ナタリー PowerPush - SCOOBIE DO
18年目の原点回帰 聴き手に託す「かんぺきな未完成品」
シンプルなものは伝わるスピードが速い
──今作はファンクの要素も入れ込みつつ、これまで以上にロックを感じる演奏が多いですよね。かと思うと「ひとつと半分」のような朴訥としたメロディや演奏は今までなかった部分ですし、そこは特に新機軸だなと思いました。
マツキ たぶん生半可にキャリアがあるぶん勝手にバランスを取っちゃうんですよね。自分が聴いていて疲れないものがやっぱり基準になってるんですよ。もうイケイケドンドンの曲が12曲だとキツいなっていうのがどこかにあるんでしょうね。だからそういうスローなものとか、ちょっと甘美な感じとかっていうのはどうしても入れたくなっちゃう。
──その甘美な部分も、おそらく昔だったらシンプルになりすぎない工夫をしたと思うんですけど、それをあえてしないぐらいシンプルというか。
マツキ そうですね。レコーディングではいろいろダビングできていわゆる完成形が作れるんだけど、ライブになると基本は楽器持ってるのは3人だけなんで。そうすると極力この3人だけでシンプルにできるものを最初から作っておいたほうが、それぞれがその場で気持ちいいアレンジを効かせられるっていう。最初から複雑でちょっと変わったものを作ろうと狙ってやっていくと、案外ガチガチで身動きとれない楽曲になってくるんですよね。それはそれでひとつの面白さではあるんだけど、そういう曲は今までたくさん作ってきたよなと思って。「MIRACLES」という歌モノのいいアルバムを作ったあとだからこそ、1回ちょっとね、気持ちをこうパカっと開放できるようなもののほうがいいのかなって思いまして。やっぱりシンプルなほうが伝わるスピードも速いですし。
──もうひとつ感じたのは、粗いながらもすごくボーカルの立ってるアルバムだなと。コヤマさんは「MIRACLES」とその後のツアーを経て、ボーカリストとして何か気持ち的な変化はありましたか?
コヤマ そんなに変化してるっていう感じはないなあ、自分としては。特別なことがあったとかそういうのはないですね。曲を覚えて練習して、みんなで合わせて、録って歌ったらこうなったっていう感じですね。そのまんま(笑)。言う必要ねえか、あはは(笑)。曲が変化を呼んだってことなのかな……。うーん、でもあんまりね、こうしようああしようっていう気持ちがないんですよ。曲ができた時点のメロディと歌詞で完璧だと思ってるので。「MIRACLES」のときもそうでしたけど、どんな曲でもカッコよくなるように歌うっつうだけかな。
「かんぺきな未完成品」のイメージは大人向けの絵本
──このアルバムを語る上で、「かんぺきな未完成品」というタイトルはとても重要な要素だと思うのですが、このタイトルについて具体的に教えてもらえますか?
マツキ ざっくり言うと、今の時代というか、世の中のムードを自分なりに表すならばこういう言葉ということですね。僕は作詞するときやタイトルを付けるとき、どこかでわかりやすく伝わるようにというか、誰が聴いてもわかるような部分を残しておきたくなるタチなんですけど、今回はそういうのはいいかなと。それに今回自分から出てきた言葉っていうのが、自分がリスナーだとしたら「あれどういう意味なのかな」っていちいち立ち止まりたくなるようなものだったんですよね。豪速球投げてるようで実はスライダーだったみたいな、受け取る側にとっていろんな球種に見えるような。僕、もともとはそういう歌を作るのが好きなんですよ。だけどここんとこ、特に「MIRACLES」はわりかしひとつの意味に取れるものを作るよう心がけてて。でも聴く人によっていろんな意味に取れるもののほうが、今は面白いかなと思って。
──「かんぺき」を「完璧」でなくひらがなにした理由は?
マツキ アルバムジャケットのイメージとして、漠然と絵本みたいなものがいいなと思ったんですよ。一見子供向けに作られた絵本とか童話のようなものにしたいなと思ってて。童話ってわかりやすい設定でわかりやすいお話なんだけど、裏にものすごく怖い意味が込められてたりとか、ものすごく深かったりしますよね。そういうイメージの盤になったらいいなと。全体的なムードとしては「暗めの作品を作る」というのがひとつ決まってたので。それで「かんぺき」を漢字にしてしまうとちょっとカタすぎるので子供でも読めるひらがなにして、大人向けの絵本というか、不気味な感じを出しました。
──思い描いていた通りのアルバムになりましたか?
