shallm「charme」インタビュー|みんなに寄り添う、“魔法”のアルバム (2/2)

四季の中で夏の曲が一番好き

──「閃光バード」に話を戻して、この曲は歌詞もだいぶ暗いですが、何かあったんですか?

説明するのがちょっと恥ずかしいんですけど、半分は自分のことを書いていて、もう半分はとある作品からアイデアをもらいました。私は四季の曲の中で夏の曲が一番好きなのに、6カ月連続リリースでは夏の曲を作らなかったなと思って。

──「夏の曲」が好きというのは、夏そのものはそうでもないということ?

暑いのは好きじゃないんですけど、自分の記憶の中では、夏ってすごくきれいなものなんですよ。だから夏の曲も大好きなんですが、いざ自分で書くとなったら気張りすぎたのか、とても時間がかかっちゃいました。

──時間がかかったのは作詞? 作曲? それとも両方ですか?

両方ですけど、作詞のほうがより時間がかかりましたね。歌詞の参考にした作品が、虐待を受けて、檻に閉じ込められている子供が自分のことを飼い鳥だと思い込んでいるという話で。そこに、檻の外の世界の象徴として「花火」というモチーフを加えたんです。でも、この花火を見るところまでの歌詞の辻褄を合わせるのが難しくて、3回ぐらい全部消して書き直しました。

──liaさんは前回のインタビューで「起承転結のある、ストーリーをなぞれる歌詞にしたい」とおっしゃっていましたね。

はい。1つの物語として読めるような歌詞を目指しているんですけど、いろんな人の曲を聴いて「自分の歌詞はまだまだだな……」と落ち込んだりしています。

──満足しないのはいいことでは?

そうですね。満足したらそこで終わりというか、私が満足できる日は来るのかな?

──「stardust」のところでも同じようなことを言いましたが、アルバムの中で、特に新録の3曲はまったく満ち足りている感じがしなくて、とてもいいと思いました。

確かに(笑)。たぶん、一生こういう曲を書き続けていくのかなという気がします。

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“何もできない自分”という認識を壊してくれる暴動

──アルバムを締めくくるのがリード曲の「暴動」ですが、わりと物騒なタイトルですね。

私が音楽を始めたきっかけとか、「音楽を続けている理由ってなんだろう?」と考えたとき、歌うのが楽しいからだと気付いたんです。例えば話すことは苦手でも、歌うことには自信を持てるなって。そう思えたことが自分の人生の中で大事件だったし、革命だったし、“何もできない自分”という認識を壊してくれる暴動だったなと。このアルバムに収録されている曲も、けっこう自分だったり他人だったり社会だったりに対して戦っている曲が多いんですよ。結局、自分の心の中で起こっている暴動が、私に活力をくれたり「音楽を作りたい」と思わせてくれるので、「暴動」という曲を作りました。

──「暴動」の歌詞にある「楯突いた」という言葉が象徴的ですが、liaさんが戦う相手って、自分より大きかったり強かったり、あるいは個人では抗いようのないものである場合が多いですよね。

基本的に、下から噛み付いてく。下克上みたいな(笑)。

──めちゃくちゃいいと思います。「暴動」で戦っている相手は、自分自身ですか?

はい。「暴動」は、冷ややかな自分と野心あふれる自分という、2人の自分がいるイメージで歌詞を書いていて。常識とか慣習に囚われて「私なんて、何をやっても失敗するよ」と言っている冷ややかな自分を、野心あふれる自分が「そうじゃないだろ!」と倒していく感じです。

──「暴動」はアグレッシブなロックナンバーですが、ボカロっぽいところもあり、liaさんのルーツが見える気がします。

そうですね。「暴動」は何回も作り直していて、これまでで一番迷った曲かもしれません。作っている最中に友達からオススメされた曲が2曲あって、聴いてみたら「うわ、カッコいい!」とハマってしまったんですよ。そのあともう1回自分の曲を聴いたら、もう出来が悪すぎて耐えられなくなっちゃって。またイチから作り直して……というのを2回やりました。

──ああ、2曲オススメされたから。

2つ目のオススメ曲がけっこうボカロっぽかったので、そっちに引っ張られたんでしょうね。

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やっぱり音楽で生きていきたい

──「暴動」のボーカルに関しては、音域が比較的低めですよね。「こういうアプローチもできるんだ?」と驚きましたし、カッコいいです。

うれしいです。オススメしてもらった曲も低い声のボーカルがカッコよくて、自分でもやってみたくなったんですよ。これでもデモの状態から1音上げているんですけど、歌っていて気持ちいいし、新鮮でもありました。ただ、早口だし、息継ぎできないし、ライブでちゃんと歌えるか不安でもあります。

──liaさんは、インタビューするたびに「息継ぎできない」とおっしゃっていません?

