SEAMO|10枚目のアルバムで描くライフストーリー

「あの人は今」感

──タイトル曲の「Wave Your Flag」は、Crystal Boy、KURO、SOCKSと4度目の共作曲になります。このところ、この4人のチーム感が気持ちいいという感じですか?

そうですね。ちょっとユニット感が出てきたというか。このメンツでのツアーも全然アリだなって思うくらい。チーム名はどうするか?って、たまにグダグダ話すんですけど、みんなの出す案がひどすぎて全然まとまらない(笑)。

──「Wave Your Flag」は、どのように制作を進めたんですか?

いつもこのメンバーで曲を作るときは、まずKUROとミーティングするんです。今回はラグビーW杯とかオリンピックにあわせてスポーツの応援歌的なものを作りたいという話の中から、僕が最初にヴァースとサビを書いて3人に送ったんです。

──SEAMOさんはどのようなイメージで歌詞を書いたんですか?

男塾の塾生が大きな団旗を持ってる感じじゃないですけど、スタンド席でサポーターが大きな旗を振ってるイメージで書いたんです。そしたら、そのリリックに引っ張られてみんながこういう歌詞を書いてきて。こんなに熱い歌詞を書いてくれるんだって。

──KUROもCrystal Boyも、過去の栄光にとらわれず、今を歩いているんだという内容を力強くラップしていますね。

過去を消化できる年齢になってきたんでしょうね。KUROもCrystalも動きを止めてないじゃないですか。KUROは本も出しているし。

──サミュエル・サトシというペンネームで、今年「マン・イン・ザ・ミラー 『僕』はマイケル・ジャクソンに殺された」を上梓して小説家デビューしました。

僕らはいつも「大先生」って呼んでますから(笑)。ソロでライブも活発にやっているし、足を止めてないんです。

──Crystal Boyもnobodyknows+でアルバムを出しているし、ライブもコンスタントに続けています。SEAMOさんもHOME MADE 家族もnobodyknows+も、一時期の活躍が華々しかったぶん、ペースが落ちたように見えるんでしょうね。

そう。でも誰も足は止めてない。世の中の人たちはテレビやメディアに出ていることがすべてだと思いがちじゃないですか。そういうものがないと「あの人は今」感が出てきちゃったりする。そこは一度、頂点まで登った人間の宿命だと思うんです。5年くらい前は、若い子たちの成功を見て、置いて行かれるような気持ちというか、歯痒さも感じてました。だけど、「もう前に進むしかないし、これでメシを食っていくんだから」と自分と向き合うようになってからは、SNSも含めて他人の動きを気にすることがなくなっていった。今にぎやかな奴もいずれピークアウトする時期が来るんです。ずっと陽の目を浴び続けられる奴はそうそういない。これはみんながぶち当たる壁だし、僕らはそこにいただけ。そこを超えてしまえばなんてことはない。

──「負けたら終わりじゃなくて やめたら終わり」。SEAMOさんが「Continue」(2008年10月発売のシングル曲)で歌ったその言葉を今回、SOCKSがリリックでサンプリングしているのも胸アツです。

そうなんです。そこはSOCKSが勝手に入れてきて。「こんなに俺を立ててくれるんだ、ありがとう」って。でも、僕がこうやって曲を出して動き始めると、同世代の同業者たちも喜んでくれるんですよ。みんな活力をもらえるというか、負けてらんねえと思うみたい。

今はまだイケてないけど波が来てないだけ

──今回のアルバムで、我ながら面白いテーマで書けたと思う曲はありますか?

中盤の「Hey Taxi」「一口馬主Lovers」「You don't Fuu」とかですね。

──「Hey Taxi」は、沁みるというか、哀愁が漂う曲でした。どういうところから着想を得たんでしょうか?

僕がやっている名古屋のラジオ番組でタクシー会社がスポンサーになったコーナーが始まったんです。タクシーの運転手や乗客から寄せられたタクシーにまつわるエピソードをいろいろ紹介するんですけど、タクシーの運転手さんって、いろんな人間模様を見てるなと思って。

SEAMO

──確かに。

ある日、家に帰るためにタクシーに乗って何気なく「ハァ」ってため息をついたことがあったんです。「今日も疲れたな」くらいだったんですけど、運転手さんが「何かあったんですか?」って声をかけてくださって。失恋したとか傷心したとか失業したとか、何かを成し遂げたとき、何かを失敗したとき、家族よりも恋人よりも誰よりも最初に話すのはタクシーの運転手さんかもしれないなと思って、そこからこの曲を書いたんです。

──そういうときのざわめく心模様と、歪んだギターの音が見事に重なり合っています。

曲のイメージはN.E.R.Dっぽい感じ。彼らの初期の感じをイメージしてビートメイカーにオーダーしたんです。BPMとか曲調も含めていいアクセントになってる曲だと思います。

