ナタリー PowerPush - 田口囁一(感傷ベクトル)×じん
似ているようで違う 2人の相思相愛対談
感傷ベクトルが先日、約1年9カ月ぶりとなる音源作品「エンリルと13月の少年」をリリースした。メジャーデビュー作「シアロア」で音楽とマンガの融合に挑戦し、そのクオリティの高い作品性やみずみずしい世界観が評価された感傷ベクトル。待望の新作は音楽に焦点を当てた作品で、「シアロア」とは異なる境地が切り開かれている。
今回ナタリーは「エンリルと13月の少年」の発売を記念して、ボーカル、ギター、ピアノ、作詞、作曲、作画を担当する田口囁一と、じんという新鋭クリエイター同士の対談を企画した。同世代というだけでなく、自らの作品をメディアミックス展開するなど、その活動においても共通点の多い彼ら。約2年前から交流があるという2人に、存分に語り合ってもらった。
取材 / 成松哲 文 / 中野明子
売れてっからいけ好かねえ
──そもそもお2人が出会ったきっかけは?
田口囁一 2012年の9月くらいかな? Twitterがきっかけで。
じん 「シアロア」が出たくらいのときに、僕が「シアロア」を聴いて「これがよかった。すごい」みたいなことをつぶやいたら……。
田口 俺がそれにエゴサーチ中に反応して(笑)。なんか「飲みに行こうぜ」って話になって、飲みに行って、そのままじんくんの家にお泊りしたんです。
じん そうですね。それで仲を深めて。
田口 2人で延々奥井亜紀さんの曲のコード構成を解析してて。
じん もとをたどれば、俺が感傷ベクトルのCDを手に取ったのも、お世話になってる方と囁一さんが昔一緒に活動してたのがきっかけなんですよ。その方が「感傷ベクトルって知ってるかい?」って紹介してくださって、聴いてみたらカッコよくて。Twitter経由で仲良くなったんですけど。いや、俺だけなのかな、仲いいって思ってるのは……。
田口 わりと同じことを思ってるね(笑)。
じん 「仲いいと思ってるのは自分だけじゃないか」って死ぬまで思いますよね、人間は。
田口 あはははは(笑)。
──田口さんは、じんさんを知ったのはいつ頃?
田口 いつぐらいからだろう……でも、曲は知り合う前から知ってたんですけど、売れてっからいけ好かねえなと思ってた(笑)。
じん それ直に言われました(笑)。
田口 そうそう。初めて会ったときにも言ったんだけど、とりあえず人気あるからやっかんでいこうと思ったんですよ。
──2年前のインタビュー(参照:感傷ベクトル「シアロア」特集)のときにも田口さんおっしゃってましたよね。「同世代でイケてるやつは全員憎い」「リスペクトと同時に嫉妬がハンパない」っていうようなことを(笑)。
じん すごいわかる。
田口 じんくんもそのうちの1人だったんですけど、自分に興味を持ってくれて優しくしてくれたので、「あっ、こいつひょっとしたらいいやつかも」っつって(笑)。
じん 非常にわかりやすくて素晴らしい!
田口 会って話したらすごい盛り上がって。今まで読んできたマンガの話だったり、キャラを作るときのこだわりとか、話の作り方の話をして。わりと共通の話題が多かったから仲良くなったみたいな。
じん そうそう。俺らの同世代って言うと、米津玄師さんとか石風呂さんとかいるんですけど、できるやつばっかりで。もう必死なんですよ、こっちは。
──ちなみに米津さんや石風呂さんに対してライバル心は?
じん けっこうありますね。自分がいいなと思うことを先にやられてしまったら、もうできなくなるじゃないですか。二番煎じって言われちゃうから。でも彼らは、そのやりたかったことをもうサクサクサクサクってやっていくので、どんどんやれることが先細りになっちゃって。まあすごいライバル視してますよ(笑)。
田口 あはははは(笑)。
- 感傷ベクトル ニューシングル「エンリルと13月の少年」 / 2014年5月14日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
- 初回限定盤 [CD+ブックレット] 1512円 / VIZL-661
- 通常盤 [CD] 1296円 / VICL-36904
収録曲
- エンリルと13月の少年
- ドレミとソラミミ
- 42219
- フラワードロップ
初回限定盤には春川美咲が書き下ろした短編小説「flowerDrop」を封入。
- じん ニューシングル「daze / days」 / 2014年6月18日発売 / ultraCeep Inc.
- 初回限定盤A [2CD+DVD] 2700円 / ZMCL-1001~4
- 初回限定盤B [CD+DVD+ブックレット] 2268円 / ZMCL-1005~8
- 通常盤 [CD+DVD] 1728円 / ZMCL-1009~10
CD収録曲
- daze / じん ft. メイリア from GARNiDELiA
- days / じん ft. Lia
- daze / じん ft. メイリア from GARNiDELiA(short ver.)
- days / じん ft. Lia(short ver.)
- daze / じん ft. メイリア from GARNiDELiA(Instrumental)
- days / じん ft. Lia(Instrumental)
DVD収録内容
- 映像作家しづによる新曲のビデオクリップ
初回限定盤A 特典内容
- ドラマCD
- 時系列年表「CHRONOLOGICAL」
初回限定盤B 特典内容
- 小説
- 時系列年表「CHRONOLOGICAL」
感傷ベクトル(カンショウベクトル)
ボーカル、ギター、ピアノ、作詞、作曲、作画を担当する田口囁一と、ベースと脚本を担当する春川三咲によるユニット。ネットや同人シーンを中心に活躍し、音楽とマンガの両方の分野で作品を発表している。2012年8月にネット上で発表していたメディアミックス作品「シアロア」を、アルバムとコミックで同時リリース。また2人は「ジャンプSQ.19」で連載されていたマンガ「僕は友達が少ない+」の作画および脚本を担当した。2014年5月にシングル「エンリルと13月の少年」を発表。同時期より田口囁一によるマンガ「フジキュー!!!」の連載が別冊少年マガジンにてスタートした。
じん
1990年10月生まれ、北海道利尻島出身のボカロP。幼少期より音楽に親しみ、学生時代にはバンド活動を行う。2011年にニコニコ動画に投稿した「人造エネミー」でボカロPとしてデビュー。瞬く間にニコ動ユーザーの間で話題を集め、数々の楽曲でランキング上位入りを果たす。2012年5月、それまでに発表した楽曲の世界観を1枚のアルバムに集約した1stフルアルバム「メカクシティデイズ」をリリース。楽曲に登場するキャラクターの物語を小説化した「カゲロウデイズ -in a daze-」で、小説家としてもデビューを果たし、さらに2012年8月リリースの1stシングル「チルドレンレコード」はオリコンシングル週間ランキング3位に輝く。2013年5月、連作の音楽編完結版となる2ndアルバム「メカクシティレコーズ」をリリースした。