ナタリー PowerPush - 横浜“オシャレ”座談会

サイプレス上野とロベルト吉野 / Dorian / やけのはら

サ上とロ吉の大人宣言(やけのはら)

──NORIKIYOさんとは「BRIGHTEST HOPE」で共演されてますね。

やけのはら あの曲、すごい良かった!

サイプレス上野 NORIKIYOくんとは前も1回一緒にやってて、そのときは2人の日常を直接的な歌詞で歌ってたんですよ。で、今回もそれをもう1回やりますか、みたいな話を最初はしてたんだけど、NORIKIYOくんが「もうそういうのはやめねーか」みたいに言ってくれて。で、何度も歌詞を書き直しました。NORIKIYOくんのことは(デビュー作「EXIT」を出す前から)ずっと知ってて、元々同じようなノリだったんですけど、最近あの人がめちゃくちゃ大人になってて。それとか、俺も超影響受けましたね。

座談会風景

──へえ、いい話ですね。

サイプレス上野 あと、周りも変わってきたというか。昔だったら制作してても容赦なく飲みに連れ出されるんですけど、逆に今は子供いる友達とか、冷静になって「お前、ミュージシャンとしてこのままヤサ(サイプレス上野の作業部屋兼自宅)にいたらダメだ。出ろ」とかそういうこと言ってくれるんですよ。いまだにみんな(ヤサで)溜まってるんですけど、俺たちが制作に入って全開に忙しいときとかは、あんま来なくなった。みんなも大人になったんだなって。

やけのはら ヤバいですね。サイプレス上野とロベルト吉野の大人宣言ですか!?(笑)

ロベルト吉野 昔は、ライブ終わって泥酔して帰ってきても、(ヤサで)みんなが飲んでるから、休む場所がねーって時期がけっこうありましたからね(笑)。

あえて80'sとかに引っ張られてみよう、と思って作った(Dorian)

──Dorianさんのアルバムは、やけのはらさんがプロデュースしてるんですよね。

やけのはら 俺が提示したものをそのままやらせるって感じのプロデュースではないです。いろいろアイデア出しとか細かい諸々の進行補助って感じで。まあ、プロデュースというか手伝い。

サイプレス上野 フィクサー(笑)。

──前作は80'sをさまざまな角度から表現したアルバムでしたが、それを踏まえて、本作はどのような作品にしようと思って制作されたんですか?

Dorian 前のアルバムは、皆さんが80'sとかシティ的な感じだとか言ってくださいましたが、僕はそんなことも思ってなくて。周りがそう言ってくれたので、ああそうなのかなって感じだったんですよ。なので、今回はあえてそっちに引っ張られてみよう、と思って作った部分はありますね。

──アルバムタイトルの「Studio Vacation」ってどんな意味なんですか?

Dorian 僕は作ってるとき、1日というか何十時間も部屋のパソコンの前にいるんですよ。パンツとか靴下とか落ちてるような部屋の中で、タバコの煙が充満してて。それを、ずーーーっと何カ月も続けて。まあ、音楽やらせてもらってるんで、それは幸せで楽しいことだと思うんですけど、やっぱ気が滅入ってくるんですよ。じゃあ、この状況をうまいこといい感じに言ったら?って考えて、これはもう「Studio Vacation」だろう、と。

「summer rich」は思いっきりポップスにした(Dorian)

座談会風景

──一十三十一さんがボーカルと作詞を担当している「summer rich」について教えてください。かなりシティポップ感が強い楽曲ですね。

Dorian 今回のアルバムで歌が入るのはこの曲だけだったので、思いっきりポップスにしようと思って。シティポップみたいな要素は、全部ココに詰め込んだ感じですね。

──ボーカルや歌詞について、どんな指示をされたんですか?

Dorian 今回、初めて歌のメロディも作ったんですよ。一十三十一さんには、実際に僕がメロディを歌って送りました。詞もこういう感じでこういう言葉を使ってほしいというメモを渡して。

サ上とロ吉とDorianは表裏一体(やけのはら)

やけのはら 俺の印象だと、実は上野くんや吉野くんとDorianって、表裏一体で意外と近い感覚があるんじゃないか、と思うんですよ。作るものの打ち出しは全然違うんですけど。話を聞くに、Dorianは地元が静岡のけっこう郊外で、ヤンキーとかも多く、盗んだバイクで走ってたタイプのようなんですね。なので、俺とかよりDorianのほうが育ったノリとかは上野くんと吉野くんに近いと思うんです。同じ横浜でも俺の地域とかだと、先輩にパー券売られたとかあんまなかったし。上野くんたちはそれをそのまま表現してるんだけど、Dorianの場合は、フェイクでわざと真逆なことをやるという。

サイプレス上野 そうすね。パー券、売られましたね。「今日Chara来るから」とか言ってて来ないとか(笑)。でも俺、ヒップホップを超聴いてましたけど、山下達郎とかもすごい好きで。

