叶姉妹を敬愛する柴田聡子 夢のファビュラス人生相談

2021年8月よりSpotifyで毎週火曜に配信されているPodcast「叶姉妹のファビュラスワールド」。叶姉妹の世間の想像の遥か斜め上を行くアメージングなトークが“大人気・大絶賛・超話題”となり、著名人を含む幅広いファンを生み出し続けている。最新アルバム「Your Favorite Things」で今注目を浴びているシンガーソングライターの柴田聡子もその1人だ。

文芸誌「文學界」に連載していたエッセイで、柴田は「叫び疲れた魂を最近つかずはなれず慰めてくれるのが、Spotifyオリジナルポッドキャスト番組『叶姉妹のファビュラスワールド』」と紹介。これをきっかけとして、2022年2月にはPodcastに電話出演する機会を得て、2人と言葉を交わしている(「叶姉妹のファビュラスワールド #27」)。

今回、音楽ナタリーでは叶姉妹を敬愛する柴田とのオンラインミーティングを恐れ多くも2人にオファー。叶姉妹の快諾により、夢のようなひとときが叶うことになった。このヘブンリーな時間の中で、柴田は2人への愛や受けた影響を改めて告白。叶姉妹はそのポリシーを独特な言葉で表現し、自由に生きるためのヒントを優しく示してみせた。

取材・文 / 三浦良純

わたくしは自由にありのままに生きているだけのことです

柴田聡子 もともとお二人のことはテレビでよくお見かけしておりまして。そこに現れるだけでパッと花が咲いて、空気がガラッと変わるような立ち振る舞いですとか、エネルギッシュでユーモラスなところが好きだなあとしみじみ思っていたんです。そんな中、2021年夏に「叶姉妹のファビュラスワールド」というPodcastが始まると、それまで全然知らなかったお二人の人となりを知ることができ、またまた大好きになっていって。

叶恭子 そうなのですね。美しく華やかでファビュラスな佇まいがわたくしたちの取り柄ですから「音声だけで大丈夫なのかしら」とPodcastが始まる前は思っていたのですよ。

叶美香 番組ではファビュラスな美しさを封印していますからね。

柴田 そうは思わなかったというか……初めて聴いたときから不思議と伝わってくるものがあって。

恭子 それはきっと“究極のオーラ”でしょうね。

美香 責任と覚悟を持って自由に生きていますもので。音声でも伝わる方には伝わっているのだろうと思います。

恭子 「ファビュラスな美しさ」とひと口に言っても、そんな取り柄を持っている人もなかなかおりませんし。

美香 ふふふ。姉らしいユーモラスな言葉でございます。

柴田 尊敬しております。お二人は「自由に生きる」ということを一側面からではなく、いろんな面から考えていらっしゃると思うんです。そうして自由を探求することで、人生のさまざまな局面をしなやかに乗り越えて、タフに生きていこうと。そういうことをずっとお話しされている。そのお言葉に私は本当に毎回グッときておりまして……。

恭子 今お話を聞いていて、すべては合っていないにしろ、柴田さんがその優れた感性で、目には見えない、わたくしたちのとても深く大切なところまで受け取ってくださっていらっしゃることが伝わってきました。そしてわたくしたちのことを、想像を絶するくらい深く愛してくださっているのだなと。

叶恭子

叶恭子

美香 そうですね。2年前の「叶姉妹のファビュラスワールド #27」でも、熱いラブレターのような感想を送ってくださって。お電話ではとても胸がいっぱいで緊張もされていたご様子だったのですが、そのときも柴田さんのお心がそのお話によってとても伝わってきてよかったと思っておりました。

柴田 いやー、そんなことを思っていただけていたなんて、ちょっと涙が出そうです……。あのとき、私は感動しきりで「はー、はー」としか言えなくて、言葉で気持ちをお伝えできなかったので、今こういう場をいただけて本当にうれしいです。

叶姉妹 うふふふ。

柴田 もっと楽しくおしゃべりしたかったんですけれども。

恭子 いえ、そんな。とても楽しかったですよ。

柴田 うれしいです(笑)。当時はちょうど自分が私生活ですごく悩んでいた時期で。

恭子 柴田さんは「家に帰りたくない」とお話しされていましたよね。怖い思いをされていないだろうかとわたくしたちは心配していたのですよ。

柴田 そのときは「おうちに何かあるのですか?」と聞いてくださって。妖怪とか怖い動物とか(笑)。そういう優しくてユーモラスなところも本当に大好きなんです。お二人のように優しくて、しなやかで、ユーモラスで、情熱的で……というふうにすべてを両立するのってすごく難しい気がするんですけれども。

