澤野弘之×JO1・河野純喜&與那城奨|JO1のメインボーカル2人が“澤野ワールド”へ、新たな出会いが生み出したものとは (2/2)

奨くんの声をイヤモニで聴くと、すごく安心する

──普段のJO1での歌唱と違うところで言うと、なんといってもダンスがないという点は大きいですよね。

河野 それは大きいですね。ミュージックビデオ撮影も新鮮でした。グリーンバックで撮影したんですけど、僕と奨くんが立って歌ってる後ろで澤野さんがピアノを弾いていて。バンドマンになったような感覚がありました(笑)。

與那城 歌に集中できるのは大きな違いなんですけど、逆に歌に集中しすぎて棒立ちになりがちだったので、「難しいな」と思いましたね。

河野 そうですね。普段JO1の曲ではひたすら踊りながら歌ってるので。最初のほうは逆に「動きすぎ」って監督に言われてました。

與那城 つい「何かしなくちゃ」と思っちゃうんだよね(笑)。

河野 そうそう(笑)。

澤野 お二人が撮っているところを見て、「さすがだな」とすごく感動したんですよ。普段はダンスでも楽曲を表現されていると思うんですが、今回のようにダンスがない楽曲でも、「サビはこう動いたほうがいいかな」と2人で話し合ったりされていて。佇まいひとつとっても楽曲の世界をすごく広げてくれているなあと。やっぱり普段からエンタテインメントとしての見せ方を意識しているからですよね。

澤野弘之

澤野弘之

──途中で與那城さんから河野さんへ傘を差し出すシーンが印象的で。スタッフさん曰くCDの期間生産限定盤のジャケットイラストに寄せたそうですが、JAM(JO1ファンの呼称)の反応を見ていると「Born To Be Wild」(2021年4月リリースのJO1の3rdシングル「CHALLENGER」収録曲)のMVと重ねている方も多かったですね。

與那城 僕と純喜は、よく向かい合わせで微笑みがちなんですよね(笑)。向かい合わせで撮るときは、それぞれの顔が映るアングルを撮るんですけど、純喜を正面から捉えるアングルのときは、僕は背中しか映っていないので、基本的に変顔をしています(笑)。

河野 ふざけちゃダメなんですけどね。笑っちゃうから、撮影が進まないんですよ(笑)。

左から澤野弘之、河野純喜(JO1)、與那城奨(JO1)。

左から澤野弘之、河野純喜(JO1)、與那城奨(JO1)。

──(笑)。お二人は最近、ボーカリストとして公の場で一緒に歌う機会が多いですよね。昨年3月にJO1のYouTubeで公開された「My Friends」のデュエットに始まり、昨年11月の有観客ライブで日替わり楽曲として歌唱した「STAY」、そして「CDTVライブ!ライブ!」ではDREAMS COME TRUE「LOVE LOVE LOVE」や久保田利伸さんの「LA・LA・LA LOVE SONG」のカバーを披露されました。さっき澤野さんもおっしゃっていたように、声質が対照的なので、それが合わさったときに大きな魅力が生まれているように思います。2人で歌っているときは、どんな感覚があるのでしょうか?

河野 合わさったときに魅力が生まれるっていうのは本当にその通りだなと思っていて。自分1人で歌っていると足りない部分もまだまだあると思うんですが、奨くんの声をイヤモニで聴くと、すごく安心するんです。奨くんがいなかったらどんどん緊張しちゃうと思うんですけど、奨くんが歌うパートになるとすごく心が落ち着きます。

與那城 純喜はすごく高音が得意なので、そこは最大限の力を出してもらいたいし、純喜は合わせるのが上手なんですよ。僕には僕の役割があり、お互いに合わせながらいい塩梅でできているのかなと。だからこそ、2人で歌う機会が増えてきたのかなと思います。

河野 毎朝、コーヒーを一緒に飲んでますからね。息も合うはずです。

與那城 勝手に僕の部屋に飲みに来るんですよ(笑)。今回の「OUTSIDERS」のレコーディングはスケジュールの都合上、純喜が先に全部録っていて、入れ違いで僕が入って自分のパートを録ったんです。普段のJO1のレコーディングではずっと一緒にいて順番に録るので、前に録った人の歌を聴いてからテンションを合わせたりするんですけど、今回はそうじゃなかったので新鮮でしたね。先に録った純喜の歌を聴かせてもらって合わせていきました。