マツキ なったと思いますよ。デモがけっこう自分の中で満足いってたんで、少なくともデモを超えなくてはっていうことで頭がパンパンだったんですけど。デモよりはいいよね、少なくとも俺が歌ってないから(笑)。
コヤマ そこは大きな違いです(笑)。
40超えてまだまだドキドキさせてくれるロックの先輩
──よく考えたら、95年に結成だからそろそろ20年選手に近付きつつあるんですね。でもスクービーは多少のブレはあっても、根本は揺るがないなっていうのをすごく感じるんですよ。多少踏み外したとしても修正が効くぐらいの力はあるだろうなと。
マツキ いやいやいや。基本的には危機感を抱いてますよ、常に。いつも最悪の状況を考えてます、打たれ弱いバンドなんで。
コヤマ そうですね。まあやるかやらないかで、(自分たちは)やってるってことだと思いますけど。それだけのことというか。やらなかったら終わるしっていう、それぐらいの考え方ですけどね。
──そもそも「当てたい」願望ってありますか?
マツキ でも「当たりゃいいな」ぐらいでしょうね。まあ当てたいですけど、当たんねえだろうなと思ってますし(笑)。こういう音楽だと。こうすればもっと売れるんじゃないかっていうことは考えないわけじゃないけれども、それだけになっちゃうとつまんないから。そういうことも一応意識はしつつも、どれだけみんなで楽しくやれるかとか、どうやったらお客さんがもっと楽しんでくれるかとか、基本的にはそこなんですよね。だから小型ボートしか持ってないのに太平洋を渡ることだけを考えてるわけではないというか。小型ボートをどうやってもうちょっと大きい船にしていこうかっていう、現実的なことをどうするか考えるので必死ですね。
──SCOOBIE DOというバンド、そしてCHAMP RECORDSというレーベルが、印象としてすごく信頼の置ける町工場みたいな感じなんですよね(笑)。こっちとしてはその町工場が大きくなっていくところを見てみたい気持ちもあるわけですが。
マツキ ここんとこ、年上のバンドが元気じゃないですか。僕らの身近なところだと怒髪天とかフラワーカンパニーズとか。その先輩たちもけっこうコンスタントにアルバムを作って出してて、それをじっくり聴くんだけど、いいんですよね。すごくなじむっていうか。突拍子もないことをやってるわけでもないし、すごく狙ってるわけでもないし。自分がいいなって思ったことを愚直にやってるだけなんだろうなっていうふうに聞こえてくるんですよ。そういう、40超えてまだまだロックバンドとしてドキドキさせてくれる感じがすげえいいなと思って。やっぱりライブ観ても説得力あるしね。前フラカンのボーカルの(鈴木)圭介さんとなんかの打ち上げでマンツーマンでしゃべったときに「結局さ、ロックなんてさ、人間力でしかないから」って、ロック真理をつくようなことぽつぽつ言ってて。「結局曲じゃねえんだよ」とかっつって(笑)。
コヤマ 曲じゃない(笑)。
マツキ 「人間だからさ」「ああ、そうっすよね」とか言って。その境地まで行きながらも、曲ができない曲ができないって悩んでるし。でも必死にやってるからこそ、それは絶対音に出てくるし、人の心を打つ要素だと思うんですよね。だから40超えるまでは続けたいなと思いますね、少なくとも。
──若いバンドから見れば、スクービーももはやその“信頼の置けるおじさん”枠に近付きつつありますよね。
マツキ そうですね。アラフォーバンドのお座布団と呼ばれてるんで。
コヤマ 呼ばれてんの?(笑)
マツキ フラカン、怒髪、(The)ピーズ、お座布。
MOBY コレクターズでしょ、一番上にいるの(笑)。
» PV&ライブ情報
収録曲
- 想定外のハプニング
- かんぺきな未完成品
- 顔のない声
- 愛と呼べたら
- ひとつと半分
- 風は吹き抜けた
- 夢のその先へ
- 一粒のしずく
- ハートビート
- 穴
- 悲しみと踊りながら
- もういちどやってみよう
SCOOBIE DO(すくーびーどぅー)
1995年にマツキタイジロウ(G)とコヤマシュウ(Vo)を中心に結成。1996年に現ドラマーのオカモト“MOBY”タクヤ(Dr)が加入し、自主制作カセットなどを販売する。1999年にK.O.G.A. RECORDSから初のシングル「夕焼けのメロディー」をリリース。続いて発表された1stアルバム「Doin’ OurScoobie」で圧倒的な存在感を放つロックバンドとしてその人気を確かなものとする。2001年にナガイケジョー(B)が加入し、現在の編成で活動開始。2007年には自主レーベル「CHAMP RECORDS」を立ち上げ、ライブのブッキングからCD制作、プロモーションまですべてメンバー自ら行っている。2013年5月15日、CHAMP RECORDS通算6枚目となるオリジナルアルバム「かんぺきな未完成品」をリリース。