音楽ってズルい
──作詞はRINAさんです。「機動戦士ガンダム」の世界観にしっかり寄り添いつつ、同時に聴き手の心に訴えかけてくる素敵な歌詞になっていますね。
RINA とにかく全方面の期待に応えられる内容にしようと思いました(笑)。私自身は子供の頃に熱心にガンダムを観てきたタイプではなかったので、改めてこの作品の世界観について先方の担当者にいろいろ伺ったんですよ。そのときに、戦いのお話ではあるけど双方の正義がぶつかっているだけで、絶対的な悪者はいないというお話を聞いて。そこに私はすごく共感したんですよね。すべてにおいて必ずしも答えを出す必要はないし、正解も不正解もなく、それぞれのあり方でいい。このマインドは自分たちが音楽を作るとき、ステージに立って表現するときに一番大切にしていることでもあるんです。なので、作品の世界観に寄り添った宇宙の雰囲気を感じさせる言葉を織り込みながら、SCANDALとしての今の気持ちもふんだんに入れていきました。
──どんな困難を前にしても、逃げることなく立ち向かっていく。この歌詞に込められたアティチュードはSCANDALというバンドを象徴していますよね。
RINA これは昨年のワールドツアーを経験していなかったら生まれなかった感情だなと個人的には思っています。何度もヒリヒリする決断を強いられながら巡った旅だったし、その中で、私たちがこれからどう生きていくべきなのかをめちゃくちゃ考えさせられて。北米ツアー後、フェスに出るために日本に帰ってきたら、そのフェスが悪天候で中止になってしまうこともあり、本当に何もかもがうまくかない時期がありました。でも、その後のパリ公演は自分たちにとって本当にスペシャルなライブになったんです。ふとあきらめそうになる瞬間に、「音楽を手放しちゃダメだ!」と言わんばかりに気持ちに火を点けてくれる日がポツンとやってくることもある。音楽ってズルいなって思うんですけど(笑)、でもやっぱり私たちにとってはバンドが一番大事だし、それ以外に好きなものなんてないなって改めて思ったんですよね。「逃げてもいいんだよ」と優しくエスコートする励まし方もあるとは思うんだけど、逃げないからこそ出会える景色、なれる自分というのも絶対にあるんですよ。今回は後者のアプローチで書いていくことで、自分たちにも突き刺さる歌詞になったと思います。
ここまでリズム隊の音が大きい曲は初めて
──HARUNAさん、ボーカルのレコーディングはいかがでしたか?
HARUNA さっきMAMIも言ってくれましたけど、自分の声がこういう曲にハマるんだなっていうのは再確認できました。以前リリースした「A.M.D.K.J.」もそうでしたけど、この手のハードなロックサウンドはファンの方からの反応も大きいんですよ。やっぱり自分たちの強みではあるんでしょうね。「SCANDALと言えば」というサウンドはこれだなっていう。
──歌のニュアンスや表情も迷うことはなかったですか。
HARUNA そうですね。もう少し強めに歌ったテイクもあったんですけど、それだとちょっとライブ感がありすぎるということで少し抑えたりとか。多少の調整はありましたけど、基本的には伸び伸び歌いました。もちろんね、ライブでは音源以上に振り切れたボーカルになっちゃうと思いますが(笑)。
──シングルにはもう1曲、サウンドアプローチをガラッと変えた「Vision」も収録されています。この振り幅もまたSCANDALの面白さですよね。作詞・作曲はRINAさんが手がけています。
RINA 今を大事にするためには、未来を見続けることが必要なんだという思いを書きました。先に対してのワクワクする気持ちがあるからこそ今をがんばれるっていう。自分的には“セルフラブ曲”のようなイメージもありますね。成功するかどうかわからないけど、新しい姿になれることを信じて真っ暗な場所に飛び込んでいける自分を、自分自身で愛し、肯定していきたいなと思うので。ライブでやったときに、みんなが自由にノれる楽しい曲になったらいいなと思いながら作りましたね。
MAMI すごくRINAちゃんっぽい曲だなと思いました。デモの段階でわりとイメージは固まっていたんですけど、プリプロのときに少しコードやメロディを変えたところもありましたね。みんなでスタジオに入って、一緒に形にしていった感じです。ギターに関して言うと、自分の得意なカッティングを盛り込んでます。「Line of sight」のギターもわりと自分の得意な部分が出ているので、今回はけっこう得意系なシングルになりました(笑)。
──イントロの、ちょっとトリッキーな単音フレーズもSCANDALっぽいなと思いました。
