「みんな歌えばいいじゃん」

──HARUNAさん、ボーカルレコーディングはいかがでしたか？

HARUNA　最初のデモをもらった段階から、MAMIの頭の中でできあがっているボーカルのイメージがものすごく伝わってきたんですよ。

MAMI　そうそう。特にHARUNAがギターを弾きながら歌う1番の出だしの雰囲気に命を懸けていたところがあって。自分が歌うわけじゃないのに（笑）。「歌う前の息が聴こえる感じで歌ってほしい」とか、レコーディングでも細かく伝えさせてもらい、それを忠実に再現してくれたのがうれしかったです。

HARUNA　歌い方はもちろん、「暗闇の中でピンスポットが当たって歌っている感じ」というイメージをもらったので、そういう光景を想像しながら歌いました。全体的に言うと歌詞が強いし曲もすごくカッコいいから、わりと強い歌い方になりがちなんですけど、でもやっぱり明るさを忘れたくなかったのでサビは笑顔多めに歌いました。

──2コーラス目ではMAMIさんとTOMOMIさんの歌声も聴こえますね。

MAMI　そこは江口さんのアイデアなんです。「みんな歌えるんだし、歌えば？」みたいな感じで冗談っぽく言われて。

TOMOMI　「昔みたいにみんな歌えばいいじゃん」って（笑）。

MAMI　結果、2Aでは私がメインのメロを、TOMOMIがオクターブ上のコーラスを歌うことになりました。これがね、演奏しながら歌うのがめっちゃ難しいんですよ！ ライブでは目を閉じて無の状態でやってる（笑）。

TOMOMI　歌のリズムと演奏のリズムが違うからね。まさかあそこで歌うことになるとはっていう（笑）。

MAMI　でも、楽曲としていいフックになったとは思います。ちなみにミュージックビデオの撮影では、この2Aの部分だけを5、6時間くらい撮りましたね（笑）。シーンを変えながら何パターンも撮っていって。

TOMOMI　監督もたぶん「ここがポイントだな」と思ってくれたんでしょうね。

MAMI　うん。今までになかったような構図で、いろんなアイテムを使うシーンを撮影できたので、すごく面白かったです。

──この流れでMVの話も聞きましょうか。暗闇から始まり、サビで一気に明るくなる流れは楽曲のメッセージをよりリアルに伝えてくれています。バンドの演奏がメインですが、そこにインサートされる映像がすごく凝っているのも印象的です。

MAMI　いいときも悪いときも、どっちも人生におけるハイライトなんだよというポジティブなメッセージを映像でもしっかり表現していただけたのがうれしかったです。水に濡れたり、目隠しされてみたり、布に巻かれてもがいてみたり、いろいろやってます（笑）。

RINA　監督さんとはめちゃくちゃ話し合って内容を詰めていったんですよ。シンプルで強いMVにしたいという私たちの思いを汲み取っていただきつつ、その中に覚悟を決めた強さとか孤独感とか、ギリギリで戦ってる感もちゃんと込めていただけて。すごく前向きな感情を抱いてもらえる映像になったと思います。

──ところどころに枯れた花が出てきて、そこにキレイな蝶が舞っているシーンもありますよね。どんなに過酷な状況であっても華麗に舞い続けるSCANDALの存在を、そこに重ね合わせながら見たりもしたんですけど。

RINA　監督にもそういう意図があったのかもしれないですね。あのシーンは買ってきた生花をその場でドライヤーで枯らして。そこにCGであとから蝶を飛ばしてもらいました。

──水に濡れるシーンの撮影はどうでした？

TOMOMI　下にビニールプールを置いて、その中に入って上からシャワーで水をかけてもらうんですけど、それがめっちゃ大変で。

RINA　その水がね、ちょっと息ができなくなるくらい冷たくて。「ちょっと一瞬、待ってください」とか言いながら（笑）。

MAMI　シャワーっていうか、ホースでかけられてるくらいの水の量だったもんね。

HARUNA　1人ずつ順番に撮影したんですけど、みんな「ひいいいい、冷たいいい」って言いながらびしょ濡れで戻ってくるっていう（笑）。

──そこで見せるクールな表情がいいですよね。

TOMOMI　水のせいで勝手に目が細くなった結果ですけどね（笑）。うまく撮れてるか不安だったんですけど、楽しい撮影でした。

RINA　私たちは定期的にMVで水に濡れるねっていう話もしてたよね（笑）。

──椅子に腰かけていた4人が1人ずつ立ち上がって歩き出すシーンで終わるのもまた感動的で。

RINA　ありがとうございます。いろんなことを経て、またみんなで次のステージに向かうというイメージのエンディングです。本当に素敵な仕上がりになったので、ぜひみんなに観てもらいたいですね。

