音楽ナタリー PowerPush - SCOOBIE DO
19年間をいいとこ取り 潔い“デビュー盤”「結晶」
スッキリしたレコーディング
──ナガイケさんは“お年玉”のCD-Rを聴いてみてどう感じましたか?
ナガイケジョー(B) 「今回はパッと演奏して、いつものライブに近い感じで録ろうと思う」っていう話は聞いてたし、1曲1曲がすごくシンプルだったんで、自分たちの得意な感じだなとは思いましたね。合わせてみて案外うまくいかなかった曲が省かれていったから、この12曲は得意分野です。要はつまづかなかったもの。
──手練の皆さんでもつまづくことがあるんですね。
ナガイケ たぶん1個こう、この曲はここか!っていう腑に落ちるポイントがあるんですよ。そういうのがないと、みんななんとなく「うーん……なんかこの曲いいんだけど、いつもの感じとは……」っていう雰囲気になって、「次行こうか」ってなる。
マツキ ふふ(笑)。曲がうまくハマらなかったっていうことだと思いますけどね。もうちょっと時間かければ解決策がありそうではあるんですけど。
──ではコヤマさんは?
コヤマ カッコいい曲がいっぱい入ってて好きな感じだなって思うのと同時に、これどんなアルバムになんのかなって。
──そのときに見えた全体像はどういうものだったんですか?
コヤマ それはね、まったくわからない。最後の音が入ってアルバムが完成して初めて全貌が明らかになるから。でも、どんなアルバムになってもいいと思ってるのね。バンドでやってるんだからどんなアルバムだっていい、みんながカッコいいと思う曲がいっぱい入ってればそれが最強だと思う。だから目に見えたコンセプトとかテーマがあってもいいし、なくても全然いいんだよね、俺は。
──そういえば以前はコヤマさんが作詞した曲もありましたが、最近の作品には収録されていないですね。
コヤマ ないね、うん。
マツキ 「トラウマ」(トラウマティック・ガール / 2007年)以来。
コヤマ そうだ、「トラウマ」も共作なんだ、一応。まあ最初の1行以外はタイちゃん(マツキ)が書いたやつだけど(笑)。
ナガイケ 共作なんだ? 知らなかったな。
コヤマ 「書いてみる?」って言われたから一応書いてみたら、「うーん、ちょっと俺も書いてみるわ」ってなって、できあがったら最初の1行以外全部タイちゃんが書いたやつだったっていう(笑)。別にいいんだけどさ(笑)。
マツキ はははは(笑)。2番の「確かに動機はちょっと 不純な妄想」って歌い出しもだよ。
コヤマ ああ、そうか。歌い出しが得意だよね、だからね。
ナガイケ そこ肝心だよ。
──もっと作詞したいという欲求はありますか?
コヤマ うーん……今はないな、別に。タイちゃんが作ったもので、歌詞も曲も最高だと思ってます。俺はSCOOBIE DOを始めたときからそうだったから、あんまりそこに変なこだわりはないっつうか。カッコいい曲ができればそれでいいんじゃないかなって思う。
MOBY 「かんぺきな未完成品」を出したあとの打ち合わせでは、最初はアルバムを2015年に出そうかって話になってたんですけど、リーダーが「この流れのまま曲書けるからもっと早めよう」って提案したんですよ。それでその“お年玉”を持って来て。それが弾き語りのものだったから、これは自分なりの解釈でやればいいんだっていうのがなんとなくわかって。みんなでせーので合わせるときも細かいことは言わずに、だいたいは演奏する人間に任せてもらったことが今回はデカイですね。
──プレイヤーとしての自己表現ができたと。
MOBY そうですね。だから初期衝動と言ったらそういうことになるのかな。パッと聴いて思ったことをそのままドンと出した部分が多かったので。すごい、スッキリしたレコーディングといいますか(笑)。個人的には、今回はハル・ブレインってセッションマンのドラムをイメージしていて、その人のプレイは聴きまくりましたね。あとはリリースのスケジュールを早めたことで、巻きの進行の勢いにうまく乗れたんじゃないかと思います。
──スケジュールを早めたのはマツキさんの創作意欲に起因するところが大きいと思うんですけど、そうなったきっかけや理由はありますか?
