ナタリー PowerPush - serial TV drama
Winkカバーで注目度急上昇 リーダー新井が語る新戦略とは?
今はまず「楽しませる」ということがテーマ
──それはバンド内にもともとあった要素なんですか?
あったんです。でも、前は本当に楽しいときにしかそれが出なかった。今はトツさんがサービス精神旺盛で、バンドのメンバーを楽しませようとするから、メンバーも楽しくなって、常にナチュラルハイ状態になってるってのがありますね。
──今は、全員がそれぞれの方向にハジけている。そういう変化はライブを観ても感じますね。
どんどんエンタテインメント性が高くなってますね。今はまず「楽しませる」ということがテーマなんで。感動させる部分、静かな部分は、どうでもいい。とにかく5人で楽しませることを最優先にしよう、と。感動できる部分を増やすのは今後のテーマだと思うんですけど、今はそういう時期だと思うんです。それがこのあいだのライブで形になった気もした。だから、バンド全体としてやりたいことが変わったということはないんです。ただ、大きく変わったのは、本当にみんな明るくなったってこと。公私共にそうですね。
──ライブのMCでも「どんどん曲ができている」って言ってましたけれど、今、バンドはどんな状況なんでしょう?
ここ半年くらい、ずっと曲を作ってますね。実際にレコーディングもやってます。ちょっとよくわからないくらい、頭おかしくなりそうなくらい作ってます(笑)。でも、大前提にあるのは、楽しいから曲を作れるということ。バンドのエネルギーが高まってきているから、あれもやりたい、これもやりたいというアイデアが浮かんできていて。で、それを形にしているときに、また別のアイデアが浮かんでくる。だから休みなく曲を作ってるし、その流れを止めたくもないんですよね。
興味をなくした人にも「音楽ってやっぱいいな!」って思わせたい
──今バンドが目指しているもの、向かっている方向は、どんなところなんでしょうか。
今まではインディーでやってて、去年からメジャーでやってる。その違いをよく考えるんです。以前は音楽を好きな人のために発信していた、という部分が大きかった。ロックの畑の中で、その水準を高めたいと思ってた。でも今は、メジャーというより大きい組織で何ができるのかを考えてるんです。今はゲームもあるしネットもあるし、音楽に興味がない人もすごく多いと思う。そういう人たちの目をどう音楽に向けさせるかということを考えたときに「ロックの畑だけでやってて、果たしていいのか?」って思う。たとえその中で神と崇められても、閉鎖的に見えたらしょうがない。その中でいかに刺激的であっても、世の中にはもっと面白いものがたくさんあるから。例えばすごく面白いゲームに対抗できるかっていったら、そうじゃないと思うんですよね。
──大きいことを言うなら、モンハンとディズニーをライバルとして設定する、みたいな?
そうですね。今回のカバーにしてもそうだし、鈴木早智子さんをゲストに迎えるってことも、ロックの畑で言うとご法度な感じがしてるんです。イロモノというか。でも、俺はそれくらいまでやらないと音楽に目を向けてもらえないと思う。例え嫌われようが、そこにチャレンジしてみたいと思う。CDが売れないとか、不況とか、そういうのはどうでもいいんですけど、もう1回「音楽ってやっぱいいな!」って思わせたい。ゲームを止めて、音楽を聴いてみようかなって思われるようなことをしたい。だから、俺が昔嫌いだった芸能寄りなことをするのかもしれないけれど、それは今いる環境を最大限に活用することだと思うんですよね。
──実際、今の時代、そういうあり方は「アリ」になっていると思いますよ。
結局、曲のクオリティさえ下げなければ何をやっても理解してくれると思っているので。とにかくいい曲を作る。ほかの付加価値はいろんな人が面白いと思ってもらえるものをやっていく。今年はそうやっていきたいなって思います。
──うん。その上でこのバンドのナチュラルハイっぷりは大きな武器になると思いますよ。ライブ観ててもそこがすごく面白いわけだから。
うん。「笑わせたら勝ち!」と思ってる節はあって。そこが音楽に興味をなくした人が戻ってくるポイントだとも思うんです。そういう人にとっては、音楽的にカッコいいかカッコ悪いか、うまいかヘタかなんて、関係ないから。どれだけ「面白そう!」って思ってもらえるか。そういう表現をやっていきたいと思ってますね。
serial TV drama(しりあるてぃーびーどらま)
2004年1月に結成されたロックバンド。2007年3月に初音源となるミニアルバム「ginger」をリリースし、聴き手の琴線に触れるメロディをエモ/オルタナティブ/ポストロック/ハードロックなど多彩なサウンドに乗せ、独自の音楽性を追求している。2010年7月にミニアルバム「マストバイ」でメジャーデビューを果たすも、直後にオリジナルメンバーの伊藤文暁(Vo)が脱退。その後新ボーカルとして鴇崎智史を迎え、新井弘毅(G)、稲増五生(G)、近藤太(B)、岡田翔太郎(Dr)との5人編成で再スタートを切る。同年11月、新体制で初の音源となるシングル「ユニコーンの角」をリリース。2011年3月にはWinkの大ヒット曲をカバーしたシングル「愛が止まらない -Turn It Into Love-」を発売する。