河野 ありがたいことに2人で音楽番組に出させていただく機会も増えてきたのですが、毎回めちゃくちゃ緊張してるんです。やっぱり11人から2人になると……(笑)。テレビ局に向かう車の中からもう震えてますね。

澤野 そうなんですか? 収録では全然そんなふうに見えなかったですよ。

河野 えっと……澤野さんの前ではそういうところはあんまり見せたくないなって(笑)。でも控室で必死に声出ししたりしてました。

澤野 ああ、その声は聞こえました(笑)。でも収録本番、生で歌ってる声をイヤモニ越しに聴いて「さすがだなあ」と感じてましたよ。純粋にカッコいいなって思いましたね。

河野 ありがとうございます。澤野さんがピアノの上にシンセサイザーを積んで弾いていたのがすごくカッコよくて「こんな弾き方あるんだ……」と圧倒されました。

澤野 ははは(笑)。

左から澤野弘之、河野純喜(JO1)、與那城奨(JO1)。

左から澤野弘之、河野純喜(JO1)、與那城奨(JO1)。

「勢いをなくしちゃいけないな」ということを、改めて思い出させてもらった

──今回の「OUTSIDERS」という楽曲でのコラボを通して、お二人がボーカリストとして澤野さんに教えてもらったことを挙げるとしたら何になるでしょうか?

與那城 たくさんありますけど、僕たちは曲によって歌い方を変えないといけないことが多いので、「OUTSIDERS」でまた新たな道を授けてもらえた感覚があって。すごくありがたかったですね。しっかり自分たちの声を楽曲に落とし込むことを学べた気がします。

河野 こういう曲が本当に初めてだったので、どういうふうに歌おうかすごく考えたんですが、「OUTSIDERS」はすごくまっすぐな歌だと思ったんです。そのまっすぐさを伝える方法を考え抜いたことは、学びになったんじゃないかなと思いますね。

河野純喜(JO1)

河野純喜(JO1)

──以前岡崎体育さんが、澤野さんとの対談で「自分が一番カッコよくなるキーを知ることができた」「澤野さんにいいところをすごく引き出してもらえた」とおっしゃっていましたが、澤野さんの楽曲は、ボーカリストの魅力を増幅させてくれる部分が大きいのではないかなと思います(参照:澤野弘之(SawanoHiroyuki[nZk])×岡崎体育 対談)。

澤野 皆さんそうやってうれしいことを言ってくださるんですけど、僕は本当に、自分の曲の力でどうこうとは1mmも思ってないんですよ。お二人を含め、参加していただくボーカリストさんたちは皆さんもともと力がある方々で。どんな楽曲にも対応できる能力や歌のアプローチを持ってるからこそ、いい形に仕上げてくださっているのだと思っています。

河野 いやいやいや、本当に感謝しています!

──澤野さんも今回のお二人とのコラボを経て「たくさん刺激をもらった」とTwitterで書いていらっしゃいました。それを言語化するとどのようなものになりますか?

澤野 先ほどのMV撮影のときの話もそうなんですけど、レコーディングのときのアプローチを見ていても、2人の楽曲に向き合う姿勢に感銘を受けましたね。若いからこその勢いもあると思うんですが、今後年齢を重ねていっても、その勢いを保ちながらいい方向に前進していく方たちなんだろうなと感じました。自分はもう40歳を過ぎて、お二人とは年齢がひと回り以上違うわけですけど、見習っていきたいなと思わされましたよ。若作りしたいわけではなく「勢いをなくしちゃいけないな」ということを、改めて思い出させてもらいました。

──ちなみに、JO1のほかのメンバーからの「OUTSIDERS」への反響はいかがでしたか?

河野 JO1はアニメ好きのメンバーが多いんですよ。だから「えっ! 澤野さんに実際にお会いしたの!?」ってみんな興奮してました。

與那城 澤野さんをもともと知ってるメンバーが多かったですね。

澤野 そんな大したことないですよ(笑)。

河野 いやいやもう「『進撃の巨人』『ガンダムUC』の澤野さんでしょ!?」って、みんな大興奮でした。今回、完成した曲が世に出るまでみんなに聴かせなかったんですよ。聴いた瞬間、「うわー! 歌いたかったー!」って言ってました。

──シングルには「OUTSIDERS」のケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)さんのリミックスバージョンも収録されていますが、ダンサブルなアレンジでJO1の世界観とはこれまた違っていて、河野さんと與那城さんのボーカルが新鮮に響いていました。

河野與那城 僕らはまだ聴けていないんですよ。すごく楽しみです。

澤野 ケンモチさんらしいサウンドアプローチをしてもらえましたね。今回シングルを出すにあたって、JO1ファンの方々に大きく興味を持っていただく中で、「1曲しかないなんてもったいないよな」と思ったんです。別の形でも聴いてもらえたらよりファンの方に喜んでいただけるかな?と、リミックスを提案させてもらいました。

河野 えっ、澤野さんからの提案だったんですか!

