澤野弘之のボーカルプロジェクトSawanoHiroyuki[nZk]の5枚目となるシングル「gravityWall / sh0ut」をリリースする。
「gravityWall」は、澤野が劇伴を手がけているアニメ「Re:CREATORS」第1期のオープニングテーマとして制作されたアップテンポなナンバー。一方、ミディアムテンポの「sh0ut」は「Re:CREATORS」第2期のオープニングテーマとして使用されることになっている。今回はどちらの楽曲にも女性ボーカリストのTielleとGemieが参加。ツインボーカルで、アニメの世界に寄り添うような深みのある世界観を描き出している。
「Re:CREATORS」に加え、アニメ「進撃の巨人 Season2」やドラマ「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」でも劇伴を手がけるなど、ほとばしるクリエイティビティを良質な音楽としてアウトプットし続ける澤野。彼の創作の裏にはどんな思いがあるのか? じっくりと話を聞いた。
取材・文 / もりひでゆき
初オーケストラライブで感じた楽しさと感慨深さ
──去る5月13、14日、ご自身にとって初となるオーケストラを従えたホールライブ「澤野弘之 LIVE【emU】2017~BEST OF SOUNDTRACK」が開催されました。まずはその感想から伺えればと。
自分名義では初めてのオーケストラライブでしたけど、劇伴作家のライブは基本的にはそういうスタイルが主流じゃないですか。僕が影響を受けた久石譲さんや坂本龍一さんもそうだし。でも僕はこれまでボーカル曲を主軸にした、ライブハウスでのライブばかりやってきたのですごく新鮮でしたね。
──これまでのライブとは気持ち的に違いましたか?
演奏すること自体に関してはそこまでの違いはないんですけど、自分の後ろにオーケストラがバッといると、気持ち的にちょっと変化するところはありますよね。お客さんにしても、ライブハウスだとスタンディングだから「わー!」っと声を出す反応もあるんですけど、今回は静かに座って聴いていただく感じだったので、そういう意味でも空気感が違いました。
──ご自身のキャリアを総括するような、幅広い楽曲を演奏されたようですね。
そうですね。ここ最近のアニメ作品で僕のことを知ってくださった方が多いと思っていたので、そのあたりの曲を中心にしたんですけど、自分の過去のドラマの曲なんかも織り交ぜて演奏することができたので、楽しさと同時に感慨深い気持ちもありました。あと今回はいつもとはコンセプトを変えて、ほぼMCナシで進行したんですよ。そういう部分では演奏により集中することができたし、間髪入れずに音楽だけを届けていく面白さを自分なりに感じることもできましたね。
──今後もオーケストラライブは続けていきたいですか?
今までのライブのように定期的にやるのは難しいかもしれないですけど、タイミングが合えばまたやるっていうのはアリだなとは思ってますね。今回の2日間ではお送りできなかった曲もまだまだありますから。
1つの作品に集中してやっていく
──そのライブ以降、澤野さんが劇伴を手がけているドラマ「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」とアニメ「進撃の巨人 Season2」、そしてアニメ「Re:CREATORS」のサウンドトラックが立て続けにリリースされました。同時期に放送される3作品の劇伴を手がける、その仕事量に驚愕するわけですが。
あははは(笑)。今回は同じ時期にたまたま放送やサントラのリリースが集中しちゃっただけで、こういうことはめったにないんですけどね。それに、こういう状況だとすべてを同時期に作ってると思われがちなんですけど、制作の時期は被ってないんですよ。流れで言うと、「Re:CREATORS」の音楽は去年には録り終えていて、そのあとに「進撃の巨人 Season2」、それが終わったあとに「CRISIS」に取りかかった感じで。まあでも、今の見え方としては「なんかこの人、いろいろやってんな」「欲張りなんじゃないかな」って思われちゃいそうな感じではありますけどね(笑)。
──いくつもの作品の音楽を並行して作るのではなく、1つの作品に集中するスタンスは澤野さんのこだわりでもあるんですか?
そうですね。いろんな作品を並行して作っても曲が出てこなくなるわけではないんですけど、自分の性格的に1つの作品の音楽を全体のバランスを見ながらきっちり構築していきたいところがあるんですよね。それに、例えば戦いがメインになってくる「進撃の巨人」と「Re:CREATORS」の曲を同時に作ったりすると、「なんか俺、戦いの曲ばっか作ってんな」って気持ちにもなってきちゃうじゃないですか(笑)。
──確かに(笑)。
それで頭がこんがらがることはないですけど、自分の中のモチベーション的には1つの作品に集中してやっていくほうが合ってるんですよね。頭を切り替えて、その作品に合わせたいろんなアプローチを考えながら作っていくことができるので。
──切れ目なく劇伴音楽の制作を続けている中、スイッチをSawanoHiroyuki[nZk]に切り替えて楽曲をストックしていく作業も行われているんですか?
