音楽ナタリー Power Push - SCOOBIE DO

人間じゃないぜバンドマン 21年目の“LIVE CHAMP”が挑むアウェイ戦

ラッパー・マツキタイジロウの覚醒

──4曲目の「BUKI」は向井秀徳さんをレコーディングエンジニアに迎えた「トラウマティック・ガール」(2007年4月に発売されたCHAMP RECORDS第1弾ミニアルバム)の頃を彷彿とさせる、ソリッドなファンクですね。

マツキ 確かに。ひさびさにリフ中心の曲ですね。

コヤマ ナガイケジョーのベースが唸る。

──イントロのベースでドラムのスナッピーが振動しているあの空気感もたまらない。

コヤマ そう、この曲はアンビエンスマイクという、直接楽器にマイクを立てずに空気の音を含む部屋の響きを録るような感じで録音したんですよ。(MOBYが検索した画像がスクリーンに映る)そうそう、こんなふうに。

ナガイケジョー(B)

ナガイケ この曲はアップライトベースを使ってるんですけど、あとで念のため普通のベースでも録り直したんです。でもやっぱりアップライトで録ったテイクを超えられなくて。空気感を含めて、やっぱあのテイクが“BUKI”感が強く出てるなって。

──そして5曲目の「ファンキー獣道」はマツキさんが自らの人生をラップで表現するというまさかの新機軸ですが、なぜリーダーはここに来てマイクを握ったのでしょうか。

マツキ ちょっと話逸れちゃいますけど、普段コーラス録りをするときって、手は普通にまっすぐ下ろしてたりヘッドフォンに当ててたりするでしょ。でも「ファンキー獣道」の歌入れのときは、こう自然に(両手を動かしてラッパーのような仕草で)手が出てくるんですよ。

──ははははは(笑)。

マツキ これ、ラッパーの人はカッコつけてやってるんじゃなくて、こうやってリズムを取ってんだなと気付きました。この曲はですね、去年の7月に僕の生誕40周年記念ワンマンライブというのを自分で企画しまして、自分でセットリストや演出も考えてやったんです。そのときに何か1つ、バンドに恩返しというか、自分なりの感謝を伝えるために、この日のために1曲作って歌おうと。ただ、自分で作った歌を歌うのはなんかマジっぽすぎて違うなあと思ったときに、ギターを弾きながらラップをするのは見た目にも面白かろうと思ったんですね。それで「こんなのやりたいんだけど」ってメンバーの前でやってみたら、ことのほか反応がよくて。シュウくんなんか「絶対アルバムに入れたほうがいいよ」って。

ナガイケ 初めてリハで聴いたとき、コヤマさんに刺さる音が聞こえましたからね。

コヤマ グサーって。命中したね。

──2人は子供の頃からの仲だから、格別に刺さるものがあるんですかね。

左からマツキタイジロウ(G)、コヤマシュウ(Vo)。

コヤマ きれいに言うとそうなるんだろうなあ。

ナガイケ ラップやるの初めてなはずなのに、まったく噛まずによどみなくラップしてたから、よっぽど個人練習してきたんだろうなって(笑)。アイデアを出しておいて、しどろもどろだったら「やっぱこれやめようよ」ってなるじゃないですか。でもサラッとやって「どう?」って感じだったから。

マツキ 自分でもびっくりしたけど、俺、ラップ案外うまいのかもしれない(笑)。ギター弾いてなかったら絶対こうなっちゃうからさ(両手を動かしながら)。

コヤマ 次のツアーでやりゃあいいじゃん。ギターはオケで流して、キャップかぶって。MC西湘。西湘乃風(笑)。

マツキ でも自分としては1回こっきりで終わるつもりだったから、元はスチャダラパーを露骨に引用したりとか(笑)、ギャグっぽい内容だったんですよ。アルバムに収録するにあたり、そのへんは自主規制して書き換えて。

──なるほど。スクービーのアルバム曲ではありますが、このライムはマツキタイジロウの人生そのものですね。

マツキ そうですね。スクービーを初めてから20年の歴史を悩まずにスラスラーッと書いて。でもね、自分の話をしてるんだけども、結局スクービーの話になってるんですよね。不思議といい曲になったなと。

スリー・ツーのアゴ落とし

──6曲目「踊れ激しく」、7曲目「Na Na Na Na Na」とリズムの際立った曲が続きますので、ここはリズム隊のお2人からぜひお話を。

左からオカモト“MOBY”タクヤ(Dr)、ナガイケジョー(B)。

MOBY 「踊れ激しく」は、ざっくり「beach party」(2001年9月発売のアルバム)をイメージしてリズムを構築していきました。アメリカ南部、中南米に近いファンクのマナーで構築している感じというか。……ちょっと専門的な話になっちゃいましたけど。

──リーダーのデモ段階ではどんな感じなんですか? 簡単なビートだけ?

