SawanoHiroyuki[nZk]|Uruを迎え打ち出した 新たな[nZk]サウンド

単純に大げさなものが好き

──Uruさんとのレコーディングはいかがでしたか?

今回の曲は英詞だったのでBenjaminとmpiさんの2人にも来てもらって一緒にディレクションしました。でも僕は基本的に細かくディレクションするというよりは、歌い手さんから出てくるアプローチを楽しみたいタイプなので、僕から言ったことは「サビのところで、今まで出したことないぐらいの大声で歌ってください」ぐらいかも(笑)。

──ははは(笑)。Uruさんの歌声は特徴があるので、SawanoHiroyuki[nZk]に新しくもたらしたものもあったのではないでしょうか。

ええ。歌唱力はもちろん大事なんですけど、僕自身が[nZk]のプロジェクトをやるときに一番重要視してるのが、ボーカリストの声質なんですね。声に魅力を感じる人に惹かれるほうなので、そういう意味ではUruさんもそうだったし、今までのボーカリストとは違うアプローチもいい意味で共通するところもあって。彼女の歌が、僕が「Binary Star」で出したかったエモーショナルな部分を広げてくれたんじゃないかと思います。

──この楽曲は壮大なコーラスと共に終わる展開も含め、スペースオペラ作品のテーマ曲にふさわしい宇宙的なスペクタクル感がありますよね。それは澤野さんの作品全体に通じる特徴でもあると思うのですが、その壮大さという持ち味はどこから生まれてくるものなのでしょうか?

なんでしょうねえ? でも僕が単純に大げさなものが好きというのはあると思います。劇伴とかでもクールな曲を作りたいと思って書き始めても、途中で結局自分が我慢できなくなってバーン!って展開させたくなっちゃうんですよね(笑)。それは歌の曲を作ってるときも一緒で、サビに入るところで開いていく感じを好んでやってしまうので、これはもうクセなんだと思います。

──でもそこがファンの期待してるところでもあると思いますし。

あとは言葉が合ってるかわからないんですけど、僕は気持ちの部分でロックな曲と言うか、歌ってるときに拳を握りたくなるような曲を作りたいと思ってるんです。なので今回のようにストリングスをメインでフィーチャーしてても、気持ち的にロックなものを目指しているのが、結果的に壮大さにつながってるのかもしれないですね。

──そのロックスピリッツみたいなものは、今まで聴いてきた音楽が反映されてるところもあるのでしょうか?

反映されてると思いますよ。だからAerosmithの曲も初めて聴いた瞬間にすぐ好きになりましたし、一番影響を受けたASKAさんの曲にもそういう部分を感じるんです。

“2017年度版”の「機動戦士ガンダムUC」テーマ

──ニューシングルのもう1つの表題曲「Cage」は、昨年の9月からお台場で公開されている「実物大ユニコーンガンダム立像」のテーマソングになります。澤野さんとは縁深い「機動戦士ガンダムUC」の楽曲を再び、ということで感慨深い部分もあったのでは?

そうですね。ユニコーンはかなり長いスパンでやってたので、OVAのシリーズ(2010~14年)が終わる頃には冗談半分で「やっと終わるよ」とか言ってたんですけど(笑)、でもいざ終わると長くやってた分寂しかったりもして。そんな中でも幸いなことに、あの作品のファンの方たちが支えてくれたおかげでテレビシリーズ(「機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096」)にも関わらせていただいたり、そのタイミングで[nZk]としてオープニングテーマを新しく書かせてもらったりして。なので去年、「立像のテーマソングを書いてほしい」というお話をいただいたときも素直にうれしかったですね。

──どんなイメージで楽曲を作っていかれたのでしょうか?

ミディアムかバラードというオーダーはいただいてたので、それを踏まえたうえで今の自分が「機動戦士ガンダムUC」という作品にどういう曲を書きたいかをぶつければいいんじゃないかと思って、素直に書いていきました。でも、よく考えたら「機動戦士ガンダムUC」の音楽を作ってたときも、そんなにガンダムということを意識して作ってたわけではなくて、そのときの自分がユニコーンに対してカッコイイと思うものをナチュラルに出すスタンスでやってたので、それをそのまま“2017年度版”でやってみた感じと言うか。

──サウンド的にはギターのフレーズがずっとリピートするミニマル感がありつつ、ほかの部分が変化することで景色が変わっていくドラマチックな雰囲気が新鮮でした。

同じフレーズをずっと鳴らすことで、メロディラインは一緒でもコード進行やリズムが変わることによって違った聞こえ方になるのが好きなんですよね。それとサウンド面ではデジタルを強く押し出したんですけど、これは「2V-ALK」のときと同じで、アメリカでここ数年人気があるエレクトロニカやEDM的なポップスが好きでいろんなアーティストを聴いてきた影響があるかもしれないです。同じループを繰り返すというところもそうですし。

──確かに海外のヒットチャートではヒップホップやダンスミュージックのようなループ感のあるものが主流になってますものね。一方で日本の音楽はメロディ主体な部分が強くて、この楽曲ではその両方のよさが融合している印象があります。

これは個人的な感覚かもしれないですが、日本の曲は縦で「1、2、3…」とリズムを感じることが多いんですけど、洋楽はそれとは違うリズムを感じるんですね。それを自分の中にうまく取り入れられないかなと思って、曲を作るときにグルーヴ感を気にするようになったんです。とは言え自分はCHAGE and ASKAの音楽をはじめ、歌謡曲やJ-POPを聴いてきた人間なので、メロディもグッとくるものを作りたいんです。普段からそのへんをマッチングできたらと思ってやってます。

──「Cage」を歌われているTielleさんは、「機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096」のオープニングテーマ「Into the Sky」に続いて「ユニコーン」の楽曲を担当されることになりましたが、そのことに対して何かおっしゃってましたか?

