前向きに気持ちを高めていけた1年
──この1年間はアルバムの制作に集中していたのでしょうか?
Ken そうですね。2020年はもともとツアーで全国を回り、サーキットイベントに出て、まだまだ足りていない自分たちの知名度を上げていく1年にしていく予定でした。だけど2月に行った自分たち主催のライブを最後に、ライブがほとんどできなくなって……当時はただただ悔しかったですね。
Masafumi これまでバンドというのは、ライブをして、お客さんを付けて……というやり方が主流だったと思うんですけど、今はライブではないところでお客さんを付けていかないといけない。どうすればいいのかすごく悩んだし、今もめちゃくちゃ悩んでいます。だけどライブがないぶん、制作に充てられる時間が増え、「どうしたら曲がよくなるのか」「どうしたら自分たちが生み出すもののクオリティをもう一段階上げられるのか」と考えながらやり方を模索して、すごく前向きに気持ちを高めていけた1年になりました。
Ken この1年でほかのアーティストの曲をより注意深く聴くようにもなりましたね。新しい、面白いと思うアプローチがあったら、どこでどんな音が入っているのかを気にしながら、「自分が作る音楽には何が足りないんだろう?」という視点で聴いていって。
Masafumi そこから自分の持っている音楽制作ソフトと照らし合わせて、「あの曲で使われていた音は、このソフトの場合、こういう音色を使えば作れるんだな」というふうに研究していくことで、自分たちが持っているものをちゃんと使いこなせるようになったというか。そういう時間をたくさん取れたので、それが今回のアルバムにも成果として出ているのかなと思います。
──先ほど「2ndステージ」という言葉が出ましたが、自分たちにとって新鮮味を感じる曲は?
Masafumi 「Nightmare」や「Let's get the party started」ですね。「Nightmare」に関しては音作りを今まで以上に考えましたね。シンセサイザーの音がBメロからサビ、間奏にかけて入っているんですけど、それを際立たせつつ、ほかの音も殺さないバランスを意識していて。どの音が本当に必要で、どの音がいらないのかという抜き差しを何回もやった曲でした。
Ken 「Let's get the party started」はギターを弾いていて楽しいし、個人的に気に入っています。音もナチュラルなギターの音というよりは、コーラス、フェイザー、フランジャーと、けっこういろいろなエフェクトを使っています。今回のアルバムでは手持ちのエフェクターを全部使っているんですよ。なので、音色には注目してほしいですね。ただ、ライブで演奏するのは大変そうですけど(笑)。
説得力のあるロックバンドになりたい
──ギターが特に顕著ですが、このバンドは全体的に王道の曲調にまとめるよりも、ちょっとずらしたところで遊ぶほうが好きなのかなと感じました。
Ken そうですね。世の中にギターロックの曲ってけっこういっぱいあるので、だからこそ、どうすればひと味違う曲にできるのかというのは考えながら作っています。
──ドラムからもそういうこだわりが感じられますが、ご本人としては、特にどの曲に手応えを感じていますか?