マツキ 曲はいつも作ってるので「書けるから早めよう」って言った記憶はあんまりないんですけど、来年が結成20周年なんで、20周年にアルバム出そうかみたいなことを言ってたんですよね。でもコンスタントに毎年1枚出してるイメージのほうが大事だと思ったんじゃないかな。まあとにかくいいと思える曲ができてきてたから、「アルバム出しちゃわない?」って話になったというか(笑)。
歌詞はロックそのもの
──近年の楽曲の歌詞では日本語の占める比重が大きくなりましたよね。前作には「サタデーナイト」や「パレード」といった横文字が少ないながらも出てきましたが、今回は1つもないですし。
マツキ 今回は意識的に横文字を使ってないんですよ。俺らみたいな、いわゆる昔のソウルミュージックだったり、リズム&ブルース、ファンクっていう身体に直接的に訴えかけてくる音楽をやってる人たちが、それが生まれたルーツである国の言葉を一切使わないで音楽を成立させるのって面白いかなと思って。日本人として、日本語の響きをリズムとメロディに乗せるっていうことにひとつ自分の中でハードル設けたかったんです。
──なるほど。それから「生きてることは何度でも始められるってことさ」「鈍い光に 道を譲るな」など、よりメッセージ性を増した言葉が多くなっている印象も受けました。
マツキ やっぱりCDを聴いた人、ライブに来た人が勇気や元気をもらえるような音楽を作りたかったから、それが言葉にも出てるんだと思いますね。
──コヤマさんは言葉を伝える身として、今回の歌詞についてどう思いましたか?
コヤマ 俺はロックのことを歌ってんだなって思ったんですよね。だからね、歌うだけでロックンロールになるなって思った。「ロック風」とか、「ロックンロールっぽい」歌詞みたいなの……なんだろ、俺もよくわかんないけど強面な感じっていうか、そういうのじゃなくて。それはそれでいいんだけどさ、これはロックそのもの、ロックな気持ちっていうかね。でもSCOOBIE DOで今までいっぱい歌ってきたけど、全部がそうだと思うわけよ。いわゆるメッセージ性のある曲には聞こえないのかもしれないけど、言葉があって歌になってるんだったらなんかしらのメッセージと呼ばれるものってあるんだろうし、俺はそれを感じ取って歌ってると思うんだ。だから、今になって急にメッセージ性を持ったわけじゃないっつうか。
──そうですね。力強い言葉が並ぶ一方、歌声は全体的にやわらかく穏やかなイメージだったのも興味深かったです。
コヤマ 歌録りは俺とタイちゃんと、エンジニアの中村(宗一郎)さんと3人でやるんだけど、「ここをもっと強調して歌え」とか「サビに入ったらこうしろ」とか細かいところがどうこうじゃないんだよね。パーッと歌って「あ、なんかいい感じっすね」って一番盛り上がるところで決める。毎回そうだけど、その歌がカッコよくなりゃいいっていうか。だから歌い方に特徴があるって感じるんだったら、それは曲が呼んでるってことなのかもね。
──MOBYさんは歌詞の内容がプレイに影響することはありますか?
MOBY うん、曲のストーリーの登場人物とか森羅万象をわりと意識して表現するほうですね。でも今回はどっちかっていうと曲が呼んでるものを勢いで叩いちゃうって感じだったから、そこまでは考えてないです。昔だったら例えば「ビーチパーティー」では、浜辺の曲だから浜辺を歩いてるカニをドラムで表現したり。
マツキ はは(笑)。そんなとこあった?
MOBY トコトコトコトコ……ってとことか。
マツキ よりによってカニ(笑)。波とかじゃないんだ。今日帰って聴いてみよう。
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- ニューアルバム「結晶」2014年9月10日発売 / 2700円 / CHAMP RECORDS / HICC-3808 / Amazon.co.jp
- アナログ盤 / 2014年10月下旬発売 / 3000円 / CHAMP RECORDS / JET SET / JSLP-042 / JET SET
収録曲
- 真夜中の太陽
- 転がる石
- 結晶
- いいぜ いいぜ
- 月に手を伸ばせ
- 笑う女
- やっかいなお土産
- 無情の嵐
- 囚われ者
- 行っておいで
- あなたを教えて
- 憂いの雨
SCOOBIE DO(スクービードゥー)
1995年にマツキタイジロウ(G)とコヤマシュウ(Vo)を中心に結成。1996年に現ドラマーのオカモト“MOBY”タクヤ(Dr)が加入し、自主制作カセットなどを販売する。1999年にK.O.G.A. RECORDSから初のシングル「夕焼けのメロディー」をリリース。続いて発表された1stアルバム「Doin' OurScoobie」で圧倒的な存在感を放つロックバンドとしてその人気を確かなものとする。2001年にナガイケジョー(B)が加入し、現在の編成で活動開始。2007年には自主レーベル「CHAMP RECORDS」を立ち上げ、ライブのブッキングからCD制作、プロモーションまですべてメンバー自ら行っている。1年に1枚のタームでフルアルバムを発表しており、2014年9月にはCHAMP RECORDS通算7枚目となるオリジナルアルバム「結晶」をリリースする。