澤野 そうそう。自分から提案するのは初めてでしたね。ならばケンモチさんにお願いしたいなと思ったんです。

與那城 すごく光栄です。早く聴きたいですね。

與那城奨(JO1)

與那城奨(JO1)

ここからまたいろんな挑戦が始まっていく

──澤野さんは今回「群青のファンファーレ」で劇伴も手がけていらっしゃいます。「青春アニメの音楽を澤野さんが担当するなんて珍しい」と放送前から話題になっていましたが……。

澤野 めっずらしいですよね!(笑)。

──制作にあたっては苦労もありましたか?

澤野 いえ、苦労という感じはなかったです。僕はドラマの劇伴を手がけることもあるんですけど、そちらでは日常を描くような作品が多かったんですね。今回のプロデューサーも過去のドラマ劇伴にも興味を持ってオファーしてくださったみたいで、その頃の感覚を思い出しながら、出てくるものをそのまま素直にぶつける感覚で作っていきました。

──キラキラとした世界観が澤野さんの音楽で作られるのは新鮮でした。

澤野 そうですね(笑)。貴重でありがたい機会でした。

──そして「群青のファンファーレ」にはJO1の大平祥生さんと木全翔也さんが声優として出演していますね。主人公の優が競馬学校に入学する前に活動していたアイドルグループのメンバーという役どころです。河野さんと與那城さんはご覧になっていかがでしたか?

木全翔也演じる南原煌成と大平祥生演じる東将基。

木全翔也演じる南原煌成と大平祥生演じる東将基。

與那城 祥生は以前にも声優として出演経験があったのでなんとなくイメージができたのですが、初挑戦の翔也は、JO1内での立ち位置がおちゃらけた感じで、かわいいやつなんですよ。なので「どう演じるのかな」と思いながら観たら、ドスの効いた声でちゃんと役に入っていて。すごくよくて、いい意味で笑ってしまいました(笑)。今後の出演シーンも楽しみですね。祥生はアイドルグループのリーダー役で、普段JO1ではそういう立ち位置じゃないんですけど、「リーダー感を出そうとしてるな」というのが演技を観ていて伝わってきました。

河野 普段の自分よりちょっと年上っぽい声を出してるというかね。

與那城 うん、そんなニュアンスが伝わってきましたね。

──JO1でリーダーを務めている與那城さん的には、大平さんのリーダーらしさはどうだったんですか?

與那城 まだまだですねえ(笑)。

──厳しい(笑)。そして、オープニングテーマの「Move The Soul」についても少し聞かせてください。歌もダンスもすごくスピーディーで、難易度が高そうな楽曲に感じました。

河野 本当に疾走感があって、それをダンスや歌で表現しています。アニメにもぴったりな曲だなと感じてますし、ぜひたくさん聴いていただきたいですね。

與那城 ずっとリズムに乗って駆け抜けている感じで、踊り終えたあとはゼーゼー言ってます(笑)。でも疾走感のあるメロディとダンスがすごく気に入っています。

──歌割りも細かいですし、河野さんはメロのオクターブ上を歌う部分も多いですよね。

河野 そうですね。忙しいです(笑)。1フレーズずつポンポン変わっていく歌割りが新鮮でしたね。あと、「THE FIRST TAKE」ではこの曲を5人(河野、與那城、川尻蓮、川西拓実、金城碧海)でまったく違うアレンジで歌ったので、パートが頭の中でごちゃごちゃになりました(笑)。

與那城 「THE FIRST TAKE」では原曲とはガラッと趣向を変えようということでハモりをたくさん入れたんですよね。なので11人で歌うバージョンに戻ると、「俺どこ歌うんだっけ」って迷子になります(笑)。

──なるほど(笑)。でも「THE FIRST TAKE」での歌唱も本当にとても素晴らしかったです。澤野さんは「Move The Soul」をお聴きになっていかがでしたか?

