ナタリー PowerPush - 柴咲コウ
新曲「Strength」と音楽的ルーツを語る
昨年、ソロアルバム「CIRCLE CYCLE」と、TeddyLoidおよびDECO*27と結成した新ユニットgalaxias!名義でアルバムをリリースした柴咲コウ。そんな彼女が2012年の第一弾シングル「Strength」を発表した。
これを記念してナタリーでは、柴咲にインタビューを実施。彼女の音楽的ルーツやあふれんばかりの音楽愛を紐解きながら、表題曲「Strength」と、作曲を担当したカップリング曲「もう、いないよ」について訊いた。
取材・文 / 小野田雄 インタビュー撮影 / 中西求
2011年は音楽活動が無理なく進められた
──2011年は柴咲さんにとって、どのような1年でしたか?
変革の年でしたね。2010年はいろいろ悩んだり迷ったりしてて、今思えば、ずっと土を耕していたような1年で。それが去年に入っていきなり変わったんです。それまで出演するなんて予想できなかったような海外の映画「47RONIN」の撮影が2月から7月くらいまで入って、その間5月にアルバム「CIRCLE CYCLE」を出して。体が2つ、3つ必要なくらいの仕事を気が付けばうまくやり終えることができた感じですね。
──しかも女優業で多忙な中、11月には新ユニットgalaxias!でアルバム「galaxias!」をリリースされて。2011年は音楽活動にかなり精力的でしたよね。
自分では音楽活動があまりに無理なくできてしまったから、不思議なんですよ。2011年には本当にいろんなことが凝縮されていたので、今こうして振り返っても「あ、そうか。今は2012年なんだ」って思ってしまうくらい。あっという間に終わってしまった感じです。
──かなり充実した1年だったと。
そうですね。音楽活動については、歌詞を書いて、歌って、「はい、終わり。あとはよろしく」ってことではなく、歌入れ後の作業にも立ち会わせてもらったり。1曲1曲に愛情を持ってレコーディングを行いました。昨年出した作品には、その成果が結実されていると思います。しかし「よくここまでできたな」と思いますよ。自分でもどうやってこなしたか、思い出せないし(笑)。周りのスタッフのサポートには本当に感謝してます。
4つ打ちの音楽が大好き
──これまでの柴咲さんは「月のしずく」や「かたち あるもの」に代表される普遍的な歌モノを追求されてきましたよね。それが2011年にがらりと音楽性が変わって、ダンスミュージックに寄ったポップミュージックを指向するようになった要因を教えてください。
スタッフが変わったことですね。それでやりかったことができるような体制になったんです。もちろん、これまでの曲ももちろん好きですし、歌っていていまだに「気持ちいい!」と思えるし、だからこれからも大事に歌っていきたいなと思っています。でも一方で、自分が好きだと思ったものも追求したいという思いもあって。
──なるほど、それがダンスミュージックだったというわけですね。
そうですね。
──昨年公開されたiTunesのプレイリストを拝見すると、JUNO REACTORやAPHEX TWINといったダンスミュージックをセレクトされていますね。
ダンスミュージックには10代の頃から魅力を感じていて。心臓の音とか電車のガタンゴトンって音のような規則性のある音って安心するんですね。だから、4つ打ちの音楽が大好きなんです。ヴェルディの「レクイエム」というクラシックの曲を4つ打ちにリミックスしたバーションもすごい好きです。
──最初からダンスミュージックを聴いていたんですか?
いや、中学生の頃はヒップホップとR&Bを聴いていました。PUBLIC ENEMYとかA TRIBE CALLED QUESTとかメアリー・J・ブライジとか。あと日本のヒップホップだとKICK THE CAN CREWが大ブレイクする前にミックステープを通じて聴いていたり。こうやって過去に聴いてきた音楽を振り返ると、いろんな要素をミックスした音楽が基本的には好きみたいですね。
──そして、ヒップホップから始まって、聴く音楽のテンポがどんどん上がっていった感じですか?
そう。速くなっていっちゃった、とめどなく(笑)。そして、いろいろ聴いていくと、ダンスミュージックも枝分かれして、いろんなジャンルがあって。ダンスミュージックの中でも、自分の中に好き嫌いがあるんだなって発見もありました。例えば、ロックの泣きの要素はあまり得意じゃないのに、ダンスミュージックの泣きの要素は好きだったり。
──そういえば、iTunesのプレイリストにダンスミュージック要素のないFOO FIGHTERSの「Everlong」を挙げてらっしゃいましたよね。
あの曲は、ミッシェル・ゴンドリーが監督を務めたビデオクリップが好きで。ミッシェル・ゴンドリーは、あのビデオクリップで夢の世界を見事に映像化していて。私もよく夢を見るから、あの映像世界には共感を覚えましたね。
──ということは、柴咲さんはビデオクリップにもこだわりがあるんですか?
そうですね。音を映像でどう表現するかによって、音の印象も変わってきますから。シュールに作るのか、それともポップに作るのか。そういう映像に対する感覚は、自分でもビデオクリップを作ってもらうときにすごく大事だと思っています。あまり視覚効果に頼りすぎると、音本来の良さがわからなくなってしまったりもしますけど。
柴咲コウ(しばさきこう)
1981年8月5日生まれ、東京出身の女優 / シンガー。2001年に公開された映画「GO」での演技が高く評価され、日本アカデミー賞で最優秀助演女優賞、キネマ旬報ベスト・テンで最優秀助演女優賞などを獲得した。シンガーとしてはシングル「Trust my feelings」で2002年にデビュー。2003年にRUI名義でリリースしたシングル「月のしずく」が100万枚を超える大ヒットとなった。また福山雅治とのユニットKOH+名義でシングル「KISSして」を2007年に、「最愛」を2008年に発表している。さらに2011年にはDECO*27とTeddyLoidとともにgalaxias!というユニットを結成し、アルバム「galaxias!」を11月に発売している。2012年3月にシングル「Strength」をリリース。