ナタリー PowerPush - SEBASTIAN X

ストレートでシンフォニックな傑作完成!2ndアルバム「POWER OF NOISE」

SEBASTIAN Xが2ndフルアルバム「POWER OF NOISE」をリリースする。彼女たちの専売特許であるストレートかつシンフォニックなポップソングのあり方が、ついに1つの完成を見たと思わせる傑作である。フロントマンの永原真夏(Vo)に、本作に寄せる並々ならぬ思いを語ってもらった。

取材・文 / 三宅正一(ONBU) インタビュー撮影 / 佐藤類

もっともっと爆発しないとダメだよ!

永原真夏

──SEBASTIAN Xにとって代表作となるアルバムだと思うし、永原真夏というソングライターにとっても本質的で根源的なアルバムになったと思います。

ありがとうございます。自分でもかなり手応えがあって。

──そうでしょう。

言ってもらった通り、SEBASTIAN Xとはこういうバンドで、永原真夏とはこういう人間だというアルバムができたなと思います。

──全10曲、徹頭徹尾ストレートな音楽表現が連なってますね。

うん、ストレートです。奇をてらったり、斜に構えた表現は一切したくないなと思ったんです。で、それを徹底的にできたのがこのアルバムで。

──やっとストレートな表現ができるようになったという感じですか?

そうですね。やっとこうなれた。メンバーから「もっと明け透けでいいし、もっともっと爆発しないとダメだよ!」って言われたんです。きっかけとしては、それが大きかったですね。

──それはいつ?

今年の初めくらいかな? 「ヒバリオペラ」を作ったあとくらいですね。

──真夏さんがもっと爆発しないと、SEBASTIAN Xというバンドの本当の完成はないとメンバーは思ったのかな?

そういうことだと思います。でも、やっぱり素直に自分を100パーセント出し切るって簡単なことではないので。これまで1枚ずつ作品を作りながら、少しずつ自分を解放してきたとは思っていて。でも、メンバーは最後の最後に“パンツ”が1枚残ってる感じが気になったんだと思うんですよね(笑)。

──なるほど、パンツの例えで来たか(笑)。メンバーも真夏さん自身も今ならパンツを脱げると思ったんですか?

思いましたし、前からライブのときはパッと本能的に脱いじゃう瞬間があって。で、そうなるとお客さんも「待ってました!」ってなるんですよ。でも、心と身体がまっぷたつになっているとうまくいかないんですよね。自分が無理してお客さんを煽ったりしてるときはやっぱり裸にはなれないんです。自然に本能的な状態になれないとパンツは脱げないですよね。

──そういうことですよね。でも、曲作りのときにそういう状態になるのを待っているわけにもいかないですよね。

うん。だから、まずは意識的に自分を解放していこうと思ったんです。日常生活で嘘をつかない、取り繕わないことを徹底して。ホントにシンプルなことなんですけど、こうやってお話しているときもテキトーに流したりしないとか。悩むときは悩む。曖昧な答えを出さない。なんとなくのコミュニケーションをとらないということですね。

──シンプルだけど難儀なことですよね。

でも、慣れてくるとそっちのほうが楽なんですよ。確かに自分の心情にあった行動をとるのって難しいけど、心情にあわない行動をとるほうが他者に不快感を与えることが多いんだなって気付いたんですよ。もちろん自分がいじわるなことを考えているときに、行動に移すことはないですけど。でも、いじわるなことを考えていることをちゃんと自覚しようと。

──そういう自分も認めると。

そう。そういうことを自分なりに積み重ねて、自分を解放できる状態にしてアルバム制作に臨んだんです。

──そういうモードの中で最初に生まれた曲はなんだったんですか?

「DNA」ですね。

──やっぱりこの曲ですよね。これ、ビデオクリップも素晴らしい出来で。

ありがとうございます! あのビデオではお化粧もオシャレもしてなくて。そうしたのも、今お話した思いがあったからで。そうやって撮影に臨んだら自分が伝えたいことだけが残るし、そうしなきゃいけない曲だと思ったんですよね。

──「DNA」というテーマで曲を書こうと思ったのは?

表現する上で、自分が考えられる最小単位に自覚的にならなきゃ、大きな単位まで目を向けられないなと思って。最小単位って何かなって考えたときに出てきたのがDNAだったというシンプルな話なんです。しかもそれは生命を継続させるものであって。それを描くことで大きい単位に訴えかけたいと思ったんです。

──ミクロに目を凝らして、マクロを知るというか。

そうそう。

ニューアルバム「POWER OF NOISE」/ 2013年8月14日発売 / 2300円 / we are / WRCA-01
収録曲
  1. POWER OF VITAL
  2. DNA
  3. ヒバリオペラ
  4. 三日月ピクニック
  5. サマー・ハネムーン・ビート
  6. MY GIRL(姫君へ捧ぐ)
  7. 光/男/カメラ
  8. サマタイム・キル
  9. つきぬけて
  10. MIC DISCOVERY
SEBASTIAN X(せばすちゃんえっくす)

永原真夏(Vo)、飯田裕(B)、工藤歩里(Key)、沖山良太(Dr)の4人からなるバンド。前身バンドを経て、2008年2月に結成される。同年6月に初ライブを開催し、その後定期的にライブを実施。2008年8月に自主制作盤「LIFE VS LIFE」を発表し、文学的な匂いを持つ詞世界やギターレスならではのユニークな音像が話題に。2009年11月に初の全国流通盤となるミニアルバム「ワンダフル・ワールド」を発表。その後も2010年8月に2ndミニアルバム「僕らのファンタジー」、2011年1月に配信限定シングル「光のたてがみ」とコンスタントにリリースを重ね、2011年10月に1stフルアルバム「FUTURES」を発表する。自主企画も積極的に行い、2012年4月には野外イベント「TOKYO春告ジャンボリー」を上野水上音楽堂で開催し好評を博す。同年7月に3枚目のミニアルバム「ひなぎくと怪獣」をリリースした。2013年4月に2000枚限定でシングル「ヒバリオペラ」を、8月に2ndアルバム「POWER OF NOISE」を発表。