さユりとMY FIRST STORYのコラボ曲「レイメイ」が12月5日にシングルとしてリリースされる。表題曲「レイメイ」はTOKYO MXほかにて放送中のテレビアニメ「ゴールデンカムイ」第二期のオープニングテーマ。作詞はさユりとHiro(Vo)、作曲はさユりとSho、アレンジはMY FIRST STORYが手がけている。
本作の発売を記念して、音楽ナタリーではさユり、Hiro、テレビアニメ「ゴールデンカムイ」の難波日登志監督による鼎談を実施。「冒険をしている感覚だった」という「レイメイ」の制作エピソードや、同曲がアニメにもたらす効果などを話し合ってもらった。
取材・文 / 須藤輝 撮影 / 後藤壮太郎
さユりとマイファスの曲を別々に売るんじゃなくて?
──さユりさんは今年8月の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018」で、MY FIRST STORYのステージまで行ってHiroさんと一緒に「レイメイ」を初披露されましたね。それ以前にも、昨年の秋に行われたマイファスのツーマンツアー「"MMA" TOUR」の広島公演で対バンしてらっしゃいますが、お二人はそのときが初対面ですか?
さユり ライブで競演したという意味では、その去年のツーマンに呼んでもらったときが初めてです。厳密に言うと競演するにあたってその夏に私のワンマンライブを……。
Hiro(MY FIRST STORY) 大阪のBIG CATでやってたやつをね。
さユり そう、Hiroくんが観に来てくれて。そこで「はじめまして」って挨拶をしました。
Hiro 僕は普通にファンとしてさユりの音楽が好きだったんですけど、ライブでも「2.5次元」っていう、僕らでは考えられないコンセプチュアルなステージを見せてくれて。そのとき僕らがやろうとしてたツーマンツアーって「自分たちとは毛色が違うけどカッコいい音楽をやってる人と対バンする」というものだったんです。だからさユりに声をかけさせてもらったし、広島で競演したあとも、ライブだけじゃなくて一緒に曲を作ったりできたらいいなと密かに思ってました。
さユり 私にとっては、マイファスはすごく遠い存在でした。私が路上で弾き語りしてた頃から、大きいステージでお客さんを魅了するロックバンドだったので、自分と交わることがあるとは微塵も想像してなかったですね。
Hiro いやいや。僕なんて、さユりみたいに1人で路上やステージに立つ勇気はないですから。だからバンドやってるんですけど。ソロだと、いいことも悪いことも全部自分のせいになってしまうじゃないですか。その責任を負いる覚悟を決めてるっていう時点で尊敬します。
──難波監督は、お二人についてどのような印象を持たれていました?
難波日登志 さユりさんのことは、「ミカヅキ」(アニメ「乱歩奇譚 Game of Laplace」エンディングテーマ)をはじめとする「ノイタミナ」枠のアニメの主題歌を通じて知りまして。歌声もスタイルも本当に個性的で素敵だし、僕もアニメ業界に身を置いていますから、どこかで関われる機会があるといいなとは常々思っていましたね。一方、マイファスさんは、まさかやっていただけるとは……。
Hiro いやいやいや(笑)。
難波 もう、独自の世界観を持ったロックバンドというイメージだったので、正直、アニメを通してご一緒できるとは想像もしてなくて。なので、最初にアニメ「ゴールデンカムイ」のプロデューサーからオープニングテーマの話を受けたとき「いいんですか?」って聞いたくらいで。「オープニングとエンディングで別々に売るんじゃなくて?」って。
一同 ははは(笑)。
難波 それぐらい贅沢な組み合わせなので、びっくりしつつ、ありがたく思いました。
「ゴールデンカムイ」の主人公はみんな人間
──さユりさんとHiroさんは、コラボが決まった際どう思いました?
さユり まず想像ができなくて。私自身、今まで楽曲提供していただくという形で自分以外の方とご一緒する機会はありましたけど、誰かと一緒に曲を作ったことはなかったんです。だからそこに対する不安が先に立ったんですけど、でも対バンしたときの記憶や、そこで込み上げた思いが心に残っていたので、「面白そう」って思いました。
Hiro 僕にとってはさっき「一緒に曲を作ったりできたらいいなと思ってたと言いましたけど、それが実現した瞬間で、しかも「え? 『ゴールデンカムイ』のオープニング?」みたいな。「ゴールデンカムイ」は原作も好きで読んでましたし、不安よりも「うわ、どうしよう?」っていう戸惑いのほうが大きかったですね。でも、今回はわりとさユり主導と言うか、彼女が描いてくれた全体像に僕は乗っかるだけでいい……って言うと言葉が悪いけど、むしろ「さユりが一緒なら」みたいな安心感がありました。
──ちなみにお二人は「ゴールデンカムイ」という作品のどこに惹かれます?