澤野 サウンドの作りも素晴らしいですし、メンバー1人ひとりの歌声のアプローチを「これが普段から積み重ねてきたJO1の力なんだな」と思いながら聴いていました。カッコいい曲なので、「OUTSIDERS」は大丈夫だったかな?って心配になっちゃいますけど(笑)。

河野 いやいやいや。「OUTSIDERS」の圧勝です。

澤野 ははは(笑)。

──JO1はデビュー3年目に入り、活動休止していた金城碧海さんも復帰されて、今回の澤野さんとのコラボを筆頭に最近の活動はさらにステップアップしている感覚があります。

與那城 去年の11月にやっと有観客でライブができて、そこでやっとスタートが切れたような感覚があるんです。正直それまでの2年間は準備期間というか……ダンスや歌など諸々のレベルを上げないといろいろな場に出られないと思いながら、積み重ねてきた2年間でした。少しずつライブもできる状況になってきましたし、3年目に突入して、もっとレベルアップして経験値を積んでいくことが大事だと思っています。ここからまた僕たちの中でいろんな挑戦が始まっていくイメージですね。

澤野 楽しみですね。僕のファンの方々も、お二人の声を聴いて「すごくいい」と言ってくださっていたので、今回ご一緒できて本当にありがたかったです。「MUSIC FAIR」ではご一緒できましたけど、ぜひライブとかでも一緒に出られる機会があるといいですよね。

河野 もちろんぜひぜひお願いします!

與那城 ツアーでやりましょう!(笑)

左から澤野弘之、河野純喜(JO1)、與那城奨(JO1)。

左から澤野弘之、河野純喜(JO1)、與那城奨(JO1)。

プロフィール

澤野弘之(サワノヒロユキ)

作曲家。「医龍」シリーズやNHK連続テレビ小説「まれ」、「進撃の巨人」「機動戦士ガンダムUC」シリーズなど、ドラマ、アニメ、映画など映像作品のサウンドトラックを中心に、楽曲提供や編曲をするなど精力的に音楽活動を展開している。2014年春にはボーカル楽曲に重点を置いたプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk]を始動。2020年4月に作家活動15周年を記念したベスト盤「BEST OF VOCAL WORKS [nZk] 2」をリリース。2021年3月に岡崎体育、優里、アイナ・ジ・エンドなどをボーカリストに迎えたSawanoHiroyuki[nZk]の4thアルバム「iv」、6月にアニメ「86―エイティシックス―」のエンディングテーマ2曲を収録したシングル「Avid / Hands Up to the Sky」を発表した。12月にキャリア初のピアノソロアルバム「scene」をリリース。2022年3月に東京国際フォーラム ホールAで単独公演「澤野弘之 LIVE [nZk]007」を開催した。同月にたかはしほのか(リーガルリリー)が参加した楽曲「LilaS」を配信リリース。5月25日にJO1の河野純喜と與那城奨をゲストボーカルに迎えてシングル「OUTSIDERS」をリリースした。

澤野弘之 衣装
ジャケット(GalaabenD)60500円
パンツ(GalaabenD)36300円
靴(EARLE)47300円

JO1(ジェイオーワン)

豆原一成、川尻蓮、川西拓実、大平祥生、鶴房汐恩、白岩瑠姫、佐藤景瑚、木全翔也、河野純喜、金城碧海、與那城奨による11人組グループ。2019年12月にサバイバルオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN」で誕生し、2020年3月にデビューシングル「PROTOSTAR」をリリースした。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けてライブ活動ができない中、デビューイヤーから飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍し、数多くのテレビ番組や雑誌の表紙などに登場。11月に1stアルバム「The STAR」をリリースし、12月にはアジア最大級の音楽授賞式「Mnet Asian Music Awards 2020」で「ベストニューアジアアーティスト賞」を受賞した。2021年は3枚のパッケージシングルをリリース。11月には千葉・幕張メッセ国際展示場で初の有観客ライブ「2021 JO1 LIVE "OPEN THE DOOR"」を開催し、全5公演で約4万5000人を動員した。2022年3月にメンバー全員が主演を務めるドラマ「ショート・プログラム」の配信がAmazon Prime Videoでスタート。同時期にデビューからの約2年間を追ったドキュメンタリー映画「JO1 THE MOVIE『未完成』-GO to the TOP-」も公開された。5月に2ndアルバム「KIZUNA」をリリース。9月にアリーナツアー「2022 JO1 1ST ARENA LIVE TOUR ‘KIZUNA’」を開催する。