歌ってるときも喜んではいたと思うんですけど、何よりそのユニコーンの立像が公開されたときのセレモニーイベントで立像の演出を一緒に観るタイミングがあったんですよ。それを観て本人もより実感できたのか「素敵なプロジェクトにもう一度参加させていただいてありがとうございます」って感激してましたね。

──レコーディング時はいかがでしたか?

印象に残ってるのは、これまではクリック音に合わせて歌っていたんですけど、Tielleさんはそのときに裏拍で歌いたいということで、そうしたんです。ご自身としてもグルーヴ感や歌のアプローチをいろいろ考えたうえで歌ってくれたんだと思いますね。

SawanoHiroyuki[nZk]
「Binary Star/Cage」
2018年4月25日発売 / SACRA MUSIC
SawanoHiroyuki[nZk]「Binary Star/Cage」期間生産限定盤A

期間生産限定盤A [CD+DVD]
1620円 / VVCL-1203~4

Amazon.co.jp

©田中芳樹/松竹・Production I.G

CD収録曲
  1. Binary Star by SawanoHiroyuki[nZk]:Uru
  2. Cage by SawanoHiroyuki[nZk]:Tielle
  3. Roller Coaster by SawanoHiroyuki[nZk]:Gemie
  4. Amazing Trees -extended ver.- by SawanoHiroyuki[nZk]:Tielle
  5. Binary Star(instrumental)
  6. Cage(instrumental)
  7. Binary Star(TV size)
DVD収録内容
  • テレビアニメ「銀河英雄伝説 Die Neue These」ノンクレジットオープニングムービー
SawanoHiroyuki[nZk]「Binary Star/Cage」期間生産限定盤B

期間生産限定盤B [CD+DVD]
1620円 / VVCL-1205~6

Amazon.co.jp

©創通・サンライズ

CD収録曲
  1. Cage by SawanoHiroyuki[nZk]:Tielle
  2. Binary Star by SawanoHiroyuki[nZk]:Uru
  3. Roller Coaster by SawanoHiroyuki[nZk]:Gemie
  4. Amazing Trees -extended ver.- by SawanoHiroyuki[nZk]:Tielle
  5. Cage(instrumental)
  6. Binary Star(instrumental)
  7. Cage(WALL-G edit)
DVD収録内容
  • 「Binary Star」MUSIC VIDEO
SawanoHiroyuki[nZk]「Binary Star/Cage」通常盤

通常盤 [CD]
1350円 / VVCL-1207

Amazon.co.jp

収録曲
  1. Binary Star by SawanoHiroyuki[nZk]:Uru
  2. Cage by SawanoHiroyuki[nZk]:Tielle
  3. Roller Coaster by SawanoHiroyuki[nZk]:Gemie
  4. Amazing Trees -extended ver.- by SawanoHiroyuki[nZk]:Tielle
  5. Binary Star(instrumental)
  6. Cage(instrumental)
澤野弘之 LIVE [nZk]005

2018年5月13日(日)
神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール

出演者澤野弘之 / Aimee Blackschleger / Aimer / Benjamin / Cyua / David Whitaker / Do As Infinity / Eliana / Gemie / mizuki / mpi / Tielle / Uru / Yosh

澤野弘之(サワノヒロユキ)
1980年生まれ、東京都出身の作曲家、編曲家。「医龍」シリーズやNHK連続テレビ小説「まれ」、「アルドノア・ゼロ」「進撃の巨人」「キルラキル」「機動戦士ガンダムUC」シリーズなど、ドラマ、アニメ、映画など映像作品のサウンドトラックを中心に、楽曲提供や編曲をするなど精力的に音楽活動を展開している。2014年春からはボーカル楽曲に重点を置いたプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk]を始動。その第1弾作品として「機動戦士ガンダムUC」シリーズの楽曲も共作したAimerと、SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer名義のアルバム「UnChild」を発表した。2015年2月にはSawanoHiroyuki[nZk]の新作「&Z」と、自身の手がけたアニメーションのサウンドトラックの中からボーカル曲のみをセレクトしたベストアルバム「BEST OF VOCAL WORKS [nZk]」をリリースしている。同年9月にSawanoHiroyuki[nZk]の1stアルバム「o1」と、澤野名義のサウンドトラックベスト「BEST OF SOUNDTRACK【emU】」を発表した。2017年9月にSawanoHiroyuki[nZk]として2作目のアルバム「2V-ALK」、2018年4月にテレビアニメ「銀河英雄伝説 Die Neue These」のオープニングテーマ「Binary Star」と「実物大ユニコーンガンダム立像」のテーマソング「Cage」を収めた両A面シングルをリリース。

2018年4月25日更新