ナタリー PowerPush - SCOTT MURPHY
J-POPカバーベスト発売記念 思い出の5曲&まんだらけ探索
Part 2:スコット・マーフィーに衝撃を与えたJ-POP
(1) THE BOOM「島唄」
初めて日本に来たとき、沖縄料理の屋台を見つけて入ってみたんです。そこではずっと沖縄音楽が流れていて、その中の1曲が「島唄」で。アメリカにはない三線の音色を初めて聴いて、その独特のメロディがすごく新鮮で、屋台のマスターからTHE BOOMのCDを貸してもらいました。これが日本の音楽を好きになったきっかけなんです。
──ALLiSTER時代、最初にカバーした日本の楽曲が「島唄」ですよね。
はい。日本語の曲をカバーしようと決めたとき、「島唄」とスピッツの「チェリー」、サザンの「TSUNAMI」の中からどれか1曲を選ぶことになって。それで屋台のマスターに相談したら「絶対に『島唄』!」って言われて、あの曲をカバーしました。
──THE BOOMの曲はほかにも聴きました?
はい。「風になりたい」はサンバのエッセンスが入っていて、すごく面白いと思います。僕は15年くらい音楽活動をやってるけど、ずっとロックだけだと飽きちゃうんですよ。だから、今まで聴いたことのないような新しい音楽に出会うと、すごく好きになっちゃうんです。
──THE BOOMの「島唄」みたいに、日本以外の国で出会った音楽で印象に残っているものってありますか?
ブラジルで本場のサンバを聴いたときはすごい衝撃を受けました。アイルランドのフォークソングも歌詞が切なくて、いい曲がたくさんあったなあ。
(2) 美空ひばり「川の流れのように」
すごく有名な曲だから、最初にいつ聴いたかは思い出せないんだけど、いろんなところで耳にしましたよ。あの曲のメロディは日本独特のものだし、歌謡曲っていう演歌でもポップスでもないジャンルは本当に面白いと思います。
──日本の歌謡曲は、アメリカのポップスやスタンダードと比べてどういうところが独特なんですか?
ボーカルの後ろで鳴ってるバックトラックが歌を邪魔しない適度な音量で。アメリカにはこういう音楽はないですね。
──なるほど。ちなみに、「川の流れのように」の作詞者って知ってますか?
知らないです。
──この曲を作詞したのは秋元康さんといって、今ではAKB48のプロデュースをしてる人なんですよ。
ホントですか!? 「川の流れのように」みたいな歌詞を書いて、今のAKB48みたいな歌詞も書けるのはすごいですね。ビックリしました。
(3) ELLEGARDEN「Space Sonic」
以前、テキサスでやってる「SXSW(SOUTH BY SOUTHWEST)」っていうミュージックフェスティバルにALLiSTERで出演したとき、たまたまELLEGARDENと一緒になって。そこで初めてELLEGARDENのライブを観て、「Space Sonic」を聴いて感動したんです。日本人なのに英語で歌っていて、サウンドもアメリカとイギリスの音楽をミックスしたものに日本のテイストを加えて、メロディもすごく良くて。そのときにELLEGARDENと仲良くなって、のちに3カ月くらい一緒に日本ツアーもやりました。
──確か2006年のツアーですよね。
はい。あのツアーでELLEGARDENは必ず「Space Sonic」を演奏していて、僕はいつも客席から一緒に歌ってたんです。最後に一緒にやったライブは福岡でだったんですけど、アンコールでALLiSTERとELLEGARDENで一緒にセッションをして。そのときに「Space Sonic」も演奏して、僕は歌とギターを担当したのが思い出に残ってます。
──日本のロックバンドを観たのは、「SXSW」でのELLEGARDENが初めて?
それより前にNICOTINEっていうバンドがALLiSTERを日本に呼んでくれて。そのとき初めて日本のロックバンドを観たんですけど、すごく不思議な感じがしました。みんな英語がしゃべれないのに歌詞が英語ってことに、最初は「なんで?」って思って(笑)。
──ほかには、日本のバンドのどういうところが気になりましたか?
最初はアメリカやイギリスのロックに憧れて英語で歌ったのかもしれないけど、そこに自分たちならではの味を入れることで新しいものができてるなと。あと、ELLEGARDENもそうだけど、日本語で歌う曲のほうが個性的で面白い。「Space Sonic」以外では、日本語で歌ってる曲が好きですし。日本語の響きも大好きだし。
──英語で歌っている日本のロックバンドはたくさんいて、中には海外進出をしているバンドもいます。でも、まだ海外で大成功を収めている日本のバンドはいないんですよね。
僕は今でも、日本のことをあまり知らないシカゴの友達に、僕が好きな日本の音楽をよく聴かせるんですけど、結構反応がいいんです。でも、絶対にヒットできる曲があっても、言葉の問題がある。英語で歌っていても、アメリカ人が聴くと英語には聞こえないことも多いし。
──じゃあ、日本のバンドが海外で成功を収めるにはどうしたらいいと思いますか?