恭子 いいえ、それは難しいことでもなんでもなく、わたくしがわたくしとして自由にありのままに生きているだけのことです。もちろん、そこには覚悟と責任が伴っておりますよ。そして、心のマナーも。ただ、それだけのことです。

美香 姉は天才だと私は思っているのですよ。

柴田 今おっしゃられたように、ありのままに生きて「自分を出す」ということを私はお二人から学びました。それができなかったから、つらい私生活を送っていたんだということを感じましたし、「自分を出す」ということは新しいアルバムを作るうえでも本当に大事なキーになりまして。お二人から教えられるようなことがなければ、自分や自分の音楽にしっかり向き合うこともなかったなって……すごく大きな出来事だったので心から感謝しております。

恭子 具体的にどういったことがあったのかは、もちろんわかりませんが、なんとなくおっしゃってるようなことは感じます。そして柴田さんからは今回も、とても丁寧な素晴らしいお手紙をいただいておりまして。

美香 本当に細かくPodcastを聴いてくださり、「知のジュエリー」などの姉の著書も読んでくださっていることが書いてありましたね。とても情熱が伝わってくるお手紙でした。

恭子 わたくしは、生きていくうえで一番大事なことは情熱だといつも思っているのですよ。

美香 今日はとても楽しい時間が過ごせてよかったですね。

恭子 それは先ほども言いましたように、柴田さんの感性がとても優れていて、そのうえに、そのうえにですよ。恐れずにご自身を出していらっしゃるからでしょう。

柴田 ハハハ……。

恭子 なんでしょうね、チャーミングなところがありますよね。

どうして自分を嫌いになれるのですか?

恭子 わたくしのお話をありがたいと言ってくださる方がとても多いのは、おそらくわたくしが感じるままに話しているからだと思うのです。

柴田 それによってPodcastのリスナーは私も含めて本当に救われていると思いますし、言いたいことをただ言ってるという感じはまったくしないんです。そこに優しさが確かにある気がして。

美香 姉も私も押し付けることはしておりません。「ああすべき」とか「こうすべき」とは言わずに、ただ「私たちがどう思うか」ということをお伝えしております。

叶美香

叶美香

恭子 わたくしたちは、人様に対しても、自分自身にも正直に誠実に生きております。その部分を柴田さんは感じ取っていらっしゃるのではないですか?

柴田 はい。お話を聞いていて、優しさって外に向けたものだけじゃないんだなと今感じました。自分への優しさが人への優しさになることもあるんだなと……感動しております。

恭子 自分への優しさ……? それは今初めて聞きました。

柴田 認識が間違っていたら申し訳ありません……。

恭子 いえ、それについて研究しようと思いますが、「自分ファースト」のことでしょうか。

柴田 はい、自分に正直であるというのは自分に優しいということだと思ったんです。

恭子 なるほど、そういう紐付けなのですね。

柴田 ご著書でも自分を大切にすることが第一と書かれていらして。

恭子 そうですね。「自分ファースト」は叶のポリシーです。自分を大切にできない人は人様に真の思いやりを持つことはできないとわたくしは考えているのです。

柴田 私はそれすら当たり前ではなかったときがあって、自分を責めてしまったり、自分が嫌いだったり……。

恭子 どうして自分を嫌いになれるのですか?

柴田 いやー、なんででしょう……。嫌いでしたね。

恭子 自分が嫌いってどんなことなのでしょう。

美香 うーん。

柴田 私の場合ですと、誰かとお会いしてうまく話せなかったりとか……。

恭子 その方と二度と会わないかもしれないじゃないですか。

柴田 そうですね……。でもそんなことも考えられないくらい「なんでお前はうまくやれなかったんだ」とかすぐ自分を責めてしまって。

柴田聡子

柴田聡子

恭子 逆にうまくやれたと感じるのはどんなときですか?

柴田 自分を嫌いなときは、そんなふうに感じるときはなくて……。

美香 全部を責めてしまうわけですね。

柴田 自分の行動すべてに自分でジャッジを下していくんですけれども、その中に「よくやった」みたいなジャッジはないという。すごく不幸な状態だったなと。

恭子 ああすればよかったというのは、結局は相手に対してのことですよね。「それがそんなに大切なことですか?」とわたくしは思うのです。それが「自分ファースト」なのです。よっぽどのことでない限りは、自分自身を責めることはないというか、自分を責めるってどんなことなのだろうとわたくしは思います。

美香 お姉さんが自分を責めるようなことはないですよね。私はあのとき、ああすればよかったなと思うこともあるのですが……。

恭子 たらればでしょ? そんなことを考える時間があったら、映画を観て楽しく睡眠するほうがよいのではないの。

美香 って言われるのですよ(笑)。

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