Hiro 1つは、リアリティですね。北海道でアイヌから奪われた金塊を探すっていうある種の夢物語でありながら、嘘っぽくない絶妙なラインを突いてくるじゃないですか。しかも登場人物全員のキャラが立っていて、例えば白石(由竹)みたいなキャラクターがいることによって、シリアスとギャグを自由に行き来できると言うか。あと、もともと僕は仲間が集まってくるマンガが好きなんですよ。僕、あんまり友達いないんで。
一同 ええー(笑)。
さユり 「ゴールデンカムイ」は、私にとってはリアルではない……と言うと語弊があるかもしれないんですけど、少なくとも私とは住んでる世界が違う人たちの物語なんですね。それなのに、ふとした場面で共感してしまう。例えば主人公の杉元(佐一)は、一見すると私とはまったく共通点がなさそうなんです。けど、自分の過去を思い出したときに寂しそうな横顔を見せたりして。そうやって弱い一面が垣間見られたときに「ああ、杉元も私と同じなんだ」って思うし、そういう人間の原動力が悲しみとか過去に由来するものを感じたときにグッときます。
Hiro やっぱり、登場人物がみんな“人間”なんですよね。中には人間離れした人もいますけど、別に特殊能力が使えるわけでもないし、超人でもない。しかも、杉元たちとは敵対関係にあるキャラクターたちにもそれぞれ道理とか信念みたいなものがあるから、敵味方関係なく感情移入しちゃうんですよ。
難波 「ゴールデンカムイ」は明治時代の北海道を舞台にした、当時、本当にそこにいたかもしれない人たちの物語なんですよね。だから今Hiroさんが言ったように、超人が出てきたり能力バトルが繰り広げられたりするわけではなくて、銃弾が当たれば痛いし死ぬかもしれない。そうやって死線をくぐりながら目的に向かっている人間たちの心情を、お二人は汲んでくださってますよね。それは、日露戦争帰りのひいおじいさんを持ち、北海道出身である原作者の野田サトル先生が、ご自身にとって地に足のついた世界観を描かれていることも大きく関係していると思います。
Hiro 明治時代っていうのもポイントですよね。もしこれが江戸時代の話だったらたぶんファンタジーとして捉えちゃうんですけど、明治ならまだ現代と地続きに思えるんですよ。履歴書の生年月日の記入欄とかも、年号にマルつけるところに「明治」ってあったりするじゃないですか。
難波 明治が終わったのは1912年ですから、まだご存命の明治生まれの方もいらっしゃるでしょうし。アイヌの風俗にしても、アイヌ語の単語から何から1つずつ調べ上げて描かれていて。もう情報量が多すぎて、ここだけの話、アニメ化するのは大変なんですよ(笑)。
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初めてメロディ先行で曲を作った
- さユり×MY FIRST STORY「レイメイ」
- 2018年12月5日発売 / アリオラジャパン
-
初回生産限定盤 [CD+DVD]
1800円 / BVCL-923~4
- CD収録曲
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- レイメイ / さユり×MY FIRST STORY
- よだかの詩 / さユり
- CHiLD-error- さユり弾き語りver. / さユり
- 初回限定DVD収録内容
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- レイメイ MV(フルレングスver.)
