shallm「境界戦」インタビュー|才気あふれる19歳のボーカリストliaが紡ぐ、“境界”で戦う者の物語 (2/2)

ずっと米津玄師の歌詞を分析してきた

──前回のインタビューでliaさんは「いろんな雰囲気の曲を作りたい」とおっしゃっていましたが、楽曲だけでなく歌詞の内容も振り幅が大きいですね。その中で、作詞における決まり事みたいなものって、何かあります?

起承転結のある歌詞というか、ストーリーをなぞれる歌詞にしたいとは思っています。

──確かに「境界戦」も「この最悪な未来を君を連れて」という結末まで描かれていますね。リスナーとしてもストーリー性のある歌詞が好きなんですか?

いや、自分が聴く分には起承転結のあるなしはあんまり気にしていなくて。シンプルに「何その言い回し!? うますぎ!」「そんな言葉で気持ちを表せるんだ!?」と、ハッとさせられる歌詞を好きになるし、私もいつかそういう歌詞を書けるようになりたいなって思います。

──具体的なシンガーソングライターだと、liaさんがお好きな米津玄師さんもそういう歌詞を書くタイプですか?

米津さんもすごいです。米津さんはあまりにも有名すぎて、こんなことを言うとミーハーに思われるかもしれないんですけど、私はずっと米津さんの歌詞を分析してきたし、分析するたびに「本当に!?」って驚いたり感動したりしているんですよ。例えば「Pale Blue」という曲に「鼻先が触れるくらいに あなたを見つめたい」という歌詞があるんですけど、「鼻先が触れるくらいに」に思いの強さが凝縮されている感じ、すごいと思いませんか? あと「死神」という曲は同名の落語を題材にしていて……って、話し出すとキリがなくなっちゃうんですけど(笑)。

──米津さんの歌詞を分析するのは、米津さんが好きだから? それとも自分の作詞に生かすため?

米津さんに限らず誰の歌詞でも分析しちゃうので、単に分析するのが好きなんだと思います。「Aメロのここはサビのここにかかってるんだ?」とか「本当に言いたいのはこれなんじゃないか?」とか、つい考えちゃう。でも結果的に、自分の歌詞にも生かされている気がします。

shallm

いいと思ったらなんでも歌っちゃう

──「境界戦」はトラックに関しても、例えば同じロックナンバーでもさわやか寄りだった「夢幻ホログラム」とは違って、先ほども言いましたがシリアスですね。

この曲は、「リゼロ」(アニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」)のオープニングテーマだったMYTH & ROIDの「Paradisus-Paradoxum」みたいな雰囲気の曲をどうしても作りたいと思って作ったんですよ。

──なるほど。どこか影のある感じは近いかもしれません。「いろんな雰囲気の曲」を作るにあたって、その都度自分の中でスイッチの切り替えみたいなことをしているんですか?

そこはあんまり気にしたことがなくて。ジャンルを問わず自分が好きになった曲は全部好きだから……って当たり前ですけど、もしかしたら歌い手さんが「歌ってみた」をやる感覚に近いかもしれません。いいと思ったらなんでも歌っちゃう感じ。ただ、「境界戦」はこれまでリリースしてきた曲の中では一番作るのに時間がかかりました。たぶん、「Paradisus-Paradoxum」という高いハードルを設定したからでしょうね。どれだけ作っても全然満足できなくて。ようやく「あ、これかも?」「これならいける気がする」と思ったのが、今の形です。

──liaさんの中で曲の良し悪しを判断する基準があったとして、それを言語化することは……。

できないです(笑)。感覚的なもので、私自身、自分が何をいいと思っているのかわからなくなることもあるんですけど、あるラインを超えたと感じる瞬間はあって。それを形にしています。

──アレンジおよびサウンドプロデュースは例によってNaoki Itaiさんですが、「境界戦」はピアノが効果的に使われていると思いました。

そうなんです。ロックだけど、ギターというよりは、ピアノのきれいめで儚い音色が「境界戦」にはハマるんじゃないかと思って、そういうリクエストをしました。

──そしてボーカルは、特に高音部は金切り声に近いというか、歌詞に描かれている悲痛さが伝わってきました。

おお、うれしいです。レコーディングはもう、動悸、息切れという感じでした。

──「救心」のCMみたいですね。

とにかく歌うのが難しくて。自分で書いた曲だから、自分で自分の首を絞めているんですけど。

──でも、難しくないと「あるライン」に届かないという部分もあるのでは?