やけのはら ボサノバとかオシャレなの好きだもんね。最初に会ったとき、俺が上野くんに付けたキャッチフレーズは“軽薄なオシャレ”だったし(笑)。あのあと2年ぐらい流行ったよね。

サイプレス上野 カフェとかでかかってるオシャレなCDを馬鹿にするんだけど、そういうCDを買って女の子たちからはオシャレに見られたいっていう。その相反する思いが、ずーっと頭の中でゴッチャになっちゃってて。だから、カフェラテのCMでかかってた曲とかもアナログで買っちゃったり。あと、アンチコンとかいわゆるビートがあんまない曲を持ってるっていうことで優越感を得るみたいな(笑)。そういうのがあるっすね。

やけのはら Dorianは、茶畑だからこそ、今自分でやってるような音楽に憧れるようになったんじゃないの?

Dorian いやあ、高校生の頃、許しがたいやつらがいたんですよ。そいつらは、3つしかコードを使わないような音楽をやってて。俺はそいつらに「俺はもうこんだけできるんだよっ!」って言いたくて難しいコードを覚えたんです。「Cの後に7もなんにも付かないとか、なんじゃそれ!?」って。で、そういうやつらは、だいたいサッカー部だったんです!

──ああ、静岡はサッカーが盛んですもんね。

Dorian 僕、サッカーが嫌いなんですよ。

ロベルト吉野 ホント、サッカーやってるやつは、そういうの多かったっすよ。俺、サッカー部だったんですけど、うまいヤツはイキがるんですよ。そのイキがり方がハンパなくて。そいつらはかわいい女の子とかとしゃべってるんだけど、俺なんて下っ端だったから立場的に何もできない。当時、俺はベンチ(補欠)を通り越して、むしろベンチ裏って呼ばれてました。

サイプレス上野 野球じゃねえかよ、ベンチ裏って。

一同 (爆笑)

座談会風景

サイプレス上野とロベルト吉野「YOKOHAMA LAUGHTER」 / 2011年9月14日発売 / 2300円(税込) / felicity / PECF-1028

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CD収録曲
  1. YOKOHAMA LAUGHTER
  2. (再)契り
  3. BUMP
  4. 空っぽの街角 REMIX feat. LUVRAW&BTB
  5. ★~PLAY~★
  6. BRIGHTEST HOPE feat. NORIKIYO
  7. しゅばばばJAPAN feat. ZZ PRODUCTION, NONKEY, ISOP, THROB, WATT, kamuri
  8. SEX ON THE BEACH (GUNHEAD REMIX)

Dorian「Studio Vacation」 / 2011年8月10日発売 / 2000円(税込) / felicity / PECF-1027

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CD収録曲
  1. fake vacation
  2. shower
  3. summer rich feat. hitomitoi
  4. sweet technic
  5. melty color
  6. like a wave
  7. secret promise

サイプレス上野とロベルト吉野

サイプレス上野とロベルト吉野(さいぷれすうえのとろべるとよしの)

サイプレス上野(Rap)とロベルト吉野(Turntable)が、2000年に横浜ドリームランドで結成したヒップホップグループ。通称“サ上とロ吉”。グループのコンセプトは「HIPHOPミーツallグッド何か」。「決してHIPHOPを薄めないエンターテイメント」と称される印象的なライブパフォーマンスが話題になり、ヒップホップリスナー以外からも幅広く評価されている。2007年には1stアルバム「ドリーム」をインディーズからリリースし、同年「FUJI ROCK FESTIVAL」への出演を果たした。2009年には2ndアルバム「WONDER WHEEL」を発表。その後に行われたLIQUIDROOM ebisuでのワンマンライブの模様を収録したDVD「WONDER WHEEL THE LIVE」も発売されている。

Dorian

Dorian(どりあん)

2009年にリリースされた七尾旅人×やけのはら「Rollin' Rollin'」でアレンジャーを務め、一躍注目を集めたトラックメイカー。Myspaceを通じて知り合ったやけのはらの勧めで、2009年に自主制作CD-R「Slow Motion Love」を発表する。2010年には七尾旅人、やけのはら、G.Rina、LUVRAW & BTBが参加した1stアルバム「Melodoes Memories」をリリース。同作収録曲「Morning Calling」のビデオクリップは、「MTV VIDEO MUSIC AID」のBest Dance Video部門にLADY GAGA、UNDERWORLDらとともにノミネートされている。2011年8月にはミニアルバム「Studio Vacation」をリリースした。

やけのはら

やけのはら

DJ、ラッパー、トラックメーカーなど多岐にわたる活動で注目を集めるアーティスト。DJとしては年間100本以上のパーティでフロアを沸かせ、多数のミックスCDを発表。ハードコアパンクとディスコを合体させたバンドyounGSoundsではサンプラー&ボーカル担当。2009年に七尾旅人×やけのはら名義でリリースした「Rollin' Rollin'」が話題を呼ぶ。2010年に初のラップアルバム「THIS NIGHT IS STILL YOUNG」をリリースしている。