ターニングポイントは中学時代
さユり 初めまして。お会いできてうれしいです。
横槍メンゴ こちらこそですよ。とても素敵なエンディングテーマを歌ってくださって。
さユり いえいえ。もともと私は「クズの本懐」の原作マンガを好きで読んでいたので、「平行線」がエンディングテーマに決まったときは心底うれしかったです。
横槍 うれしい。私もね、さユりさんに歌ってもらえるってなったときは、「よし!」って思いましたよ。
さユり ホントですか?
横槍 うん。「クズ(の本懐)」がノイタミナ枠でアニメ化されるのが決まってすぐ、まだ主題歌の話とかも全然出てなかった頃の打ち合わせで、シリーズ構成と脚本の上江洲(誠)さんが「さユりさんに歌ってほしいなあ」っておっしゃってたんですよ。当時は、恥ずかしながら私はさユりさんのことを知らなくて「ほう、さユりさんて人がイメージに合うのか」って思って、家に帰って聴いてみて「なるほどな!」って。
さユり あはは(笑)。
横槍 そのとき聴いたのが「ミカヅキ」(ノイタミナ枠のアニメ「乱歩奇譚 Game of Laplace」のエンディングテーマ)だったんですよね。で、クレジットを見ると作詞作曲もご自身がなさってて、すごいなと。いつから自分で曲を書き始めたんですか?
さユり 14歳のときからですね。当時、学校にもあんまり行ってなかったので「歌でも作るか」って(笑)。横槍さんは、いつからマンガを?
横槍 私はね、小3ぐらいから描いてる。だからムダに長い(笑)。でも私も中学の途中からホントにマンガを描くのが楽しくなっちゃって、勉強も上の空だったから、さユりさんの気持ちはよくわかりますよ。高校生になっても自分の中でマンガの比重がどんどん大きくなって、「もう学校行く意味ないな」と、高校を中退してプロを目指しましたから。
さユり 私も17歳のときに1人で上京して、路上ライブを中心に活動して今に至ります。
横槍 じゃあ一緒だ。でも1人で上京ってことは、東京で1人暮らしを始めたってことですよね? そっちのほうがすごいですよ。私は実家住まいだったから(笑)。
自分の“弱さ”を肯定するところから曲を書き始めた
横槍 「平行線」はホントに「クズ」とぴったり重なる歌になっているんですけれど、作詞作曲はどんな感じで進められたんですか?
さユり 最初に、横槍さんの描く登場人物たちの“弱さ”が自分と重なったんです。例えば主人公の(安楽岡)花火ちゃんは、傷付くのが怖くて現状を変えられなかったりするじゃないですか。でも、その弱さって誰でも持っているものだと思うので、まず弱い自分を肯定するところから曲を書き始めました。
横槍 うんうん。
さユり で、作品の中で花火ちゃんは、そうやって葛藤しながらも前に進もうとするので、私も曲を書きながら変われたらいいなと。完成したときに自分も変われるような曲になったらいいなと思いながら作っていきました。
横槍 今、花火を例に挙げてくれたけど、この曲の歌詞は花火だけじゃなくて、どのキャラにも当てはまるように書いてくれてますよね。
さユり はい。基本的には花火ちゃんと自分を重ねた部分が多いんですけど、どの登場人物の視点からも読める歌詞になったらいいなと思ったので。あと、マンガに出てくる特定のシーンを切り取って書いた一節もあるんですけど、やっぱりそのシーンだけじゃなくて、作品全体に通じるような言い回しにしたいなと。なので、そう言っていただけてうれしいです。
恋愛の内側にある混沌としたものを言葉にしてくれた
横槍 「クズの女子会」(「クズの本懐」で安楽岡花火役を演じた安済知佳と鴎端のり子役を演じた井澤詩織がメインパーソナリティとなり、アニメの情報を発信していたインターネットラジオ番組)のさユりさんゲスト回を聞かせていただいたんですけど、モカ(鴎端のり子)のこともすごいお好きだっておっしゃってましたよね。それもすごくうれしかったんですよね。特に、コミックス第5巻のモカでしたっけ?