[nZk]に関して言うと、幸いなことに劇伴を担当する流れの中で主題歌として依頼をいただけるケースがほとんどなんですよ。なので、あまり意識的にそれだけを作っている感じでもないと言うか。もちろん[nZk]としてのストックもないことはないですけど、それもタイミングによってはサントラのほうに使うかもしれないですし。そういう意味では僕の中で劇伴も[nZk]も音楽的なところではまったく変わらないんですよね。
──名義の違いはあるにせよ、ご自身の中のクリエイティビティの根幹には変化がないと。
劇伴のときは作品ごとのイメージを意識する部分はもちろんありますけど、基本的にはそうですね、うん。
──澤野さんの曲はインストであっても歌モノであってもメロディが強く印象に残るものが多いですよね。それもご自身の中で名義によって作り方を変えていないことに理由があるのかも、と今思ったのですが。
ああ、そうですね。僕の場合、インストの曲であったとしてもメロディを作るときはボーカリストが歌っているイメージを一度思い浮かべることが多いんですよ。自分が歌いながら作ったりもしますしね。だから極端な言い方をすれば、歌モノの曲を作ってから、それをインストにしちゃってるような感覚と言うか。特に、関わる作品のメインテーマになっていくような曲はメロディが重要になってくるので、そういう感覚で作ることが多いですね。
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面白いと思えることはどんどん取り入れていく
- SawanoHiroyuki[nZk]「gravityWall / sh0ut」
- 2017年6月28日発売 / SACRA MUSIC
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初回限定盤 [CD+DVD]
1620円 / VVCL-1030~1 -
通常盤 [CD]
1350円 / VVCL-1032 -
期間生産限定盤 [CD+DVD]
1620円 / VVCL-1033~4
- CD収録曲
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- gravityWall
- sh0ut
- oldToday
- gravityWall(TV size)
- gravityWall(instrumental)
- sh0ut(instrumental)
- 初回限定盤DVD収録内容
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- gravityWall
- 期間生産限定盤DVD収録内容
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- TVアニメ「Re:CREATORS」ノンクレジットオープニング映像
- 澤野弘之「Re:CREATORS Original Soundtrack」
- 2017年6月14日発売 / アニプレックス
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[2CD]
3780円 / SVWC-70267~8
- DISC 1収録曲
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- God of ink
- rE:CRe@T0RS
- Re:3$penS
- 4GL4yu8RE:E
- Hey39-udn
- RE:3343
- HERE I AM
- 2109-a8Ru件
- AL:Lu
- 高度8b6n
- 8sawOGRE6
- Layers
- re:pianohi1tars
- ∞GodMachine
- ABYSSwaltz
- Pf:Creators
- 音:9RE:eita-zu
- BRAVE THE OCEAN
- DISC 2収録曲
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- E:verydaytor1
- Pf:Creators II
- E:verydaytor2
- Pf:Creators III
- SawElephant4ゅ
- Pf:Creators IV
- E:verydaytor3
- Pf:Creators Ⅴ
- God々-ground2SAY310
- Pf:Creators VI
- E:verydaytor4
- ○DA-world2HEN火90
- God of ink(RE:Instrumental)
- HERE I AM(RE:Instrumental)
- Layers(RE:Instrumental)
- BRAVE THE OCEAN(RE:Instrumental)
- 澤野弘之 / KOHTA YAMAMOTO
「『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』ORIGINAL SOUNDTRACK」 - 2017年5月24日発売 / SME Records
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[CD]
2700円 / SECL-2163
- 収録曲
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- 9a14s(澤野弘之)
- fire9d(澤野弘之)
- sisirc(澤野弘之)
- The Brave(澤野弘之)
- public-AN(澤野弘之)
- machine-motion-investigation-squad(澤野弘之)
- 10/9sawHALF(澤野弘之)
- undone(KOHTA YAMAMOTO)
- plastic pulse(KOHTA YAMAMOTO)
- KING KAJI(KOHTA YAMAMOTO)
- hypnotize(KOHTA YAMAMOTO)
- Trust you(KOHTA YAMAMOTO)
- KATSH(KOHTA YAMAMOTO)
- Ignore the Nation... Awake My Identity(KOHTA YAMAMOTO)
- into the deep(KOHTA YAMAMOTO)
- thinking out(KOHTA YAMAMOTO)
- Pessimism(KOHTA YAMAMOTO)
- H.I.ARMY(KOHTA YAMAMOTO)
- Trust you-pf re-(KOHTA YAMAMOTO)
- 澤野弘之(サワノヒロユキ)
- 1980年生まれ、東京都出身の作曲家、編曲家。「医龍」シリーズやNHK連続テレビ小説「まれ」、「アルドノア・ゼロ」「進撃の巨人」「キルラキル」「機動戦士ガンダムUC」シリーズなど、ドラマ、アニメ、映画など映像作品のサウンドトラックを中心に、楽曲提供や編曲をするなど精力的に音楽活動を展開している。2014年春からはボーカル楽曲に重点を置いたプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk]を始動。その第1弾作品として「機動戦士ガンダムUC」シリーズの楽曲も共作したAimerと、SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer名義のアルバム「UnChild」を発表した。2015年2月にはSawanoHiroyuki[nZk]の新作「&Z」と、自身の手がけたアニメーションのサウンドトラックの中からボーカル曲のみをセレクトしたベストアルバム「BEST OF VOCAL WORKS [nZk]」をリリースしている。同年9月にSawanoHiroyuki[nZk]の1stアルバム「o1」と、澤野名義のサウンドトラックベスト「BEST OF SOUNDTRACK【emU】」を発表した。2016年5月にアニメ「甲鉄城のカバネリ」のサウンドトラックを、6月にはSawanoHiroyuki[nZk]名義でアニメ「機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096」のオープニングテーマおよびエンディングテーマを収録したシングル「Into the Sky EP」をリリース。2017年6月には劇伴を手がけたアニメ「Re:CREATORS」のサウンドトラックと、同アニメの第1期および第2期のオープニングテーマを収録したシングル「gravityWall / sh0ut」を発表する。