MAMI そこらへんはアレンジャーの(西川)響さんが考えてくれた部分でした。今、得意系って言ったばかりですけど、私は単音のフレーズを考えるのがけっこう苦手で(笑)。自分なりに考えたものをもとにアレンジしていただきました。響さんはベーシストなので、ギターフレーズもベースで制作するんですよ。それによって、ギターだと思いつかないような面白いフレーズがどんどん出てくる。「わ、こういう感じか!」と新しい発見もあるのが楽しいですね。
──この曲はリズム隊の音がかなり効いてますよね。とくにベースの音が大きく存在感があって、だからこそ自然とカラダが動く曲になっているんだと思いました。
TOMOMI MAMIちゃんが言ったように響さんはベーシストなので、ベースの音がめっちゃ好きなんですよ(笑)。その結果、ベースの音がものすごく大きくなったという。ミックスの段階でちょっとビックリしたんですけど、でもこういうのもアリかなと思って。最後の最後に「今回ベースの音がかなり大きいですね」と伝えたら、「これでも4デシ下げたんだけどね」って言ってました(笑)。ドラムも含め、ここまでリズム隊の音が極端に大きい曲は初めてなので、みんなに聴いてもらうのが楽しみです。
RINA もともとベースが目立つ曲にしたいという話をレコーディングの段階からしてましたからね。新鮮ですごくカッコいい仕上がりになったと思います。
──で、ボーカルですが……これHARUNAさんが歌ってます、よね?
HARUNA 歌ってます。でもいつもと全然違いますよね(笑)、今回はRINAのデモのボーカルにめちゃくちゃ寄せて歌ったんですよ。自分でも、今までいろいろやってきたボーカルに関する試行錯誤が生きているなと思います(笑)。
RINA めっちゃカッコいいなと思いました。自分の仮歌をブラッシュアップした素敵なボーカルにしてくれたのがすごくうれしかったです。
HARUNA RINAの作る曲はいつもメロがすごく面白いんですよね。自分じゃ絶対に思いつかないメロを作ってくれる。だからこそ歌う難しさもあるんですけど、そこがSCANDALというバンドの楽しさ、面白さにつながっているんじゃないかな。「Line of sight」との対比も含め、シングルだと楽曲のバリエーションが見せられるのがいいですよね。
──ポップな側面を見せるナンバーだと思いますけど、最後にひと暴れして終わるのもSCANDALっぽくていいですよね。
MAMI ふふふふ。
RINA 私の曲ってどうしてもオルタナになっちゃうんですよねぇ。めっちゃポップにしようと意識しながら書いたんですけど、結果こういう曲になりました(笑)。
受理されればギネスに載る
──ライブハウスツアー「unlimited UTOPIA」を経て、ここからのSCANDALはどんな動きを見せてくれますか?
HARUNA 8月で結成17周年、10月にはメジャーデビュー15周年を迎えるんですけど、今年はまず1つ狙いたいことがあって……。
RINA ガールズバンドの活動最長のギネス記録を獲りたいんですよ。
TOMOMI メンバーチェンジ、活動休止期間なしで17年っていうのは、どうやら最長みたいなので。
MAMI 自分たちで申請して、受理されればギネスに載ることになるっていう。
──へえ! すごいですね。
TOMOMI なんかウケますよね(笑)。別にそういうことを目指してやってきたわけではないですけど、17年やったからこそ理解してもらえたこともたくさんあると思うので、何事も続けることは大事だなと。
HARUNA ギネス記録を無事に獲れることを願いつつ、それ以外にも考えていることはたくさんあるので。
RINA うん。いろいろうまくいくといいよね。
MAMI ぜひ楽しみにしていてください!
プロフィール
SCANDAL(スキャンダル)
HARUNA(Vo, G)、MAMI(G, Vo)、TOMOMI(B, Vo)、RINA(Dr, Vo)からなる4人組ガールズバンド。2006年に大阪・京橋で結成され、2008年にシングル「DOLL」でメジャーデビューを果たす。翌2009年にはシングル「少女S」で日本レコード大賞新人賞受賞。2015年には初の単独ワールドツアーを成功させ、その様子に密着したドキュメンタリー映画「SCANDAL Documentary film HELLO WORLD」が同年公開された。2018年にプライベートレーベル「her」を立ち上げ、レーベル第1弾作品としてシングル「マスターピース / まばたき」をリリースし、2022年1月には10thアルバム「MIRROR」を発表。同年3月から9月にかけて日本、北米、ヨーロッパを回るワールドツアー「SCANDAL WORLD TOUR 2022 "MIRROR"」を開催した。2023年5月、ニューシングル「Line of sight」を発表。
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