音楽ナタリー PowerPush - SCOOBIE DO
19年間をいいとこ取り 潔い“デビュー盤”「結晶」
SCOOBIE DOから届いた約1年4カ月ぶりのフルアルバム「結晶」は、ファンク、ソウル、ロックといったバンドの中核を成す要素を高純度で表現した1枚。“エバーグリーン”を目指した「MIRACLES」、開放的かつ直球な「かんぺきな未完成品」を経由した結果、これぞまさしくFUNKY4と言い切るに足る作品ができあがった。
今回もナタリーではメンバー全員にインタビュー。結成20周年を翌年に控えるバンドのモードに注目し、この快作の成り立ちに迫った。
取材・文 / 伊藤実菜子 撮影 / 佐藤類
急遽出演したライジングサン
──今年の夏は「RISING SUN ROCK FESTIVAL」に急遽参加して、入場口でウエルカムアクトを行う(参照:SCOOBIE DO、RSRに朝のダンスホール急設)という前代未聞の試みが音楽ファンの注目を集めましたね。これはマツキさんのアイデアが発端だったんですか?
マツキタイジロウ(G) そうですね、うん。だけど、ウエス(「RISING SUN ROCK FESTIVAL」を手がけるイベンター)には前々から冗談で「いつか入場口でやらせてください」なんて言ってて。俺たちはライジングに5年連続で呼んでもらってて、1年ごとにステージがデカくなっていって去年はSUN STAGEっていう一番デカいステージでやったんですよ。だからさすがに今年は呼ばれないなと思って「入場口でやらせてくれ」ってしつこく言ってたら、それが実現したっていう感じですね(笑)。
──「やっぱり今年も行くぞ石狩!てな調子で今独断でFunky4全員で楽器をもって遊びに行くことに決めました!」というマツキさんの宣言が載ったメルマガが8月11日に配信されて、15日には出演というスピード感にも驚きました。
マツキ そうそう。まあロックバンドなんでね、痛快なことをやんないと面白くないじゃないですか。それにウエスが「絶対来んな」って言ったら行かないですけど、「来るならやる?」みたいな感じだったんで。何年も前からのジャブが効いてたっていうことですね(笑)。無理やりだったけど、参加することに意義があるっていうことで。
──そこまでする情熱ってどこから生まれたものだったんでしょうか?
マツキ 北海道の人って、偏見なく音楽を受け入れてくれると感じてて。そういうとこがね、スクービーとすごく相性がいい気がするんですよ。2年に1回くらい道内ツアーをやってるけど、どこのお客さんも盛り上がってくれるし。もちろんたくさん出させてもらったライジングに恩返ししたいっていう理由もあるけど、北海道とはとても相性がいいから、どうせやってるなら参加したいっていう(笑)、そんな感じでしたね。
──MOBYさんはTwitterで進捗状況を細かく報告されていましたね。最初の投稿には「リーダーから他のメンバーに送られてきたメール、そして今朝発信されたSCOOBIE DOメルマガにて面喰らった」と書かれてましたけど、あのタイミングで初めて知ったということですか?
オカモト “MOBY” タクヤ(Dr) うん。メルマガと同時にみんなに「行きますよ」って社長命令のメールが来て(笑)。どうしたもんかって思ったけどとりあえずウエスに連絡して、そこからのやりとりはわりと正直に全部書きましたね。
──そしてコヤマさんは“もしもに備えて”Tシャツを作っていたという。
コヤマシュウ(Vo) うんうん。エントランスダンスホールの話は何年か前からあってね、ウエスの人と会うとその話で盛り上がったりしてて。だから妄想だけが膨らんでて、俺は今回は最終発表で呼ばれるんじゃねーかなと思ってたんだけど(笑)。
マツキ 図々しくもね(笑)。
コヤマ あのTシャツも、もともと遊びで作ってたっつうか。ライジングサンはオフィシャルのロゴが毎年変わるんですけど、今年の開催が決まったときにウエスの人に「今年のロゴ、データでくださいよ」ってもらっておきつつ、デザイナーの人に「まだ決まってないんだけど、こういうの作ってみない?」つって、やってもらったのがあったの。
MOBY ダメだったら来年使おうかって。
コヤマ そうそう、来年でもいいし。ヘタしたらもう通販だけで「今年は俺の頭の中で出演してました」って売っても、ライジングに来るような人にはウケるかなと思ったりして。
──ははは(笑)。Twitterに当日のライブの写真が上がっていましたが、大盛況だったようですね。
MOBY そうですね。プロレス入場でステージまで行ったら、一部始終をTwitterで見てくれてたのか「ほんとに来た!」みたいな歓声が上がって。ライジングに来る人たちはそういうありそうでないことが起こる感覚を好むと思うので、面白かったですね。
考えるより先に、出てきたものを形に
──「結晶」の制作はいつ頃から始まったんですか?
