ナタリー PowerPush - serial TV drama
Winkカバーで注目度急上昇 リーダー新井が語る新戦略とは?
Winkのヒット曲をカバーしたserial TV dramaのニューシングル「愛が止まらない -Turn It Into Love」がリリースされた。80年代のアイドルポップを爆音ハードロックで料理したこの1曲。先日の渋谷CLUB QUATTROでのライブでは、本家・鈴木早智子(Wink)との共演も実現し、大きな話題を呼んだ。
今回ナタリーでは、バンドを率いる新井弘毅(G)へのインタビューを敢行。「なぜ今80年代アイドルポップをカバー?」という率直な疑問に始まり、昨年にボーカリストの伊藤文暁が脱退、新メンバーとして鴇崎智史(Vo)が加入してからのバンドの変化、「とにかく人を楽しませたい」という彼の発想の核にあるものまで、じっくり語ってもらった。
取材・文/柴那典
Winkにハマったのは5~6年前
──そもそも、Winkってリアルタイムで知ってました?
リアルタイムじゃないですね。リリースされたときには、僕、まだ4歳でしたから。一番Winkにハマって、よく聴いてたのは5~6年前、大学生のころなんです。いわゆる作家の人が書いた曲を聴くのが好きな時期があって。
──筒美京平さんや松本隆さんのような、職業作曲家・作詞家の人が書いた曲ですね。
そうそう。そういう曲って、世の中に対して発信している意識がものすごく強いと思うんです。商品開発というか、イノベーション的な感覚に近いところで曲を作ってる。ただ好きだからやっているというのとは違う、商品価値のあるものを作りたいという観点がある。そういう感覚が人間臭いというか、面白いなと思ったんです。
──研究するつもりで聴いてたような感じもありました?
今思うと甘ちゃんですけど、そのときは研究している気でいました。「ほう、なるほど!」って感覚で聴いてました。
「歌謡曲はメタルだ!」
──音楽面では、そういう曲にどんな面白さを感じてました?
海外のムーブメントと照らし合わせると面白いんですよね。向こうで流行ったものが直接入ってきたりする。ニューウェイブが海外で流行ったら、それを歌謡曲に落としこむ。そういう日本人的な発想が面白いと思ってました。
──元MEGADETHのマーティ・フリードマンもそういう考え方ですよね。あの人の存在って、日本の歌謡曲とハードロックやヘヴィメタルをつなぐキーになってますよね。
そうそう! 俺もホントそう思う。あの人、よく「歌謡曲はメタルだ!」って言ってるじゃないですか。俺もまったく同じことを思うんです。実際、曲を作る立場から言うと、一つのメロディを元にどっちも作れるんですよね。バリバリの洋楽っぽいサウンドにすることもできるし、J-POPのサウンドにもできる。それだけのことなんだよっていうのを自分自身で感じているので。洋楽なら許せるとか、ロックアーティストが歌ってるからカッコいいとか、アイドルだからカッコ悪いとか、そういう考え自体が面白くない。それをわかってもらいたかった、というのはありますね。「アイドルだから……」とか、そういうのはどうでもよくて。「ほら、いい曲でしょ?」っていう、それだけを言いたかった。その感覚は常にありますね。カテゴリやイメージで遠ざかってる人がいるのは面白くないですから。
serial TV drama(しりあるてぃーびーどらま)
2004年1月に結成されたロックバンド。2007年3月に初音源となるミニアルバム「ginger」をリリースし、聴き手の琴線に触れるメロディをエモ/オルタナティブ/ポストロック/ハードロックなど多彩なサウンドに乗せ、独自の音楽性を追求している。2010年7月にミニアルバム「マストバイ」でメジャーデビューを果たすも、直後にオリジナルメンバーの伊藤文暁(Vo)が脱退。その後新ボーカルとして鴇崎智史を迎え、新井弘毅(G)、稲増五生(G)、近藤太(B)、岡田翔太郎(Dr)との5人編成で再スタートを切る。同年11月、新体制で初の音源となるシングル「ユニコーンの角」をリリース。2011年3月にはWinkの大ヒット曲をカバーしたシングル「愛が止まらない -Turn It Into Love-」を発売する。