生き方が下手な人に刺さるTOMOMI節

──そして、シングルのカップリングにはTOMOMIさんが作詞作曲を手がけた「CANDY」も収録されています。

TOMOMI　こちらは「ハイライトの中で僕らずっと」とは全然違ったサウンドになっていて。シングルとして面白いものができたんじゃないかなと思っています。この曲の歌詞の破片はけっこう前からあったんですけど、ちゃんと形にしたのは「ハイライトの中で僕らずっと」と同じくらいの時期かな。私の周りには生きることが下手な人が多いんですよ。不器用だったり、優しすぎたり、感情的になりがちだったり、理由はいろいろあると思うんですけど、私はそのすべてを理解できると思うんです。だからこの曲は1人ぼっちみたいに生きてる人の背中を押せたらなと思って書きました。考えすぎて苦しみ、自己犠牲をしながら生きている人に向けた応援歌ですね。

──タイトルにもなっている“CANDY”というフレーズにはどんな意味を込めたんですか？

TOMOMI　最初に思い浮かんだのが“CANDY”というワードで、そこから歌詞を広げていったんです。意味としては……苦いところばかり見ないで、甘いところも忘れないでねっていうことですね（笑）。

──アレンジはおなじみのシライシ紗トリさんです。

TOMOMI　私の弾き語りのデモを元に、いろいろリファレンス曲を上げながら、紗トリさんと細かくやりとりしていきました。バンド初期の頃からご一緒してるので、「音数がすごく少ないところから、急にボリュームをバーンって上げてほしいんです」とか、私の雑なニュアンスの要望を全部汲み取ってくれて（笑）。すごく素敵な仕上がりにしてくださいました。

──温かく優しい曲ではありますけど、今おっしゃったイメージ通り、音のボリュームがすごいですよね。音に溺れる感覚になるというか。

TOMOMI　えへへへ。音はエグい感じにしてほしかったんですよね（笑）。

MAMI　そこらへんも含めて、めちゃくちゃTOMOMI節を感じる曲ですよね。歌詞に関しても、TOMOMIの性格そのものが表れていると思うし。

RINA　私自身、生き方が下手だと思うことが多々あるタイプなので、すごく刺さりましたね。いろんなツラい瞬間を目の当たりにしたとき、こういう音楽、こういう言葉があればきっと救われて、あったかい気持ちになるし、1人だけど1人じゃないって思えるはず。自分のバンドでこんなにも優しい曲を作れたことが本当にうれしいです。

HARUNA　実は私も生き方が下手な人に該当すると思っていて（笑）。だからRINAと同様、この曲を聴いてすごくグサッときたし、同時にすごく救われたんです。ただ優しいだけの言い方をしていないところもすごくいいし。レコーディングでは自分自身に歌ってあげるような気持ちもありましたね。優しいだけだとつまらないし、でも強めに歌ってTOMOMIが込めた思いを押し付けるのも違うと思ったので、歌のニュアンスはいい塩梅をいろいろ探り、今の形になりました。

──楽器のレコーディングはいかがでしたか？

RINA　ドラムから順番に重ねていったんですけど、2、3回叩いただけで仕上げた感じでしたね。それも潔くてよかったなと。気持ちを込めて、シンプルにいい音で録ることにこだわった感じかな。お気に入りです。ただ一番手はかなり緊張感がありますけどね（笑）。

TOMOMI　うん。不安になるくらい無音だから（笑）。

MAMI　だからサビに入るまでは、リズムをみんなで合わせるのが意外と難しくって。みんながそれぞれのことをうかがってるような、バンドらしい緊張感がありました。

TOMOMI　レコーディングでは全員クリックを聴きながら演奏していたんですけど、ライブだとクリックなしですからね。どうなるか楽しみ。めっちゃ集中しないと（笑）。

MAMI　バシッと決まったらカッコいいからね。

──現段階ではデビュー15周年記念ツアー「SCANDAL TOUR 2023『感謝祭 vol.2』」が東京公演を残すのみ。そして12月24日には恒例の「BEST★Xmas」も控えています。そのうえで、そろそろ来年の動きも視野に入れている感じですか？

HARUNA　もちろん！ いろいろ考えてますよ。

TOMOMI　SCANDALは全然止まらないです。

RINA　偉いなあ。最近はメンバー同士でお互いを褒め合いながら過ごしてるんですよ（笑）。

HARUNA　今日もこのあと、来年に向けたミーティングですから。

MAMI　ホントに偉いよねえ（笑）。