マツキ 曲は去年のうちにだいぶ貯めてあって。俺がアコースティックギターと歌だけで弾き語りしたやつをCD-Rに焼いて、年明けに「お年玉」ってメンバーに渡して。春先くらいからですかね……スタジオで1曲1曲合わせていって、その中からよかった12曲をアルバムに入れたっていう感じですね、流れとしては。
──前作「かんぺきな未完成品」は12曲すべてマツキさんがアレンジも曲順も固めたデモが最初にあったとのことですが、今回はやり方を変えたんですね。
マツキ そうですね。もうめんどくさくなっちゃって。
──えっ。
マツキ 完成形を渡すっていうのもね、時間と気力があれば楽しいんだけど、毎回やってんのも疲れるなあっていう感じがあって。今年はスクービーが結成されてから19年目なんで、“19年目のデビューアルバム”がアルバムのコンセプトではあるんだけど……裏を返せば、コンセプトを考えるのがめんどくさくなってしまったというか。考えるより先に、出てきたものを形にしてみようっていう気持ちだったんですよね、今回は。だからとっても勢いがあって、ソウル感もあるロックンロールアルバムになりました。
──コンセプトを考えるのがめんどくさくなってしまったということですが……。
マツキ まあ極論すればですけどね(笑)。
──長く活動しているとそういう時期が訪れるんでしょうか。
マツキ 時期なのかなんなのかわかんないけど、とにかくロックバンドとしてカッコいい盤になっていればいいんじゃないかっていう気持ちが去年はすごく芽生えてた。あとはなんというか、震災以後のムードって去年までで1回リセットしたほうがいいのかなって気がしてて。2014年からは、リスナーやライブに来る人たちに単純に勇気とか元気とか、明日からがんばろうって気持ちになれるエネルギッシュさを提供できるような、そういうパワーのあるバンドが生き残っていくんじゃないかと。俺の勝手な妄想と直感でしかないんだけど、そういうふうにシフトしたいなあって思ったんですよね。俺らは常にライブをやってるし、場所もホールだの何千人クラスのハコではなくてライブハウスで。お客さんの顔が見える場所でやってるわけだから、観に来てる人に直接突き刺さるような音楽をやりたいと思ったんです。
──震災以降に発売されたものというと「MIRACLES」と「かんぺきな未完成品」ですが、この2作にも時代のムードが反映されていた?
マツキ まあ言ってしまえばね。「MIRACLES」と「かんぺき」は震災直後から2、3年ぐらいだから、やっぱりシリアスな世界観を引きずったちょっと暗めなムードのアルバムではあったと思うんですよ。だからそういうのは1回置いといて、改めて4人組のロックバンドの潔いロックアルバムを作ろうとした、ってことですね。今回は。
──それが“19年目のデビューアルバム”につながるんですね。
マツキ SCOOBIE DOの原点回帰っちゃ原点回帰かなとも思うし。ファンキーな面もあればメロウな面もある、だけどどの曲も聴く人の背中を押せる。スクービーの原点ってそこだと思うので、そういうアルバムになったんじゃないかな。
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- ニューアルバム「結晶」2014年9月10日発売 / 2700円 / CHAMP RECORDS / HICC-3808 / Amazon.co.jp
- アナログ盤 / 2014年10月下旬発売 / 3000円 / CHAMP RECORDS / JET SET / JSLP-042 / JET SET
収録曲
- 真夜中の太陽
- 転がる石
- 結晶
- いいぜ いいぜ
- 月に手を伸ばせ
- 笑う女
- やっかいなお土産
- 無情の嵐
- 囚われ者
- 行っておいで
- あなたを教えて
- 憂いの雨
SCOOBIE DO(スクービードゥー)
1995年にマツキタイジロウ(G)とコヤマシュウ(Vo)を中心に結成。1996年に現ドラマーのオカモト“MOBY”タクヤ(Dr)が加入し、自主制作カセットなどを販売する。1999年にK.O.G.A. RECORDSから初のシングル「夕焼けのメロディー」をリリース。続いて発表された1stアルバム「Doin' OurScoobie」で圧倒的な存在感を放つロックバンドとしてその人気を確かなものとする。2001年にナガイケジョー(B)が加入し、現在の編成で活動開始。2007年には自主レーベル「CHAMP RECORDS」を立ち上げ、ライブのブッキングからCD制作、プロモーションまですべてメンバー自ら行っている。1年に1枚のタームでフルアルバムを発表しており、2014年9月にはCHAMP RECORDS通算7枚目となるオリジナルアルバム「結晶」をリリースする。