音楽ナタリー PowerPush - SCOOBIE DO

愚直に歩んだ“FUNKY 4 PLUS ONE MORE”の20年史

「PLUS ONE MORE」という概念の誕生

──翌2002年6月にはミニアルバム「GET UP」でSPEEDSTAR RECORDSからメジャーデビューと。メジャーになったことへの実感やそれによる変化はありましたか?

オカモト“MOBY”タクヤ(Dr)

MOBY 一番は関わってくる人数が全然違うってことですね。あとは締め切りを与えられるようになったこと。曲をいつまでに仕上げたりとか、どんどん先のことが決まっていくし、伴う結果も出さなくちゃいけない。レコード会社の人は、チャートが発表されても何も言ってはこないんだけど、顔色がなんとなく変わっていくような感じはありましたよ。そういうスケジュールの立て方やお金の遣い方の変化は、今自分たちでやっていて改めて実感しますね。

──メジャー2ndアルバム「Beautiful Days」(2004年7月発売)はホーンを導入してみたりと、楽曲もサウンドもバリエーションを大きく広げた1枚でした。SCOOBIE DOというバンドにより興味を持つきっかけになった、個人的に非常に思い入れの強い1枚です。

コヤマ 「パレード」(2004年4月発売)とかシングルでの布石はあったものの、思い切って広げた感じで……。でもね、当時けっこう賛否両論あったんですよ。このアルバムから好きになったという人も多いんだけど、いわゆる“ドス黒いグルーヴのSCOOBIE DO”がどっか行っちゃったみたいな。そんときね、「もう長く続けて何枚も盤を出して分かってもらうしかねえ」って思いましたね。

──いくつも作品を出して総体的に見たときに、このアルバムが持つ意味がもっとはっきりするだろうと。

コヤマ そうそうそう。これだけで「変わった」とか判断されても、そうじゃないよと。長い歴史の中で意味のあるアルバムになると思ったし。俺もすごく好きなアルバムなんですよね。メロディのいい曲がいっぱいあって。

MOBY レコーディングはすごく時間かかったよね。半年ぐらい。マスタリングが終わったあと、その足で下北沢のmona recordsで打ち上げしたのを覚えてる(笑)。

──そのあとの「PLUS ONE MORE」(2005年3月発売)、「Funk-a-lismo!」(2006年2月発売)という2枚のアルバムはタイトルそのものが、その後のSCOOBIE DOのスタイルやコンセプトを明確にする強力なキャッチフレーズにもなりました。

コヤマシュウ(Vo)

コヤマ 「Funk-a-lismo!」はよく俺が「ロックとファンクの最高沸点」と説明してますけど、ファンクと言ってもジェームス・ブラウンスタイルではなく、俺たちのロックなんだという打ち出し方を考えたときに生まれた造語で。あまり決まりのある言葉ではなく、ぼんやりとした概念なんですけど。「PLUS ONE MORE」という言葉は俺たちにとって非常に大きくて。これを「PLUS ONE MORE」という表題曲として残せたことは大きかった。

ナガイケ 確か最初は違うタイトルだったんだよね。

コヤマ そう、「ONE MORE TIME」だったんですよ、最初は。それまでにもライブでコール&レスポンスを入れることはあったけど、曲の中に全部入れ込んじゃえば、フェスなんかでも盛り上がる曲になるんじゃないかと思って。そんでいっぱい詰め込んだ結果、分数が長くなっちゃってあんまりフェスで演奏できないっていう(笑)。当時は今ほど大きな言葉じゃなかったと思うんですけど、俺たちの歴史の中で大事な曲になりましたね。

──それがちょうど10年前にできたという。

マツキ ああ、そうなんだ。そこから10年かあ。

ニュースでたどるCHAMP RECORDSの歴史:2007~09年

──この頃、初の野音ワンマン「Royal-Funk-a-lismo!」があったり、RHYMESTERをはじめとする異ジャンルとの交流も活発になり。10周年の流れを経て、2007年には自主レーベル「CHAMP RECORDS」が設立されました。チャンプ第1弾のミニアルバム「トラウマティック・ガール」が2007年4月発売で、ナタリーの立ち上げがその少し前、2007年2月1日なんですよね。

MOBY ほぼ一緒だ。

──ナタリーで最初に取り上げたスクービーの情報が、2月7日の「トラウマティック・ガール」レコーディング日記掲載開始というニュースですね。

ナガイケ あー、やってたやってた。

──SCOOBIE DOを含む情報は現在までにおよそ590件あります。フェス出演情報まで挙げるとものすごい数になるのでいくつか抜粋すると、1本目以降の2007年はこんな感じです。

マツキ この頃はまだ手探りで、とにかくライブをいっぱい入れて、生活費だけでも稼がなきゃって感じでしたね。

──音源制作やライブのブッキングのみならず、PV撮影の進行管理なども当然自分たちだけでやるんですよね。これは無理だ、とはならなかった?

