世界に答えを出そうと思って作った「birthday song」
──「ミカヅキの航海」は1曲目の「ミカヅキ」から、14曲目でリード曲の「birthday song」まで、ひと続きのストーリーになっているような印象を受けました。それは先ほどおっしゃった「変化の過程」を表している?
そうですね。まず、私は「ミカヅキ」=欠けている、っていう点でみんなとつながってるって感じているんです。私の歌を聴いてくれてる人は、それぞれに何かしら足りないものを抱えていたり、居場所を探していたり、私と似てる人だと思うから、最初にそのつながりを共有する意味でも「ミカヅキ」は1曲目にすべきだなって。で、「ミカヅキ」は自分に対しての決意を歌った曲なんですけど、「birthday song」は、そんな「ミカヅキ」を歌ってきた自分が、世界に対して答えを出そうと思って10代最後に作った曲なんです。
──それまで内向きだったのが、「birthday song」で外を向くことができた?
はい。このアルバムには、15歳のときに作った「るーららるーらーるららるーらー」から、20歳になって書いた曲まで入ってるんですけど、その中で、10代に別れを告げる「birthday song」の持つ意味は大きくて。自分の10代は、誰かが好き / 嫌いとか、忘れたい / 忘れたくない、進みたい / 進めないみたいな反対の感情に常にとらわれていて、そのどちらにも振り切れないまま、迷いながら行き場を失っていたようなものなんです。
──このまま20歳は迎えられないと。
まだ完全に迷いがなくなったわけではないんですけど、それでも「私はあなたに対してこんなふうに生きたいです」っていう答えを出したのが「birthday song」です。だから自己紹介みたいな曲になってもいるし、そのうえで「あなたはあなたのままでいいんだよ」っていうメッセージを込めました。
──それはアルバム全体のテーマとも重なりますね。
そういう意味でも「birthday song」が大きな柱になっていますし、この曲を目がけてアルバムを作っていきました。
夢に出会えた人の喜びも不安も肯定したい
──アルバムの曲順に沿うと、1曲目「ミカヅキ」と2曲目「平行線」は、共に「弱い自分を肯定し、前に進んでいく」というテーマが通底しています。続く3曲目の「十億年」も、その同一線上にある曲ですよね。
つながってますね。「十億年」はモード学園のCMのために書き下ろした新曲なんですけど(参照:さユり「モード学園」テレビCMソングを書き下ろし)、お話をいただいてから、テーマを見つけるまでにすごく時間がかかりました。「私が歌えることはなんだろう?」って。
──モード学園のCMという点に関して言えば、歌を届ける対象としては現在20歳のさユりさんと同世代の人たちですよね。
モード学園に入りたいっていうことは、その年代で具体的な夢に出会えた、好きなことに出会えたっていうことじゃないですか。それってすごいなって思ったんです。ただ、そこには喜びと同時に不安もきっとあるはずだから、そのどちらも肯定できる曲にしたいなと思いながら作りました。
──「その年代で好きなことに出会えたのはすごい」とおっしゃいましたが、さユりさんもやりたいことが早くに決まったタイプなのでは?
確かに、小さい頃からずっと歌が好きだったんですけど、私の場合は、歌うという行為自体が自分の居場所になってたんだなって、振り返ると思うんですよ。なので、能動的に何かしたいことを見つけられた人はやっぱりすごいし、それはその人にとって光になるんだなって、改めて思いました。
──「十億年」という曲名もまた、スケールがでかいですね。「平行線」でも「太陽系を抜け出して」という歌詞がありましたが。
「十億年」は壮大な曲にしたかったんです。あと、この曲はライブの空間、つまり歌っている自分とそれを聴いている人がいる空間を想像しながら作った曲でもあるんです。音楽を聴きに来るということは、当たり前ですけど音楽に何かを求めていて、そうやって何かを求めるのは、自分に欠けている何かがあったり、何かを失ったりしたからなんじゃないかって、ライブで歌いながらいつも思うんです。私もステージに立つまでにいろんなことがあったし、フロアにいるみんなにもそれぞれいろんなことがあって……でもその空間はすごく尊いものだから、それを祝福したいなって。
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「ケーキを食べましょう」ではなく「ケーキを焼きましょう」
- さユり「ミカヅキの航海」
- 2017年5月17日発売 / アリオラジャパン
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初回生産限定盤A
[CD+Blu-ray Disc]
3900円 / BVCL-791~2 -
初回生産限定盤B [CD+DVD]
3500円 / BVCL-793~4 -
通常盤 [CD]
2700円 / BVCL-795
- CD収録曲
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- ミカヅキ
- 平行線
- 十億年
- ケーキを焼く
- フラレガイガール
- 蜂と見世物(サーカス)
- るーららるーらーるららるーらー
- オッドアイ
- それは小さな光のような
- 来世で会おう
- knot
- アノニマス
- 夏
- birthday song
- 初回生産限定盤A Blu-ray収録内容
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- ミカヅキ MV
- それは小さな光のような MV
- 来世で会おう MV
- フラレガイガール MV
- アノニマス MV
- 平行線 MV
- birthday song MV
- 初回生産限定盤B DVD収録内容
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- 東京キネマ倶楽部ワンマンライブ&新宿ReNYワンマンライブ ライブダイジェスト映像
- 酸欠少女さユり アルバム「ミカヅキの航海」発売記念全国ツアー「ミカヅキの航海2017~夜明けの全国ツアー~」
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- 2017年7月21日(金)福岡県 DRUM Be-1
- 2017年7月28日(金)愛知県 ElectricLadyLand
- 2017年7月30日(日)宮城県 仙台MACANA
- 2017年8月11日(金・祝)東京都 TSUTAYA O-EAST
- 2017年8月13日(日)北海道 cube garden
- 2017年8月25日(金)大阪府 BIGCAT
- さユり
- 福岡県出身、1996年生まれのシンガーソングライター。人とは違う感性と価値観を持つことにコンプレックスと優越感を抱き、生きることへの息苦しさを感じる自分を“酸欠少女”と表現している。中学生の頃に地元でライブ活動をスタートさせ、2013年に上京。2015年3月には東京・TSUTAYA O-nestでのワンマンライブを成功に収める。同年8月にフジテレビ「ノイタミナ」枠のアニメ「乱歩奇譚 Game of Laplace」のエンディングテーマ「ミカヅキ」でメジャーデビュー。2016年2月に2ndシングル「それは小さな光のような」をリリースした。同年6月に配信シングル「るーららるーらーるららるーらー」を配信限定で発表し、iTunesトップアルバム総合チャートで1位を獲得。注目度の高まる中、12月に野田洋次郎(RADWIMPS、illion)楽曲提供およびプロデュースによる新曲「フラレガイガール」をリリース。2017年3月に発表したシングル「平行線」はフジテレビ「ノイタミナ」枠のアニメ「クズの本懐」およびドラマ「クズの本懐」のエンディングテーマに使用され、大きな話題を集めた。5月に1stアルバム「ミカヅキの航海」をリリースする。
2017年5月12日更新