たぶん、そうかもしれないです。これから音楽活動を続けていく中で、そのギリギリのラインを上げ続けていきたいです。そうじゃないと成長できないので。歌うのが難しくても、歌うこと自体はいつも楽しいんですよ。「境界戦」は、こう、怒りを込めて歌う感じでレコーディングしました。

──liaさんは、先ほどわざとぶつかってくる人に対して怒っていましたが、それ以外で日常生活で怒ることはあるんですか?

あるとは思うんですけど、だいたいひと晩寝ると忘れちゃうので、あんまり怒りが残らないんですよね。この曲に関しては、作詞していたときと同じで、作品の主人公の気持ちを降ろしてくるように、主人公になりきって歌いました。

──「センチメンタル☆ラッキーガール」のときも「キラキラした感じの女子高生を憑依させました」とおっしゃっていましたが、なりきるのが得意?

得意です。というより、なりきるのが楽しいんですよね。

shallm

作詞も作曲も楽しくてしょうがない

──liaさんにインタビューしていると「楽しい」という言葉がよく出てきますが、それが音楽作りのモチベーションになっている?

そうかもしれないです。以前は、メロディを考えるのは好きだけど、歌詞を書くのはどちらかといえば嫌いだったんですよ。なかなかいい歌詞が浮かばなかったから。でも、最近は作詞も作曲もどっちも楽しくてしょうがなくて。もう、楽しいしかない。

──作詞を楽しめるようになったきっかけなどはあるんですか?

たぶん、人の歌詞を分析するようになってからだと思います。分析自体は昔からやっていたことなんですけど、去年の終わりか今年に入ったあたりからより本格的に分析するようになって。あるとき「私、すごく分析してるな」と気付いたら、なんか楽しくなったんですよね。今や作詞は、ある意味でゲーム感覚というか、“誰が一番すごいことを言えるのか”ゲームみたいな感じです。

──そして「境界戦」のリリースと前後して、ライブイベントへの出演がすごいことになっていますね。11月だけで10本、しかもその間に路上ライブも挟んでいて。

12月11日の、代官山UNiTでの初ワンマン(「shallm 1st Live - liliana -」)に向けた修行です。しかもワンマンまでのライブは全部、バンド編成じゃなくて1人で、ギターの弾き語りやオケの音源にギターを重ねた編成でやるんですよ。「TOKYO CALLING」と「ミナホ」ではバンドメンバーの皆さんに支えてもらっていたけど、今度は仲間がいないので緊張します。でも、こんなにたくさん人前で歌う機会を作ってもらえて感謝していますし、やっぱりライブ自体は楽しみです。

──リリース資料のクレジットを見る限り、shallmのバンドメンバーはレコーディングとライブでは異なるようですが、それぞれのメンバーとうまくコミュニケーションを取れています?

はい。特にライブのバンドメンバーとは仲よくさせてもらっていて、よくお化けの話で盛り上がります。どこどこの心霊スポットは本当に怖いとか、誰々が何かに取り憑かれて変になったとか。

──オカルトバンド?

否定はできないかも(笑)。私はお化けとかUFOとかも大好きなんですよ。どっちも見たことないけど、絶対にいると思っているというか、いたら楽しいじゃないですか。

──そんなオカルト好きなメンバーを欠いた修行を経て、12月に初ワンマンを迎えると。前回のインタビューでもワンマンへの意気込みを聞いてしまいましたが、改めて伺っても?

初めてのオリジナル曲「夢幻ホログラム」をリリースしてからたった9カ月でワンマンライブができるなんて本当にありがたいことなので、もう精一杯やるしかないと思っています。「境界戦」も含めてこれまでリリースした曲は4曲しかないんですけど、未発表曲もカバーもやって、今自分が持っているものを全部出し切ります。きっとすごく楽しいことになるので、1人でも多くの方に来ていただきたいです!

shallm

ライブ情報

shallm 1st Live - liliana -

  • 2023年12月11日(月)東京都 UNIT

プロフィール

shallm(シャルム)

自ら作詞作曲を手がける19歳のボーカリストliaによるクラウドナイン所属のバンドプロジェクト。バンド名はフランス語およびドイツ語で「魅力」を意味する「charme」と、英語の「shall」を組み合わせた造語で、「必ず聴いてくれる人を歌で魅了する」という思いが込められている。2023年3月に初のオリジナル曲「夢幻ホログラム」を配信リリース。9月にMBSドラマ「女子高生、僧になる。」のオープニングテーマ「センチメンタル☆ラッキーガール」をメジャーデビューシングルとして発表した。11月にも配信シングル「境界戦」をリリース。12月11日に東京・UNITで初のワンマンライブ「shallm 1st Live - liliana -」を開催する。