すくい湯葉のように生きていきたいと思います。
Spotify Podcast「叶姉妹のファビュラスワールド」
叶姉妹と、叶姉妹が愛する大切な皆さんが声でつながる新しい交流の場。寄せられたお便りや質問に、恭子さん、美香さんそれぞれが本音で向き合い、答えていく。音声ならではの親密な対話を通じて、先の読めないこの時代に自分の指針をもって人生を生きるためのヒントをお届け。毎週火曜18時頃配信。
プロフィール
叶姉妹(カノウシマイ)
セレブリティライフスタイルプロデューサー。天才的なプロデュース力と類いまれなセンス、ハイパーゴージャスなボディを持ち、老若男女問わず圧倒的な支持を得る。2021年8月よりSpotifyで毎週火曜に配信されているPodcast「叶姉妹のファビュラスワールド」は、次元を超えたトークが“大人気・大絶賛・超話題”となり、著名人を含む幅広いファンを生み出し続けている。たかの友梨ビューティクリニックのアンバサダーに就任した2人が、美の女神となって登場するCMや、自身の顔がパッケージになったシートマスクも大きな話題に。さまざまなメディアの注目の的となっている。ECサイトでは、叶恭子のファビュラスな名言31を厳選した日めくり「あなたの心にファビュラスを」をはじめ、姉妹企画考案のオリジナル商品を販売中。
叶姉妹公式ECサイト Kano Fabulous Collection
Spotify ポッドキャスト 叶姉妹のファビュラスワールド
柴田聡子(シバタサトコ)
北海道札幌市出身のシンガーソングライター・詩人。武蔵野美術大学卒業、東京藝術大学大学院修了。大学時代の恩師のひと言をきっかけに2010年に活動を始め、2012年に三沢洋紀プロデュースによる1stアルバム「しばたさとこ島」、2014年に自身で録音した2ndアルバム「いじわる全集」、2015年に山本精一プロデュースによる3rdアルバム「柴田聡子」を発売する。2016年6月に初の詩集「さばーく」を発売し、第5回エルスール財団新人賞・現代詩部門を受賞した。2017年5月に4thアルバム「愛の休日」、2019年3月に5thアルバム「がんばれ!メロディー」、2022年5月に6thアルバム「ぼちぼち銀河」を発表し、2023年には7年にわたる文芸誌「文學界」での連載をまとめたエッセイ集「きれぎれのダイアリー」を上梓。雑誌「ユリイカ」で特集されるなど、さらに注目を浴びる中、2024年2月に7thアルバム「Your Favorite Things」をリリースした。
柴田聡子 / SHIBATA SATOKO | 柴田聡子オフィシャルウエブサイト
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