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期間生産限定盤 [CD+DVD]
1599円 / BVCL-926~7
- CD収録曲
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- レイメイ / さユり×MY FIRST STORY
- 月と花束 -弾き語りver.- / さユり
- レイメイ-TVアニメ『ゴールデンカムイ』OP ver.- / さユり×MY FIRST STORY
- 初回生産限定盤DVD収録内容
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- TVアニメ「ゴールデンカムイ」(第二期)-ノンクレジットOP映像-
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通常盤 [CD]
1000円 / BVCL-925
- 収録曲
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- レイメイ / さユり×MY FIRST STORY
- ミカヅキ -Hiro(MY FIRST STORY)Vo ver.- / Hiro(MY FIRST STORY)
- TVアニメ「ゴールデンカムイ」第二期放送・配信情報
- TOKYO MX:毎週月曜23:00~
読売テレビ:毎週月曜25:59~
札幌テレビ:毎週月曜25:44~
BS11:毎週月曜25:00~
時代劇専門チャンネル:毎週金曜26:00~
FOD(見放題独占):毎週月曜23:00配信 - TVアニメ「ゴールデンカムイ」第一期(第一話~第十二話)放送・配信情報
- 南海放送:毎週木曜26:09~
中国放送:毎週火曜25:45~
FOD(見放題独占):全話配信中※第一話は常時無料配信中
©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会
- 公演情報
MY FIRST STORY S・S・S TOUR FINAL at Yokohama Arena -
- 2019年1月11日(金) 神奈川県 横浜アリーナ
- 2019年1月12日(土) 神奈川県 横浜アリーナ
- さユり
- 福岡県出身、1996年生まれの“2.5次元パラレルシンガーソングライター”。人とは違う感性と価値観を持つことにコンプレックスと優越感を抱き、生きることへの息苦しさを感じる自分を“酸欠少女”と表現している。中学生の頃に地元でライブ活動をスタートさせ、2013年に上京。2015年3月には東京・TSUTAYA O-nestでのワンマンライブを成功に収める。同年8月にフジテレビ系「ノイタミナ」枠のアニメ「乱歩奇譚 Game of Laplace」のエンディングテーマ「ミカヅキ」でメジャーデビュー。2016年2月に2ndシングル「それは小さな光のような」をリリースした。同年6月に配信シングル「るーららるーらーるららるーらー」を配信限定で発表し、iTunesトップアルバム総合チャートで1位を獲得。注目度の高まる中、12月に野田洋次郎(RADWIMPS、illion)楽曲提供およびプロデュースによる「フラレガイガール」をリリース。2017年3月に発表したシングル「平行線」はフジテレビ「ノイタミナ」枠のアニメ「クズの本懐」およびドラマ「クズの本懐」のエンディングテーマに使用され、大きな話題を集めた。5月に1stアルバム「ミカヅキの航海」を、2018年2月にアニメ「Fate/EXTRA Last Encore」のエンディングテーマ「月と花束」を発売。12月にテレビアニメ「ゴールデンカムイ」第二期のオープニングテーマとしてMY FIRST STORYのコラボ曲「レイメイ」を発表する。
- さユり「レイメイ」特設サイト
- 酸欠少女さユり公式サイト
- さユり | ソニーミュージック オフィシャルサイト
- 〔 酸欠少女 〕 さユり (@taltalasuka) | Twitter
- さユりの記事まとめ
- MY FIRST STORY(マイファーストストーリー)
- 2011年夏にHiro(Vo)、Sho(G)、Teru(G)、Nob(B)、Masack(Dr)の5人で結成されたロックバンド。2012年4月にリリースされた1stアルバム「MY FIRST STORY」は2万枚以上を売り上げた。2013年2月には早くも2ndアルバム「THE STORY IS MY LIFE」を発表。その後、ALL TIME LOWのジャパンツアーでのサポートアクトや「PUNKSPRING 2013」への出演、初のCLUB QUATTROツアー全会場即日ソールドアウトと着実にステップアップを重ねる。8月にはナノの2ndライブ「Color my world.」にHiro、Shoがゲスト出演(Hiroは全公演、Shoは大阪公演のみ)した。11月にSWANKY DANK、AIR SWELL、BLUE ENCOUNTとのスプリットアルバム「BONEDS」を、2014年10月にフルアルバム「虚言NEUROSE」をリリース。2015年末をもってSho(G)がライブ活動を休止、2016年3月にはMasackが脱退し、Kid'z(Dr)が加入した。新体制で同年6月にアルバム「ANTITHESE」を発売。6月より47都道府県ワンマンツアー「We're Just Waiting 4 You Tour 2016」をスタートさせ、11月にツアーファイナルとして東京・日本武道館にて初の単独公演を開催した。2017年7月に、タイアップ曲を多数収録したミニアルバム「ALL LEAD TRACKS」をリリース。2017年12月には千葉・幕張メッセ国際展示場9~11ホールにてオーケストラを従えたワンマンライブ「"MMA" TOUR 2017 FINAL ONE MAN SHOW "THE PREMIUM SYMPHONY"」を成功させた。2018年7月にシングル「ACCIDENT」、12月にさユりとのコラボレイトシングル「レイメイ」をリリース。2019年1月には神奈川・横浜アリーナにて2DAYSライブを控える。
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- 難波日登志(ナンバヒトシ)
- アニメーション監督、演出家。「ぼのぼの(1995年版)」「Fate/Grand Order -First Order-」「ゴールデンカムイ」などを手がけた。別名義の三條なみみとしての活動も行っている。