ナタリー PowerPush - 柴咲コウ

新曲「Strength」と音楽的ルーツを語る

「CIRCLE CYCLE」や「galaxias!」はまだ途中経過

──先程、レコーディングについてお話されていましたが、去年の2作品に関してはどのように制作を進めたんですか?

インタビュー写真

私の中で生まれたいろんなインスピレーションをそれぞれの制作者に伝えていった感じです。インスピレーションを相手に伝えるのは明らかに下手だと思いますけど(笑)。「宇宙っぽいのがいい」とか「BPM135くらいだけど、遅く感じないトラック」とか、そういうふうに伝えます。

──作詞はどのように行うんですか?

歌詞を書くときは、まず自分の中でテーマを設定します。例えば「中国三千年の歴史みたいな、水墨画みたいな雰囲気の世界を書く」って(笑)。そのテーマに沿って、ときには自由に発想を広げたりして書いていきます。

──「CIRCLE CYCLE」は美しい音色でトランシーなのに対して、galaxias!はエレクトロやダブステップといった刺激的な音楽性ですよね。

そうですね。「CIRCLE CYCLE」は内面的な感じ。galaxias!はTeddy(Loid)くん、DECO(*27)ちゃんと一緒にやるにあたって、コンセプトが宇宙で。Teddyくんは存在自体が宇宙人みたいなので(笑)、そのコンセプトのもと、最初から滞りなくできたんですよね。音量も「CIRCLE CYCLE」はバンドでやったときに美しく聴こえるようなミックスなのに対して、galaxias!は限界ギリギリまで出しています。私としては、これはまだ途中経過だと思っていて、2012年はより突き詰めたものができるんじゃないかなって。

「Strength」は今を生きている人の気持ちを歌った

──そうした作品の流れを受けてリリースされる2012年第1弾シングル「Strength」は、「CIRCLE CYCLE」や「galaxias!」とは異なるソウルポップ、そして途中で転調する箇所も含めて凝った1曲ですよね。

この曲はタイアップの関係上、先方から「2曲欲しい」というオーダーがあったんですけど、こちらから「じゃあ、その2曲分を1曲にしませんか?」っていう提案をしたんですよ。私自身、1曲の中でいろんな展開がある曲が好きなので。しかも「メロウとまではいかないまでも落ち着いたところは欲しいし、ちょっとポップな要素も欲しいし、ただ合体させるだけじゃなく、気分がちょっと落ち着いて、でも元気になるっていうものができたらいいな」っていうことを言ってたら、まさにそういう曲になったっていう。

──つまり、ミックスされた音楽が好きな柴咲さんらしい曲ということですね。作詞はどのように行ったんですか?

歌詞は「3月11日の東日本大震災以降、今を生きている人の気持ち」をテーマに自分なりの言葉で紡ぎました。ただ、この歌詞はサウンドとともにできあがった部分が大きくて。サビはハッピーなサウンドなので、そこはあらがわず歌詞もハッピーにしています。

──でも、2曲の楽曲を1曲にした分、サウンドに合わせて作詞するのは難しかったんじゃないですか?

そうですね。この曲の主人公の状態を考えると、必ずしもハッピーになれる状態ではないんですよ。そこで主人公の思いをどんどん掘り下げていったんです。人生には日々さまざまな出来事が起こる。それに対して、ときにあらがったり、ときに受け入れたり。そういうことを繰り返すことで、それが自分の肥やしになって成長していくのが人生なのかなって思えたんです。だから、この「Strength」では、ふさぎ込んでいるところから始まって、微笑むところまで描くことができたんじゃないかなって。人って、つらい出来事があっても、あるとき、ふっと楽になることができる。数秒前にはできなかった考え方に切り替えることができたりするものなので、この曲もそういうきっかけになればいいなと思いますね。

──そして、カップリングの「もう、いないよ」は柴咲さんが作詞だけでなく、作曲も手がけられています。これは、ビートのループを土台に、その中でちょっとずつ歌詞が変わっていく、ある意味でダンスミュージックの手法でできている曲ですよね。

この曲はサウンドと歌詞が同時にできたものなんですけど、夢から覚めたときにレコーダーに吹き込んだ1分くらいのフレーズを広げていったんです。そうやってできたものなので、積極的に聴くというより、たまたま耳にしたっていう感じで聴いてもらえればいいかなって。

──柴咲さんの中で作曲というアウトプットは日常的に取り組まれているものなんですか?

私の家には音楽部屋があって、そこでストレス発散のように歌ってみたり、たまに「Logic」(※音楽制作ソフト)を立ち上げて、サンプリングフレーズをつなぎあわせてインストを作ってたりはしていました。けど、今までメロディが浮かぶことはなくて。ピアノを触っていて、「いいな」っていうフレーズが浮かぶくらいだったんです。でも、最近はそのフレーズを作曲につなげることを覚えたので、今後はいろんな方法を吸収して、スローペースであっても作曲は続けていきたいですね。

──そして、作品リリース後の5月には10周年の節目となるライブがあるそうですが、ここから先はどんな活動になっていきそうですか?

流れに乗るってことしか考えてないですね(笑)。必ずこうしなきゃいけないってこともないですし。ただ曲はどんどん作っていって、それを並べたときに「アルバム作りたい」ってことになると思います。去年2枚アルバムを出したことで自分が追求したいことも見えてきたので、そういうものを形にしていけたらいいなって思いますね。

インタビュー写真

ニューシングル「Strength」2012年3月14日発売 NAYUTAWAVE RECORDS

  • ... / Amazon.co.jpへ
  • ... / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. Strength
  2. もう、いないよ
  3. Strength -Instrumental-
柴咲コウ(しばさきこう)

1981年8月5日生まれ、東京出身の女優 / シンガー。2001年に公開された映画「GO」での演技が高く評価され、日本アカデミー賞で最優秀助演女優賞、キネマ旬報ベスト・テンで最優秀助演女優賞などを獲得した。シンガーとしてはシングル「Trust my feelings」で2002年にデビュー。2003年にRUI名義でリリースしたシングル「月のしずく」が100万枚を超える大ヒットとなった。また福山雅治とのユニットKOH+名義でシングル「KISSして」を2007年に、「最愛」を2008年に発表している。さらに2011年にはDECO*27とTeddyLoidとともにgalaxias!というユニットを結成し、アルバム「galaxias!」を11月に発売している。2012年3月にシングル「Strength」をリリース。