SCANDALが3月20日にニューアルバム「LUMINOUS」をリリースする。
前作「MIRROR」から約2年2カ月ぶりに届けられる本作。既発曲「Line of sight」「Vision」「ハイライトの中で僕らずっと」「CANDY」に加え、テレビアニメ「HIGHSPEED Étoile」エンディングテーマの「ファンファーレ」、SCANDALメンバーと旧知の仲であるボーカル・Lacoを有するEOWやRhythmic Toy Worldが提供したナンバーなど、全11曲を通して多彩な音楽性が強くアピールされている。人生の中で直面するさまざまな困難を受け入れつつ、自らが光を放っていく存在になるというバンドの未来を見据えて制作された、まさに光に満ちた「LUMINOUS」について、メンバー全員に話を聞いた。
取材・文 / もりひでゆき撮影 / 小財美香子
SCANDALが光を放っているから
──SCANDALは今年頭にゆっくり休暇を取ったそうですね。
RINA(Dr, Vo) 1カ月まるまるお休みをいただいて。ありがたかった(笑)。
TOMOMI(B, Vo) うん。だいぶリフレッシュできました。
HARUNA(Vo, G) それだけ長いお休みをもらうこと自体、初めてだったからね。たぶん、もうちょっと前の自分たちだったら気兼ねしちゃってたような気がするけど、今回はもうね、思う存分休みました(笑)。
──お休みの間はメンバー同士で会うこともなく?
RINA 基本的にはなかったですね。
MAMI(G, Vo) TOMOMIとパフェ食べてたりはしましたけど。
TOMOMI えへへへ。ちょいちょい会ったりはしたけど、がっつり4人で会って「今後のことを話そう」みたいなことはなく。
HARUNA それだけ長い時間、メンバー同士で会わないのも初だったかも。
TOMOMI コロナ禍で意図せずそういうことはあったけど、ちゃんと自分たちの意志でひと呼吸置こうっていうのは初めてだったからね。すごく新鮮だったし、ほっとした感じはありました。
──アルバムをしっかり完成させてからお休みに入ったそうですね。
RINA そうです。偉いです(笑)。
TOMOMI 昨年末、ホントにギリギリまで作業したんですよ。
HARUNA 休むためにがんばった(笑)。
──本当に素晴らしいアルバムが完成しましたね。心置きなく長期のお休みに入られたのも納得です。「LUMINOUS」というタイトルが本作の内容を象徴していると思いますが、どのようにしてこのワードが出てきたんでしょうか?
RINA 曲が全部できあがってから「タイトルどうしようね?」っていうミーティングをして。前作からの約2年間の気持ちの動きを振り返ってみたら、「今の自分たちはまた新しく明るい世界に行こうとしているよね」という話になったんです。今回のアルバムにはそういう曲が集まっている実感もあったので、それを象徴するワードとして“発光する”という意味を持つ「LUMINOUS」にたどり着きました。
──今のSCANDALは自ら光を放っているのだと。
RINA 未来の自分たちへ希望を込めて選んだ側面もありました。もうどんな道を選んだとしても、それこそ1カ月休むという新しい選択をしたとしても、私たちはもう大丈夫なんだと強く思おうと。何が起こっても未来は明るい、なぜなら自分たちが発光しているからっていう考え方がバンドとして腑に落ちたので、このタイトルを付けることができたんですよね。
──そういった光を感じさせるムードが漂う楽曲が集まったのも、今のSCANDALにとっては自然な流れだったんでしょうね。
MAMI そうですね。コロナ禍でようやく動き出して、前回のアルバム「MIRROR」(2022年1月発表)を作れたけど、まだ光にたどり着けていない自分たちもいて。でも、そこからまた月日が経ったことで、ライブもちゃんとできるようになってきたし、自分たちの心もしっかり前を向けるようになってきたんです。明るい未来を創造したい気持ちをみんな持っていた。だから、新たに生まれた曲たちを聴くと、みんなの言っていることや目指している場所が共通している印象があったんですよね。本当に「LUMINOUS」には、自然とそういう曲が集まっていった感じでした。