ナガイケ いや、入ってないんですよ。ギターと歌だけ。

MOBY 今回のデモは特にシンプルでしたね。みんなにお任せでまずは思い付く通りにやってもらって、あとで少しずつすり合わせていくみたいな。「Na Na Na Na Na」もアコギと歌だけのデモだったんですけど、ジョーは「これ、スカっぽくないすか」って言ってて。

コヤマ スカっぽくないスカ、つって(笑)。

──やっぱりファンクのねばっこさが混じってて、スクービーならではのスカになっているなと思いました。

MOBY スカをやるのはけっこうひさしぶりで、「Beautiful Days」(2004年7月発売のアルバム)に入っているコヤマシュウ作詞作曲の「名もない朝」以来なんですよ。これはシュウくんの歌がバッチリ合っててなかなかいいと思います。

──これ、タイトルはなぜ「Na Na Na」や「Na Na Na Na」ではなく「Na Na Na Na Na」と5つなんですか?

コヤマ これはFMの声のいいDJに曲紹介をしてほしくて。読むときはやっぱり(低い声で)「ナナナ、ナナ」になるだろうと。スリー・ツーですね。ぜひ皆さんJ-WAVEとかにリクエストしてもらえれば。

左からマツキタイジロウ(G)、コヤマシュウ(Vo)。

マツキ クリス・ペプラーです。それではお聴きください。ナナナ、ナナ。

MOBY 最終的にアゴを落としてね。

コヤマ スリー・ツーのアゴ落としですね。DJ用語で。

──「Na Na Na」のリフレインもそうですけど、歌詞の内容自体も非常にプリミティブというか、気持ちよく踊れることに特化したような曲だなと。

マツキ ライブでやったら初めて聴いても2番から歌える曲。

コヤマ そうそう。歌詞もメロディも1回聴けばすぐに覚えられる曲ですね。

21年目のSCOOBIE DOとして歌うべきメッセージ

──8曲目の「その輝きを抱きしめて」は今までになかったタイプの、メロウでフォーキーなバラードですね。

マツキ もともとは去年、初恋の嵐と対バンしたときに作った曲なんですよ。初恋がアルバムを出すというので(参照:初恋の嵐「セカンド」ゲストボーカルは山内総一郎、コヤマシュウ、堂島孝平)、彼らが演奏してシュウくんが歌う曲として。でも最終的にアルバムに入れるという話はなくなって。歌詞も西山(達郎。2002年3月に急逝した)くんに捧げる内容だったのでそのまま宙ぶらりんになってたんだけど、去年の9月に福島県南相馬の「騎馬武者ロックフェス」に出たとき、道すがらでいわゆる帰宅困難区域を通って……南相馬も決して安全ではない場所なんですよ。

──そうですね。

マツキタイジロウ(G)

マツキ そんときはまあいいライブができたかなとは思ったんですけど、「楽しいだけでいいのかな?」ってふと考えちゃったんですよね。スクービーの役目として、笑顔を届けるというのはもちろんあるんだけど、もう1つ自分の中に別の感情が芽生えていて。バンドを20年もやってきたんだから、何か社会に向けてのメッセージをバンドマンなりに発信していくことも大事なんじゃないかなって。僕は別に救援物資を送ったりとか、ボランティアで現場に入って手伝ったりしたことはないんだけれども、南相馬でライブをやったときにそう思った自分に嘘がつけなくて。それで宙ぶらりんになっていた曲の歌詞をバーッと書き換えて、まずはシュウくんに「こういう曲がやりたいんだよね」って相談したんです。それで「やってみようよ」ということになって、そこからさらに歌詞を推敲して。アルバムのほかの曲は楽しくて踊れる曲ばっかりだけど、どうしてもこの1曲を入れないと、21年目のSCOOBIE DOとして成立しない気がして。

──今のSCOOBIE DOとして、このメッセージが必要不可欠だったと。

マツキ 我々は人間ではないバンドマンではあるんだけど、そのバンドマンがバンドマンなりの目線でメッセージを発信していくことは、音を出して何かを表現する者として大事なことなんじゃないかなというのが、20年バンドを続けてきた実感なんですよね。