ビッグネームなバンドと一緒にツアーをするのが一番かな。それと英語を完璧な発音で歌えること。でも、それじゃあ日本のバンドとしてのいいところが薄れてしまうし。
──この問題はずっと付きまとうんでしょうね。
坂本九の「スキヤキ(上を向いて歩こう)」がアメリカで1位を取れたのは、曲の良さもあると思うけど、タイミングが良かったのも大きいと思います。今後も「スキヤキ」みたいなヒット曲がアメリカで生まれたら面白いですね。
(4) 椎名林檎「ギブス」
──椎名林檎さんの「歌舞伎町の女王」は以前カバーしてましたが、「ギブス」はまだカバーしてませんよね?
はい。「ギブス」は最初に聴いたときから大好きな曲。実は僕、椎名林檎が一番好きな日本のアーティストなんです。歌詞もいいし、声もパワフルで、ロックやポップスだけじゃなくてジャズやミュージカル風の曲もあって、それが全部自分のものになっていて。すごくいいと思います。
──彼女のライブは観たことありますか?
東京事変は観たことあるけど、ソロのライブはまだですね。
──アルバムだとどの作品が好きですか?
「平成風俗」と「加爾基 精液 栗ノ花」。いろんな楽器が入ってるし、特定のジャンルでくくれないところが、本当にすごいと思います。椎名林檎は多分アメリカでヒットできるんじゃないかな。アメリカの友達にアルバムを貸したらハマってたし。その可能性は大きいと思います。
(5) スピッツ「楓」
──今回の「GUILTY PLEASURES BEST」でもカバーしていますね。ALLiSTER時代にも「チェリー」をカバーしていますが、スピッツは元々好きだったんですか?
はい。スピッツはロックバンドとしてのセンスとメロディ、歌詞のどれも素晴らしい。初めて日本に来たとき、日本のファンからスピッツのアルバムをもらって聴いたんですけど、いい曲がたくさんあって本当にいいバンドだと思いました。
──同じロックバンドでも、さっき名前の挙がったELLEGARDENに比べると、ソフトなイメージですよね。
以前読んだスピッツのインタビューに、彼らは最初もっと激しい曲をやりたかったけど、THE BLUE HEARTSみたいにロックだけどポップなカラーのあるバンドをだんだん目指すようになったとありました。その話を思い出して、今回「楓」では「この曲がもっと激しいアレンジだったら」と想像してカバーしたんですよ。
次回「Part 3:スコット・マーフィー、まんだらけを行く。」を更新予定です。
CD収録曲
- ドラえもんのうた(大杉久美子)
- 乾杯(長渕剛)
- どんなときも。(槇原敬之)
- LOVEマシーン(モーニング娘。)
- First Love(宇多田ヒカル)
- 15の夜(尾崎豊)
- 未来予想図II~VERSION'07~(DREAMS COME TRUE)
- SAY YES(CHAGE and ASKA)
- 夢をあきらめないで(岡村孝子)
- ゆめいっぱい(関ゆみ子)
- 川の流れのように(美空ひばり)
- なごり雪(イルカ)
- THRILLER(マイケル・ジャクソン)
- BEAT IT(マイケル・ジャクソン)
- サザエさん(宇野ゆう子)
- はじめてのチュウ(あんしんパパ)
- チェリー(スピッツ)
- 島唄(THE BOOM)
- 楓(スピッツ)
- 冬がはじまるよ(槇原敬之)
- I DON'T WANT TO MISS A THING(AEROSMITH)
UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤はスペシャルなオリジナルTシャツ付き!!
*サイズはMのワンサイズのみになります。
*100個生産限定商品の為上限に達し次第販売終了となります。
スコット・マーフィー
アメリカ・イリノイ州シカゴ出身の男性ロックアーティスト。1995年にメロディックパンクバンドALLiSTERを結成し、インディーズやメジャーから数々のアルバムを発表する。2001年に初来日公演を成功させ、これがきっかけとなり日本に興味を持ち、独学で日本語をマスター。2006年には自身がお気に入りのJ-POPナンバーを日本語でカバーした楽曲を含むアルバム「GUILTY PLEASURES」をリリースした。 2007年にELLEGARDENとともに全国33カ所におよぶ大規模なジャパンツアーを行うが、ツアー終了後にバンド活動を休止。以後、ソロ活動をスタートさせ、「GUILTY PLEASURES」シリーズを定期的に発表している。また、2009年には全曲オリジナルによるアルバム「Balance」もリリース。2010年にはALLiSTERも再始動させ、精力的な音楽活動を続けている。2011年11月にこれまでカバーした楽曲からセレクトされたベストアルバム「GUILTY PLEASURES BEST」をリリース。
2011年11月21日更新