マツキ やれることをみんなで探して、とにかくやり始めたという時期ですね。フラカンも自分たちで相当ドサ回りしていたので、そういう先輩たちの姿にも勇気付けられました。

コヤマ メジャー離れて活動が止まるのはダサいと思ってたし、気持ち的には全然イケイケでしたね。

「SPARKLE」媒体紙資料表紙

──業界向けマル秘資料の流出、というのは自主運営ならではの面白い試みとして記憶に残っています。

コヤマ あったなあ。「作成者:ナガイケジョー」ね(笑)。

──プレス資料はファンの目に触れる機会がないものですけど、チャンプはメジャー並あるいはそれ以上にしっかりしたクオリティの資料を毎回作っていて驚くんですよ。その“企業努力”の一端が垣間見られるいい企画でした。2009年ではほかに台風による札幌公演の延期も。

MOBY フェリーが台風に追いつかれて、ほぼ48時間乗りっぱなしだったんですよ。

──Twitterやブログを使ってメンバーが現地からリアルタイムで報告していて(笑)。

MOBY そうそう、この年の夏にTwitterを始めたんだ。

コヤマ 「本日10月8日16:00現在、宮城・石巻湾内で待機しているとのこと」。すげえリアルタイム(笑)。

ベストアルバム「4×20 ~ 20 YEARS ALL TIME BEST」 / 2015年4月1日発売 / [CD3枚組+DVD] 4800円 / CHAMP RECORDS / HICC-4008
ベストアルバム「4×20 ~ 20 YEARS ALL TIME BEST」
Disc 1
  1. 夕焼けのメロディー
  2. December Song
  3. きまぐれ天使
  4. 悪い夢
  5. No.3
  6. Little Sweet Lover
  7. 勝手にしやがれ
  8. キミとオレ
  9. アフィルグ
  10. Oh Yeah!
  11. Get Up
  1. The Thing
  2. ゆうべあのこが
  3. 路上のハードボイルド
  4. 左胸のボス
  5. 最終列車
  6. つづきのメロディー
  7. 風の恋人
  8. 茜色が燃えるとき
  9. ラストナンバー ~Beautiful Dawn~
Disc 2
  1. パレード
  2. Beautiful Days
  3. 恋は魔法
  4. また逢う日まで
  5. PLUS ONE MORE
  6. What's Goin' On feat. RHYMESTER
  7. Back On
  8. Disco Ride
  9. やっぱ音楽は素晴らしい feat. RHYMESTER
  10. トラウマティック・ガール
  1. ロックンロールは未定
  2. 真夜中のダンスホール
  3. MIGHTY SWING
  4. バンドワゴン・ア・ゴーゴー
  5. イキガイ
  6. ミラクルズ
  7. 恋の彗星
  8. かんぺきな未完成品
  9. 結晶
  10. 新しい夜明け(新曲)
Disc 3
  1. 夜明けよ急げ
  2. わがままなあの娘
  3. 空っぽの言葉
  4. ロングスカート・ベイビー・ブルース
  5. 女と男の世界
  6. 裸の天使
  7. 恋人はそれを待ちきれない
  8. 真夜中のヒーロー
  9. 冷戦
  10. R134
  11. 八月の天使
  12. サマーダウン
  13. 3rd Season
  14. Funky Way
  1. おんな
  2. 木曜日のユカ(Live at 新宿JAM「R&B天国」1996.6.14)
  3. Com'on Sunset Back(Live at 下北沢SHELTER 2001.9.16)
  4. Oh Yeah!(Live at 下北沢SHELTER 2001.9.16)
  5. アフィルグ(Live at 下北沢SHELTER 2001.9.16)
  6. 勝手にしやがれ(Live at 下北沢SHELTER 2001.9.16)
DVD収録内容
  1. 悪い夢
  2. No.3
  3. 勝手にしやがれ
  4. ゆうべあのこが(ONLY SSTV EDITION)
  5. What's Goin' On feat. RHYMESTER(from DVD『Royal-Funk-a-lismo!』)
  6. トラウマティック・ガール
  7. 真夜中のダンスホール
  8. MIGHTY SWING
  9. Back On(from DVD『EBISU SPARKLING』)
  10. バンドワゴン・ア・ゴーゴー
  11. ミラクルズ
  12. かんぺきな未完成品
  13. 結晶
  14. The Thing(from Video『Do is here』)
  15. Little Sweet Lover(from『BREAK ROCK』初回特典DVD)
  16. Funky New Day(Live at RISING SUN ROCK FESTIVAL 2003 in EZO)
SCOOBIE DO(スクービードゥー)

SCOOBIE DO

1995年にマツキタイジロウ(G)とコヤマシュウ(Vo)を中心に結成。1996年に現ドラマーのオカモト“MOBY”タクヤ(Dr)が加入し、自主制作カセットなどを販売する。1999年にKOGA Recordsから初のシングル「夕焼けのメロディー」をリリース。続いて発表された1stアルバム「Doin' Our Scoobie」で圧倒的な存在感を放つロックバンドとしてその人気を確かなものとする。2001年にナガイケジョー(B)が加入し、現在の編成で活動開始。2007年には自主レーベル「CHAMP RECORDS」を立ち上げ、ライブのブッキングからCD制作、プロモーションまですべてメンバー自ら行っている。1年に1枚のタームでフルアルバムを発表しており、2014年9月にはCHAMP RECORDS通算7枚目となるオリジナルアルバム「結晶」をリリースした。バンド結成20周年を迎えた2015年は4月にベストアルバム「4×20 ~ 20 YEARS ALL TIME BEST」を発表。10月には東京・日比谷野外大音楽堂にてワンマンライブ「ダンスホール野音」を行う。