「暴動」は特に息継ぎができなくて(笑)。

──でも、息継ぎできないぐらいの言葉の詰め具合がその曲にふさわしいといった判断もあったのでは?

作っていたら埋まってしまうというか。最近はメロと歌詞を一緒に作っているんですが、どんどん言いたいことがあふれてきてAメロがすごく長くなっちゃったりして。結果的に言葉数が多くなってしまうことが多いですね。逆にバラードとか、音数の少ない曲は言いたいことを端的に伝えなくちゃいけないので難しいんですけど、難しいのが楽しいみたいな。

──言いたいことがどんどん出てくるというのは、創作をするうえではプラスに働くと思います。

でも、「暴動」を作っていたときは悩みすぎて、途中で何も出てこなくなっちゃって。そのときマネージャーさんが「ちょっと休んだら?」と心配してくれたので、「よし、休もう」と決めて「ONE PIECE」を読み始めたんです。そしたら主人公のモンキー・D・ルフィがずっと「海賊王になる」と言っていて、「これだ!」と。自分の曲に欠けていたのはこういう強い意思だと気が付いて、そこからは一気に曲作りが進みました。

──この「暴動」も含め、最初のほうでliaさんがおっしゃった「いろんな気持ちに寄り添える曲」というのを、アルバムという形でビシッと提示できたのではないかと。ご自身としては、アルバムを完成させた手応えみたいなものは?

正直、アルバムを作るのが1つの目標だったので、まずはやり切れてよかったという安心感があります。と同時に「次はもっとこうしたい」とか「こういうアルバムって作れるのかな?」みたいなアイデアが湧いてきているので、今からまた新しい曲を作り始めないといけないなと思っています。

──曲作りは楽しいんですよね。

楽しいです。ただ、仕事としてやり続けていくには、もっとたくさんの人に聴いてもらわなきゃいけないし、私自身の「聴いてもらいたい」という気持ちも強くなっています。

──仕事という意識があるんですか?

はい。やっぱり音楽で生きていきたい……とはいえ「仕事という意識」よりも楽しさのほうが何倍も大きいというか。私は昔から褒められることがあまりなかったし、勉強も運動もそこそこだったので、音楽で認めてもらえたり、自分の音楽が誰かに届いた実感を得られたりしたときに、自分の存在理由みたいなものを見つけられたんです。だから、もし本当に音楽という仕事で生きていけたなら、これほどうれしいことはないですね。

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公演情報

shallm 3rd Live 決起集会

  • 2025年3月1日(土)東京都 Veats Shibuya

プロフィール

shallm(シャルム)

自ら作詞作曲を手がける19歳のボーカリストliaによるクラウドナイン所属のバンドプロジェクト。バンド名はフランス語およびドイツ語で「魅力」を意味する「charme」と、英語の「shall」を組み合わせた造語で、「必ず聴いてくれる人を歌で魅了する」という思いが込められている。2023年3月に初のオリジナル曲「夢幻ホログラム」を配信リリース。9月にドラマ「女子高生、僧になる。」のオープニングテーマ「センチメンタル☆ラッキーガール」をメジャーデビューシングルとして発表した。11月にも配信シングル「境界戦」をリリース。12月に東京・UNITで1stライブ「shallm 1st Live - liliana -」、2024年3月に東京・LIQUIDROOMで2ndライブ「shallm 2nd Live - アイオライト -」を行った。3月より6カ月連続でシングルを配信リリース。10月に1stアルバム「charme」を発表した。2025年3月に東京・Veats Shibuyaで3rdライブ「shallm 3rd Live 決起集会」を行う。