──「You don't Fuu」は、SEAMOさんのおふざけ面が詰まった曲ですね。以前、「コロッケファイヤー」という曲を作っていましたが、これは湯豆腐についてラップしている。

湯豆腐が本当に大好きなんです。夏でも湯豆腐食べますから。だから、好きな女のことを書くのと同じテンションで書ける(笑)。もっと言えば、湯豆腐をYou don't Fuuって言いたかっただけなんです。英語ができる人に「フーってすることを英語だとどう書きますか?」って確認したら「Fuuかな」って(笑)。「You don't Fuuで、なくはないと思います」って言うから、じゃあ、これでいこうと。

──本編ラストを締める「終わり良ければ全て良し」は、どのような思いから書いたんですか?

これは「終わり良ければ全て良し」という言葉から広げていきました。おそらく今の自分に満足してないところがあるからなんでしょうね。でも、すげえことが待ってるんだから、この先にみたいな。そういう心理がこの曲に表れたのかなと。

──それは9曲目の「未完の大器」にも通じるテーマですね。

そう。いつかやってやるっていう。今はまだイケてないけど、波が来てないだけなんだよ。今はちょっと不甲斐なくて申し訳ない。ただ、まだこの先にあるんです。だから待っててくださいっていう歌なんです。

──これもビートはオールドスクール風情がありますね。

ビートはPublic Enemy的というか、あのへんの感じをちょっと意識しました。あと、「マタアイマショウ」とか「Continue」に代わるライブの締め曲が欲しかったところもあって。作り終えたときに、この曲を歌ってライブを締めるという新たなパターンもできるかなと思いました。

迷ったときほど過去の自分にヒントがある

──ライブといえば、来年2月に全国ツアーを行うことが発表されました。今回はどのような形になりそうですか?

まだ何も決めてないですけど、「Wave My Flag」のライブと、1月に出すベストアルバムのライブとの2部構成みたいなのも面白いかなあとぼんやり思ってます。そういう構成は今までやったことがないんで。それともベストアルバムの曲を中心にして、この「Wave My Flag」の曲をちょいちょい挟んでいくのか。まだ悩んでますけど、歌詞を忘れているような古い曲も山ほどあるんで(笑)、まずはそれを思い出すことから始めます。

──なにせ15年分、曲がありますからね。そんな15年間を振り返ると、どんな年月でしたか?

いろんなことがありましたね。SEAMOとしてデビューしたときは、あれほど素晴らしい景色を見せてもらえるなんて思ってもいなかったし。ただ、メジャーデビューしてからとか、一発ヒットしてからがスタートなんだと思いますね。僕はシーモネーターで1回凹んでるんですけど、SEAMOとしてもいい感じに凹ませてもらったというか。そういう意味では味のある15年だったと思います。

──シーモネーターから数えると来年でデビュー20周年になります。長く活動を続けられる秘訣はどこにあるとご自身では考えますか?

しんどいときには、好きなことをやるのが一番かなって思います。曲作りに関しても、知らず知らずのうちに、やらされてるというか、自分の意図しない方向に行きがちだったりするんですけど、「ちょっと弱ってるな」とか「俺、何やってるんだろ?」とか言うときほど、自分の好きなこと、自分が笑顔になれることに回帰するのがポイントなのかなって。今回の競馬の歌もそうだし、湯豆腐の歌もそうだし、オールドスクールを意識したビートもそうだけど、流行りがどうこうじゃなくて、自分の好きなことをやる。セールスにつながるかどうかは別にして、長く続けるということに関しては、間違いなくそれが秘訣なんじゃないかと思います。迷ったときほど基本に戻る、初心に返る。迷ったときほど過去の自分にヒントがある。昔の自分にお手本や教科書がある。長くやればやるほど、それは思いますね。僕が今やってることは15年前とか20年前の刷り直しでしかないと思ってるんです。でも、もちろん戦闘力はアップしてるから、それでいいのかなって。そうやってちょっとずつ軌道修正しながら、今も音楽を続けられているんだなって思います。

SEAMO

ライブ情報

Wave Your SEAMO TOUR
  • 2020年2月2日(日)宮城県 darwin
  • 2020年2月8日(土)石川県 金沢GOLD CREEK
  • 2020年2月11日(火・祝)香川県 高松MONSTER
  • 2020年2月15日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2020年2月24日(月・祝)福岡県 イムズホール
  • 2020年3月1日(日)大阪府 BIGCAT
  • 2020年3月7日(土)東京都 山野ホール
  • 2020年3月14日(土)愛知県 Zepp Nagoya