音楽ナタリー Power Push - シナリオアート

試練を乗り越えて見えた世界

幸せについて考えることがもっとあってもいい

──そこから、どうしていったんですか?

シナリオアート

クミコ 私、泣きすぎて死ぬんちゃうかなってくらい毎日泣いてたので、バンドを辞めるしかないと思ってたんですね。そんな中でみんなが私を極力休ませてくれて、2人は代わりに制作を進めてくれたり、私がやってたプロモーションをコウスケさんがやってくれたり、こんな対応があったんやなって気付けたし、ありがたくて。しかも、ちょうどKANA-BOONとスプリットシングル(「talking / ナナヒツジ」)を出す大事なときやったから。

ヤマシタ その頃、クミコさんの個人的な気持ちを乗せた「ホシドケイ」っていう曲ができて、それをライブで歌えたとき、少し上向きになれたのかなと思います。アンコールのステージに1人で出て、曲前のMCではファンの方に言いづらいことも包み隠さず話してね。

クミコ 何もしたくないしできない状況で、唯一その曲だけ書けたんです。私の現状をただ書けばよかったから。できたときに2人も「すごくいいやん!」って言ってくれたし、個人的なことなのにライブで自分のことのように受け止めてくれる人がいたのはうれしかったですね。

ハヤシコウスケ(G, Vo, Programming)

コウスケ 僕は「自分が音楽で救われたから、誰かのことも絶対に救える」ってずっと信じてて、そういう曲を届けていきたいんですよ。それが表現の原点やのに、一番近い1人すら救えてないのが悔しくて……。

クミコ (コウスケの肩を叩きながら)そんなことないで(笑)。

──でも、そういう思いが「エポックパレード」の歌詞を生んだわけですよね。

コウスケ はい。幸せの価値観があまりにも限定されてしまうからこそ、生きづらくもあるんかなと。幸せについて考えることが普段もっとあってもいいというか、その大きさとかじゃなく、ささやかなことに気付けるスキルみたいなものがあれば、日々が楽しいんじゃないかって、真剣に思って書きました。

ヤマシタ 自信作だから、シングルで出したくなったんです。バンドの今が伝えられると思った。

クミコ 新しいアーティスト写真は私の中ではデビュー当初のイメージに近くて、「これぞ、シナリオアート!」って感じです。

ディズニーランドのパレードを観に行った

──「エポックパレード」って、バンドソングですよね。

コウスケ これまでは架空の世界や自分が主人公じゃない物語を書くことが多かったけど、僕ら自身も物語やなと思ったら表現したくなりました。まず第一に「明るい曲を作ろう」ってのがあったんですよ。それで「明るい曲って、どうやったらできるのか?」「明るいムードで作ってみよう」みたいに考えて、スタジオに入る期間も少し長めに取って、なるべく心に余裕ができるようにして。考えつく「明るい」をいろいろ試して。

ハットリクミコ(Dr, Vo)

クミコ 私、スタジオが苦手なんです。みんなの意見がぶつかったときとか、息詰まってる瞬間とかが耐え切れなくて。だから、ちょっとでもそうなったら「OK、じゃあ休憩! みたいな環境にしよう」って事前に話して。能天気ってことではなく楽しむのが大事なのは、この1年でわかったんで。

ヤマシタ 今回は自分たちから周りを巻き込んで、明るさを表現できたと思いますね。レコーディング前日の夜に、プロデューサーの保本(真吾)さんとディズニーランドのパレードを観に行ったんですよ。「エポックパレード」なので、パレードでみんなが我を忘れるくらいに楽しんでる様子、幸せそうな顔とか含めて、曲にしたくて。そこで買ったキラキラ光る棒をレコーディングでエンジニアさんの前に立てて、「この感じで!」ってね(笑)。

クミコ 今までそんなんしたことないし! 楽しかったなあ。

コウスケ 伊豆で初の合宿レコーディングもしてね。朝早う起きて海見に行くとか、雰囲気からしてよかった。

ニューシングル「エポックパレード」 / 2016年7月6日発売 / Ki/oon Music
初回限定盤 [CD+DVD] / 1500円 / KSCL-2742~3
通常盤 [CD] / 1000円 / KSCL-2744
CD収録曲
  1. エポックパレード
  2. ジンギスカンフー
初回限定盤DVD収録内容
  • Scenario Sessions(シニカルデトックス / ハロウシンパシー / トワノマチ)

シナリオアート ワンマンツアー 2016 [Scene #2] -シンカイヘ-

※終了分は割愛

2016年7月8日(金)
大阪府 BIGCAT
2016年7月14日(木)
東京都 EX THEATER ROPPONGI
シナリオアート
シナリオアート

ハヤシコウスケ(G, Vo, Programming)、ハットリクミコ(Dr, Vo)、ヤマシタタカヒサ(B, Cho)による3人組バンド。2009年に地元滋賀で結成され、2011年より現在の編成に。2012年に行われた「キューン20イヤーズオーディション」で最終ライブ審査の11組に残り、同年12月には関西のコンテスト「eo Music Try 2012」でグランプリを受賞する。2014年1月にミニアルバム「night walking」でKi/oon Musicよりメジャーデビューを果たした。同年9月には2ndミニアルバム「Tokyomelancholy -トウキョウメランコリー-」をリリースし、発売翌日に初のワンマンライブを東京・UNITで開催。2015年6月には初のフルアルバム「Happy Umbrella」を発表し、初の全国ワンマンツアーを行った。同年11月、レーベルメイトのKANA-BOONとのスプリットシングル「talking / ナナヒツジ」をリリース。2016年7月に初のシングル「エポックパレード」を発表した。