SCANDALがニューシングル「Line of sight」をリリースした。
3月15日より先行配信されていた表題曲「Line of sight」は、現在稼働中のアーケードカードゲーム「機動戦士ガンダム アーセナルベース LINXTAGE」の主題歌として書き下ろされた疾走感あふれる骨太なロックチューン。またシングルにはRINA(Dr)が作詞作曲した新曲「Vision」も収録されている。
音楽ナタリーでは今年10月でメジャーデビュー15周年を迎えるSCANDALにインタビュー。アルバム「MIRROR」を携えて駆け抜けた2022年の振り返りから、新作「Line of sight」の制作エピソード、そして大きな企みが進行中の今後のことまでじっくりと話を聞いた。
取材・文 / もりひでゆき撮影 / 須田卓馬
どんな状況でも誰ひとりあきらめなかった
──昨年1月リリースのアルバム「MIRROR」以降のSCANDALは、日本国内と北米、ヨーロッパを巡るツアー「SCANDAL WORLD TOUR 2022 "MIRROR"」や数々のフェス出演、対バンなど、ライブ三昧の日々を過ごしていました。そんな2022年はどんな1年でしたか?
HARUNA(Vo, G) 「MIRROR」のリリースで大きく動き出せた1年だったなと思いつつも、まだまだコロナの影響が大きかったので、歩みとしてはじっくりゆっくりだったような気がします。今はすごく勢いを感じながら活動できているので、そのための準備期間というか、少しずつ体を慣らしていく時間でもあったんじゃないかな。とはいえ、ひさしぶりのワールドツアーで海外のファンの方にも会えましたし、とても幸せな1年でした。
TOMOMI(B, Vo) ライブを通して「MIRROR」というアルバムをしっかり伝えることができたのがうれしかったですね。海外ツアーでは途中でコロナに罹ってしまい、中止になった公演もあったから心残りはありますけど、改めて“動き出した”実感もあったのでひと安心でした(笑)。
MAMI(G, Vo) 活動していく中で、少しずつ世の中の状況がよくなっていく兆しを感じることができていたので、「あ、先のことを考えていいのかも」って思えるようになったのは大きかったですね。そういう意味ではすごく希望を持てた1年でした。その思いが「unlimited UTOPIA」(今年4月から開催されていた全7公演のライブハウスツアー)というツアータイトルにつながったところもありましたし。
RINA(Dr, Vo) 正直、くじけそうになってしまう瞬間は何度もあったんですよ。でも、そのたびにメンバー4人とスタッフチームのみんなで支え合いながらがんばれたから1年を乗り切れました。どんな状況であっても誰ひとりあきらめなかったからこそ耐えられた1年でもあったと思います。この経験をパワーに変えて、また新たな扉を自分たちで開いていけるはず。今はそんな感覚ですね。
──ライブ活動と並行して、楽曲制作も積極的に行われていたようですね。
RINA そうですね。やっぱりバンドを前進させるには、新しい曲を作るしかないなと思っているので。今の場所にずっと留まってるのはつらいことでもあるので、前に進むためにずっとトライし続けている感じです。スピーディではないですけど、曲ができ次第プリプロ作業をして、みたいな感じで動いてはいますね。その中でタイアップのオファーをいただいて作ったのが「Line of sight」です。
「曲を作るときって何から始めたらいいんだっけ?」
──「Line of sight」はアーケードカードゲーム「機動戦士ガンダム アーセナルベース LINXTAGE」の主題歌として書き下ろされたものですね。制作時期はいつ頃でしたか?
HARUNA 去年の10月くらいだよね。
RINA うん。SiMと対バンしたZepp Nagoyaの楽屋でタイアップのお話を聞いたんですよ。「1カ月後に完成させてください」というお話だったので、そこに合わせて集中して作り始めた感じでした。
──制作にあたっては先方のスタッフとの話し合いも行われたとか。
RINA はい。「アーセナルベース」のクリエイティブチームの方は自分たちと同年代で、SCANDALのことも昔から知ってくれていたみたいで。「SCANDALのロックチューンをゲームのシーンにはめたいんです」という熱い思いを伝えてくださったんです。求めてくださったロックなテイストは自分たちの強みが出せるものでもあるし、「2023年は勢いのある曲で始まりたい」と思っていた私たちの思いともうまくマッチして、すごくいいムードで制作に取りかかった感じでした。
──作曲はMAMIさんが手がけられています。
MAMI はい。以前にお話ししたこともあるとは思うんですけど、ここ数年の自分は攻めの姿勢を見せる曲がなかなか作れなくなってしまっていたんですよ。コロナ禍でライブができない時期が続いたことで、気持ちをどこに向けて楽曲を作っていけばいいのかがわからなくなってしまったというか。そんな状態がずっと続いていたので、今回も「ロックな曲を作るときって何から始めたらいいんだっけ?」みたいな感じだったんですけど、メンバーと話し合いをする中で「ギターリフがしっかりある曲がいいよね」という流れになりました。そこからとりあえずリフを作れるだけ作って、どれがいいかをメンバーに選んでもらうことにしたんです。で、リフが決まったら今度はサビのメロディも何個か送って、といったことを繰り返しながら作っていきました。
──メンバーにチョイスしてもらいながら、パーツを1つひとつ積み上げて1曲にしていったイメージですか。
MAMI そうですね。今まではフルでアレンジしたデモを作ったうえでみんなに聴いてもらうことが多かったので、今回のような作り方はほぼ初めてに近い形でした。
RINA MAMIの“そういうモード”は理解して受け止めていたので、バンドとしてはどのやり方でも全然いいよねっていう感じでしたけどね。しかもMAMIから出てくるリフやメロディはどれもめちゃくちゃカッコよくて、聴いていてすごくドキドキさせてもらえるものばかりだったので、いつもと違うやり方ではあったけどまったく不安はなかったです。むしろ絶対にカッコいい曲ができると信じていたので、MAMIからアイデアが出てくるのを楽しみに待っている感じでした。
HARUNA 弾き語りの状態でいろんなパターンのフレーズを送ってもらったんですけど、メンバーの中で「いいね」と思えるものはほぼほぼ一致してたしね。
TOMOMI うん。決めるのはすごく早かった。
MAMI 今回のような作り方はすごく新鮮だったし、楽曲としてちゃんと理想の形になったので、1人でずっと悩んでなくてもいいんだなって改めて思いました(笑)。私の場合、いろんな音やフレーズをわりとなんでもかんでも詰め込んで盛る癖があるんですけど、今回はみんなの意見によってうまくバランスを取ってもらえた感覚もありますね。シンプルだけど、すごく勢いのあるロックチューンに仕上げられたと思います。
──かなりヘビーなサウンドですよね。音圧もすごいですし。
TOMOMI ベースもかなり歪んでますからね。最近はあんまりそういうアプローチをしていなかったので新鮮でした。
MAMI レコーディング前に「ちょっとベースは時間かかるかも」みたいなことを言いながら難しい顔をしてたんですけど、実際に始まっちゃえば全然そんなことはなくて。さすがのプレイでしたね(笑)。
TOMOMI あははは。リズムをところどころ変えたりとか、自分なりに試行錯誤していたから時間がかかっちゃうかもなって思ってたんですけど、案外スムーズに進みました。こういうタイプの曲は弾き慣れてるし、やっぱり得意なんだと思います。ゲームの戦闘シーンという一番盛り上がるところで流れる曲とのことだったので、それにふさわしい疾走感のあるロックチューンが作れたことにすごく満足してます。
MAMI HARUちゃんの声にもすごく合ってるし。
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