さユり そうなんです。5巻でモカが(花火の彼氏を“演じている”粟屋)麦とデートをするエピソードは、まさに今言った「特定のシーン」で。「平行線」の2番の歌詞は、このときのモカを救いたいって思いながら言葉を選びました。
横槍 それは、すごい。いや、そのモカのシーンはけっこう男の子に好評で、意外だなと思ってその理由を聞くと、みんなモカに感情移入して、モカになりきって読んでるんですよ。でも、さユりさんはモカを「救いたい」って。だから、さユりさんのほうが男らしいなと(笑)。
さユり あはは(笑)。そのデートを経たあとの、7巻のモカも大好きなんですよ。
横槍 はいはい。購買で買ったパンをムシャムシャ食べてるやつね。
さユり それです。やっぱりモカはかわいくて、そして強いなって。私、「クズの本懐」が素敵だなって思うのは、恋愛っていうキラキラしたものの内側にある、なんだか混沌とした、不透明なものが描かれているところなんですよ。今の若い子たちも……って言うか私もまだ若いんですけど、そういう不確かな何かを言葉にしてくれる作品を欲してるんじゃないか。だから「クズの本懐」が支持されるんじゃないかなって。
横槍 もうね、今のさユりさんの言葉をそのまま「クズ」のキャッチコピーにしたいくらい。まさにそういう混沌の渦中にいる人というか、特に思春期の人に届いてほしいと思って描いてたので、すごくうれしい。
次のページ »
さユりがマンガ家だったら、ライバル視していたかもしれない
- さユり「ミカヅキの航海」
- 2017年5月17日発売 / アリオラジャパン
-
初回生産限定盤A
[CD+Blu-ray Disc]
3900円 / BVCL-791~2 -
初回生産限定盤B [CD+DVD]
3500円 / BVCL-793~4 -
通常盤 [CD]
2700円 / BVCL-795
- CD収録曲
-
- ミカヅキ
- 平行線
- 十億年
- ケーキを焼く
- フラレガイガール
- 蜂と見世物(サーカス)
- るーららるーらーるららるーらー
- オッドアイ
- それは小さな光のような
- 来世で会おう
- knot
- アノニマス
- 夏
- birthday song
- 初回生産限定盤A Blu-ray収録内容
-
- ミカヅキ MV
- それは小さな光のような MV
- 来世で会おう MV
- フラレガイガール MV
- アノニマス MV
- 平行線 MV
- birthday song MV
- 初回生産限定盤B DVD収録内容
-
- 東京キネマ倶楽部ワンマンライブ&新宿ReNYワンマンライブ ライブダイジェスト映像
- 酸欠少女さユり アルバム「ミカヅキの航海」発売記念全国ツアー「ミカヅキの航海2017~夜明けの全国ツアー~」
-
- 2017年7月21日(金)福岡県 DRUM Be-1
- 2017年7月28日(金)愛知県 ElectricLadyLand
- 2017年7月30日(日)宮城県 仙台MACANA
- 2017年8月11日(金・祝)東京都 TSUTAYA O-EAST
- 2017年8月13日(日)北海道 cube garden
- 2017年8月25日(金)大阪府 BIGCAT
- さユり
- 福岡県出身、1996年生まれのシンガーソングライター。人とは違う感性と価値観を持つことにコンプレックスと優越感を抱き、生きることへの息苦しさを感じる自分を“酸欠少女”と表現している。中学生の頃に地元でライブ活動をスタートさせ、2013年に上京。2015年3月には東京・TSUTAYA O-nestでのワンマンライブを成功に収める。同年8月にフジテレビ「ノイタミナ」枠のアニメ「乱歩奇譚 Game of Laplace」のエンディングテーマ「ミカヅキ」でメジャーデビュー。2016年2月に2ndシングル「それは小さな光のような」をリリースした。同年6月に配信シングル「るーららるーらーるららるーらー」を配信限定で発表し、iTunesトップアルバム総合チャートで1位を獲得。注目度の高まる中、12月に野田洋次郎(RADWIMPS、illion)楽曲提供およびプロデュースによる新曲「フラレガイガール」をリリース。2017年3月に発表したシングル「平行線」はフジテレビ「ノイタミナ」枠のアニメ「クズの本懐」およびドラマ「クズの本懐」のエンディングテーマに使用され、大きな話題を集めた。5月に1stアルバム「ミカヅキの航海」をリリースする。
- 横槍メンゴ(ヨコヤリメンゴ)
- 1988年2月、三重県生まれ。2009年、マガジン・ウォー(サン出版)にて成人向けマンガでデビュー。2010年にCOMICすもも(双葉社)にて、エロマンガ家と双子美少女の三角関係を描いたコメディ「はるわか」の連載を開始する。2012年に週刊ヤングジャンプ(集英社)にて掲載された、岡本倫原作「君は淫らな僕の女王」は、ヒロインが自制心を失う設定と、かわいらしい絵柄とエロのギャップが人気を呼んだ。同年、月刊ビッグガンガン(スクウェア・エニックス)にて、高校生の純粋かつ歪んだ恋愛を描く「クズの本懐」の連載を開始する。インターネット上ではヨリのハンドルネームで活動し、ニコニコ動画などVOCALOIDを使用した楽曲のイラストも手がける。イラストレーターとしても活躍中。
2017年5月12日更新