Lyo 「What Was That!?」はこだわったポイントがたくさんありますね。この曲は2番サビ後でサイケみたいなパートに入るんですよ。リズムパターンはレゲエっぽいんですけど、こういうドラムは今まで僕らがやってこなかったようなジャンルなので苦戦しました。
──この曲のドラムは2番Aメロの展開も面白いです。
Lyo 歌のリズムに合わせてキメを入れたりしていますね。ここもけっこう考えたポイントで。1回、レコーディングのときにやりすぎて、Masafumiに怒られたんですけど(笑)。
Masafumi 僕は手数を入れすぎるとキレます(笑)。「引き算しろよ」って。
Lyo でも怒られたおかげで、ちょうどいい塩梅でアレンジできたのかなと思います(笑)。
──歌詞の話をすると、「Stay With Me」にある「We are already strong」「We are so independent」というフレーズが気になりました。この歌詞はどのようなところから生まれてきたのでしょうか。
Masafumi 今って、それぞれに求められる基準みたいなものがどんどん高くなっていると思うし、その中で、できない自分を卑下しちゃうこともあると思うんですよ。Aという強さを求められても、自分にはAができない、そんな自分がダメに思えてしまう、というふうに。だけど、さっき多様性の話をしたように、人にはそれぞれいろいろな個性があっていいし、その人にAという強さがなかったとしても、それとは別のBという強さがきっとあると思うんです。だからこの曲では、「あなたにしかない強さがすでにあるから」とメッセージを伝えたかったんですよね。あなたはちゃんと自立している、あなたらしくいればいいよ、ということを書いています。
──メッセージ性の強いフレーズに関しては、一人称を「I」ではなく「We」にしているケースが多いように感じました。自分自身を鼓舞しつつも、「自分と同じく苦しんでいる人に手を差し伸べたい」という気持ちの表れかと思ったのですが、いかがでしょうか?
Masafumi はい、本当にその通りですね。リードしていきたい……と言うと上から目線に聞こえるかもしれないんですけど、さっき言ったみたいに「違う考え方を提案する」「苦しんでいる人に対して逃げ場を作る」というやり方で、誰かに対して「1歩進んでみなよ」と言えるような、説得力のあるロックバンドになりたいんですよ。それぞれがそれぞれの道を力強く歩んでいけるように道しるべを作りたいし、そのためにしっかりとリードしていけるようなロックバンドになれたらなと思っています。
──「リードしていきたい」という気持ちはロックシーンに対してもありますか?
Masafumi ありますね。自分たちは楽曲制作をするにあたって、オリジナルであることを大切にしています。もちろん何かしらのジャンルに当てはまってはいると思うけど、聴けば「Seven Billion Dotsだね」とわかるようなものを追求しているんですよ。その姿を見て「Seven Billion Dotsみたいになりたいな」と思い、後に続くバンドが現れてくれたらうれしいし、その先でその人たちがまた、自分自身の個性を出しながら歩んでいってくれたらもっとうれしいし。そんなバンドになりたいですね。
──皆さんは、今自分たちがいるロックシーンをどのように捉えているのでしょうか。
Masafumi 自分の感覚だと、最近ポップパンク界隈がまた盛り上がっていると思うんですけど、世界的に見ると、主流はやっぱりトラック系のミュージックで、ロックシーンが大きいとは言いづらいのかなと思います。だからこそ、“ザ・バンドサウンド”みたいな音をがっつり鳴らしていきたいし、バンドシーンにもっと広がりを持たせられたら、ロックシーンを盛り上げられたら、という欲望がありますね。それだけ曲には自信があるので。今はとにかく早くライブがやりたいです。
──今回のアルバムもライブで聴くと気持ちよさそうな曲が多いですしね。
Masafumi そうですね。やっぱりライブを意識して曲を作っているので。音を作り込むうえでも、歌詞の世界観を考えるうえでも、実際に演奏するうえでも、自分たち以外の誰かがいることを想定するのは、ライブのできなかった2020年を経ても変わらなかったです。
──最後に、バンドとして叶えたい夢、目標を教えてもらえますか?
Masafumi こういう状況になってしまって、これから先、社会がどうなっていくのかも正直見えきれていないけど、バンドたるもの、やっぱり大きいステージに立ちたいです。
Lyo 日本武道館やスタジアムでライブをやりたいですね。だけど今はこういう状況なので……そう考えると、直近の目標はちゃんといろいろな人に聴いてもらうこと。なので、しっかりバズらせていきたいです。
Ken バズりたい!
Masafumi 自分たちの曲にすごく自信があるんですよ。だからこそミュージックビデオを通してでも、SNSを通してでも、多くの人にしっかりと曲に触れてもらいたい。自分たちの曲に触れてもらえる機会を増やしていくというのが今一番やっていかなきゃいけないことですね。