ニューアルバム「アウェイ」 / 2016年1月27日発売 / 2700円 / CHAMP RECORDS / HICC-4011
「アウェイ」
収録曲
  1. LIVE CHAMP
  2. It's A New Day
  3. アウェイ
  4. BUKI
  5. ファンキー獣道
  6. 踊れ激しく
  7. Na Na Na Na Na
  8. その輝きを抱きしめて
  9. 伸ばしたその手だけ
  10. また会いましょう
ライブDVD「FILM DANCEHALL YAON」 / 2016年1月27日発売 / 3500円 / CHAMP RECORDS / HIBH-4109
「FILM DANCEHALL YAON」
収録内容
  1. Introduction
  2. バンドワゴン・ア・ゴーゴー
  3. 結晶
  4. Get Up
  5. パレード
  6. PLUS ONE MORE
  7. What's Goin' On
  8. Beautiful Days
  9. アフィルグ
  10. Oh Yeah!
  11. ゆうべあのこが
  12. ミラクルズ
  13. ラストナンバー
  14. 茜色が燃えるとき
  15. ROPPONGI
  16. きまぐれ天使
  17. Steppin' Loud
  1. MIGHTY SWING
  2. MC
  3. 月光
  4. 最終列車
  5. イキガイ
  6. 真夜中のダンスホール
  7. LIVE CHAMP
  8. トラウマティック・ガール
  9. Disco Ride
  10. ロックンロールは未定
  11. Back On
  12. 新しい夜明け
  13. つづきのメロディー
  14. やっぱ音楽は素晴らしい
  15. Little Sweet Lover
  16. 夕焼けのメロディー
ツアー情報
SCOOBIE DO TOUR「Funk-a-lismo! vol.10」
  • 2016年2月26日(金)千葉県 千葉LOOK
  • 2016年3月5日(土)京都府 磔磔
  • 2016年3月6日(日)岡山県 CRAZYMAMA 2nd Room
  • 2016年3月12日(土)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2016年3月13日(日)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
  • 2016年3月18日(金)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
  • 2016年3月27日(日)静岡県 MESCALIN DRIVE
  • 2016年4月2日(土)新潟県 CLUB RIVERST
  • 2016年4月3日(日)福島県 Out Line
  • 2016年4月9日(土)岩手県 the five morioka
  • 2016年4月10日(日)秋田県 Club SWINDLE
  • 2016年4月17日(日)三重県 club chaos
  • 2016年4月23日(土)神奈川県 club Lizard YOKOHAMA
  • 2016年4月29日(金・祝)広島県 CAVE-BE
  • 2016年5月1日(日)福岡県 LIVE HOUSE CB
  • 2016年5月3日(火・祝)鹿児島県 SR HALL
  • 2016年5月5日(木・祝)大分県 club SPOT
  • 2016年5月7日(土)愛媛県 WStudioRED
  • 2016年5月8日(日)香川県 DIME
  • 2016年5月14日(土)長野県 LIVE HOUSE J
  • 2016年5月15日(日)石川県 vanvan V4
  • 2016年5月21日(土)青森県 青森Quarter
  • 2016年5月22日(日)宮城県 enn 2nd
  • 2016年5月28日(土)大阪府 umeda AKASO
  • 2016年5月29日(日)愛知県 池下CLUB UPSET
  • 2016年6月2日(木)北海道 cube garden
  • 2016年6月4日(土)北海道 CASINO DRIVE
  • 2016年6月5日(日)北海道 帯広MEGA STONE
  • 2016年6月11日(土)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
  • 2016年6月12日(日)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
SCOOBIE DO(スクービードゥー)
SCOOBIE DO

1995年にマツキタイジロウ(G)とコヤマシュウ(Vo)を中心に結成。1996年に現ドラマーのオカモト“MOBY”タクヤ(Dr)が加入し、自主制作カセットなどを販売する。1999年にKOGA Recordsから初のシングル「夕焼けのメロディー」をリリース。続いて発表された1stアルバム「Doin' Our Scoobie」で圧倒的な存在感を放つロックバンドとしてその人気を確かなものとする。2001年にナガイケジョー(B)が加入し、現在の編成で活動開始。2007年には自主レーベル「CHAMP RECORDS」を立ち上げ、ライブのブッキングからCD制作、プロモーションまですべてメンバー自ら行っている。バンド結成20周年を迎えた2015年は4月にベストアルバム「4×20 ~ 20 YEARS ALL TIME BEST」を発表。10月には東京・日比谷野外大音楽堂にてワンマンライブ「ダンスホール野音」を行った。2016年1月にはCHAMP RECORDS通算8枚目となるオリジナルアルバム「アウェイ」をリリース。