HARUNA 同時に2023年は「同一メンバーによる最長活動ロックバンド(女性)」としてのギネス世界記録認定という大きなトピックがあったので、必然的に自分たちのことをものすごく考えながら制作したんですよ。だから今回のアルバムは、これまでと比較して自分たち自身のことを歌った曲がすごく多いような気もします。
RINA 気持ちのグラデーションを表せているような気もするよね。「LUMINOUS」というタイトルではあるけど、明るいだけの曲ばかりでもないし、かと言って真っ暗っていうことでもない。しっかり現実的な部分を受け入れつつ、明るい未来をイメージしているアルバムを作ることができたと思います。
TOMOMI 1曲ずつ噛み砕いて聴いていくと明るい曲ばかりではないのに、全体の印象として明るい作品になったのは、今の自分たちのメンタルが明るい方向を向けている証拠ですからね。本当にいいアルバムを作れた感覚があります。「SCANDALいいじゃん、いい感じじゃん!」って気持ちです(笑)。
──振り返れば「MIRROR」もありのままの気持ちを素直に詰め込んだアルバムでした。もはやSCANDALの創作はそういうスタイルになってきたということですよね。
TOMOMI そうですね。吐き出さずにはいられない、という人生になってきているんだと思います(笑)。
「今だったら大丈夫」な歌詞って多い
──アルバムではMAMIさんが作詞作曲を手がけた「群青pleats」がオープニングを飾っています。ここ最近、クリエイティブ面でのスランプを公言してきたMAMIさんから、これほどまでにさわやかな風を感じさせてくれる前向きな曲が生まれたことにグッときました。
MAMI 実はこの曲、何年も前に録ったボイスメモから引っ張り出してきたんですよ。改めてこの曲を聴いたときに、私はもともと、なんでもないことで気分が上がったり、くだらないことで一生笑っていられるタイプだよなってことに改めて気付いて。曲が作れない……スランプみたいな感覚はまだ残ってはいるんですけど、この曲をきっかけに「そういう時期もあるよね」くらいの気持ちで活動していこう、と思えるようになったというか。
RINA 私はこの曲を聴いた瞬間、すごくいいなと思ったんですよね。生きている中で気持ちに波があるのは誰にとっても当然のこと。その弱さをちゃんと描きつつ、それを噛みしめながら生き抜いていく、自立したカッコいい女性が主人公になっているところにすごく共感できて。SCANDALはストックを掘り起こして録音をすることが今までほとんどなかったんですけど、こういう仕上げ方もいいなって思ったりもしましたね。
TOMOMI もしかすると曲の種を作っていた当時よりも、今のMAMIに似合っている曲になったんじゃないかなって。意図せずとも出すべき時期に出せた気がします。
HARUNA それは確実にあるよね。数年前には世に出せないなって思っていた歌詞だとしても、今だったら大丈夫みたいなことってけっこうあるんですよ。
──「群青pleats」は、サウンド的にもメッセージ的にも1曲目にふさわしい曲だと思います。
RINA サウンドメイク的に王道の魅力を持つ「ファンファーレ」を1曲目にするのもアリだよねって話もあったんですけど、ここはあえてちょっと新しさを感じるサウンドの「群青pleats」を頭に持ってこようと。2年ぶりのアルバムでもあるので、新しさを大事にして曲を並べていきたいなって思ったんですよね。
──イントロから「お!」っていう驚きがありますもんね。
HARUNA そうそう。サブスクで聴いたときに「お!」って思ってもらえる曲を1曲目にするべきだよねって話をしました。
TOMOMI 今のSCANDALのモードが一番わかりやすい曲でもあるしね。
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メンバーのことを考えて泣きながら書いた