ナタリー PowerPush - 佐藤聡美
過去の言葉と今の言葉で追う! “謎多き女”しゅがぁの正体
なんか私のことがバレてる!
──これまでの口ぶりだとサウンドデザインについては制作陣にお任せですか?
ツアーがあるのでライブで盛り上がれる曲、コールアンドレスポンスやかけ声みたいな、聴いている人も参加できるフレーズを多くしてほしいっていうことと、前向きなガールズロックがほしいって伝えたくらいですね。
──ということは「ミライナイト」のスタジオライブバージョン以外の新曲8曲は安野さん、locofrankの面々、エンドウ.さん、R・O・Nさん、レフティーモンスターさんなんかがイメージする佐藤聡美像になりますよね。
そう考えると面白いですね。よくおとなしそうって言われたりするんですけど、実はすごくテンションが高いタイプの人間なので「あっ、なんか私のことがバレてる!」って感じで(笑)。例えばlocoさんの「White Canvas」なんかは本当に王道でキャッチーな曲だと思いますし。個性のかたまりみたいな曲ばかり集まったアルバムの中にこの曲があると、アップテンポな激しい曲なんですけど、なんかホッとできるんですよ。
──基本的に英詞曲を書いているlocofrankの森(勇介)さんが「今よりも素敵な 未来が待ってるはずよ、きっと」「いつか、この手につかんでみせるわ」って日本語、しかも女の人の言葉で詞を書いているのも味がありますよね。
すごくかわいらしくて前向きな詞ですよね。locoさんも、ほかの作家の皆さんも、私の中にあるポジティブな面を本当にカッコよく歌にしてくださっていて。もともと「何も私が歌わんでも」の人なので、自分の歌唱力にすごく自信があるわけでもない。私が皆さんに届けられるのは、自分の中にあるポジティブさだけだと思っているので。そういう私をイメージした曲、しかも明るさや元気さを相手に押しつけるんじゃなくて「一緒に前を向いて歩いて行こう」って寄り添える曲をいただけたことは、皆さんからの最高のプレゼントだと思ってます。
──自信がないって繰り返してますけど、歌うまいですよね。特に興味深かったのが英語の発音で。
日本語英語(笑)。
──言ってしまえばそうなんですけど(笑)、カタカナっぽく歌ってるのは意図的ですよね。声優さんだけに英語圏の人の発音をマネろって言われればマネられただろうし。その日本語英語が言葉のアタックを強くしているから曲が威勢よく聞こえるし、ジャパニーズパンクらしさを強調しているなとも思ったんです。
よかったあ(笑)。確かに英語っぽく歌ったり、崩して歌ったりすることでグルーヴ感をめっちゃ出す、みたいなテクニックもあるとは思うんです。でも音を強くしたかったし、あと音楽活動の一方で声優のお仕事もしているので。英語の部分も含めて広い意味で“日本語”をしっかり伝えたかった。正直な話「カッコよく英語を歌うの恥ずかしー」みたいな気持ちもあったんですけど(笑)、やっぱり言葉ははっきりさせたかったんですよね。
みんなでみんなのレベルを上げられたらいいな
──このミニアルバムをきっかけに佐藤さんのファンがパンクスになったりしたら面白いですよね。
いいですよね! 私自身、さっき挙げていただいたアーティストさん以外の音楽も雑食に聴いていて。友達から教わったり、CMで観て気になったりした曲はとりあえず全部聴いてみようと思っているんです。今はマンウィズ(MAN WITH A MISSION)を聴いて「超カッコいい!」「でもなんでオオカミなんだろう?」ってなったりしてますし(笑)。
──あと、ある取材ではFACTを聴いているとも言ってましたよね。
聴いてます聴いてます(笑)。知り合いに「カッコいいよ」って教えてもらって聴いてみたら、サウンドももちろんなんですけど、ボーカルの方が特にすごくて。体にイナズマが走ったっていうと大げさなのかもしれないんですけど「なんだこの声っ!?」ってすごく衝撃を受けました。そうやって、先入観なしにいろんな音楽を聴いているとステキな出会いってあるはずなので「☆」もそういう1枚になればいいなって思ってます。声優・佐藤聡美のファンの方がHAWAIIAN6さんやlocoさんを知るきっかけになったり、反対にHAWAIIAN6さんやlocoさんのファンの方が「誰これ?」って気にしてくれたりしたらいいなって。「これが私のすべてです!」というアルバムではなくて余白を残したというか。「このアルバムをきっかけにさらに楽しめるよ」っていう作り方をしたつもりなんです。
──その楽しみ方の余白の1つにライブハウスツアーがありますよね。
ライブを意識して作ったアルバムなので「ツアーをやる」って聞いたときから「ライブハウスでやりたい」って言ってたんですけど、実はライブハウスで歌った経験がほとんどなくて……。
──「けいおん!」関連のライブでさいたまスーパーアリーナのステージにまで立ったことがあるのに(笑)。
逆にライブの経験ってそれくらいしかないので、あまりに規模が違いすぎてどうしようって(笑)。
──実際どうしましょう?
佐藤聡美のツアーでは、バンドサウンドに重きを置く予定なので、あえてサイリウムを持たないスタイルのライブを提案したいなと思っています。
──いいですね。「☆」の収録曲自体、拳を振り上げたりポゴダンスをしたりしながら聴くのが似合うサウンドなわけだし。
「サイリウム必須のこのご時世に大胆なことするね」って言われたりもするんですけど、光の演出はお客さんにではなくて、プロである照明さんにしっかりお願いしたいなと思ってます。その分お客さんには、拳という自分自身の身体を使ってめいっぱい楽しんでいただきたいなって。それは「☆」っていうアルバムを作ったからできる挑戦かなって思ってます。
──佐藤さんにはもう1つ挑戦がありますよね。お客さんがサイリウムという武器を持たない代わりに、佐藤さんは“勇者の剣”ことテレキャスターを持つことになる(参照:“レベル1の勇者”佐藤聡美、“勇者の剣”を手にソロデビュー)。
そうなんですよお……。
──直近のインタビューではCとGがうまく押さえられないって繰り返してますけど……。
だから今はまだ「この武器、自分にダメージがくるんじゃないか?」って感じなんですけど(笑)、私もそういう挑戦をするので、皆さんにもサイリウムなしっていう挑戦をしていただいて。一緒に新しい楽しみ方を探しながら、みんなでみんなのレベルを上げられたらいいなって思ってます。
- 1stミニアルバム「☆」 / 2014年6月18日発売 [CD+DVD] 3024円 / スターチャイルド / KIZC-253~4
- 1stミニアルバム「☆」 / 2014年6月18日発売 [CD+DVD] 3024円 / スターチャイルド / KIZC-253~4
- CD収録曲
-
- ♡’s☆cReaM♪
[作詞・作曲・編曲:エンドウ.(GEEKS)] - さよならギャラクシー
[作詞・作曲・編曲:安野勇太(HAWAIIAN6)] - Starlight Fortune
[作詞:eNu / 作・編曲:R・O・N] - 魔法のようなもの
[作詞・作曲・編曲:安野勇太(HAWAIIAN6)] - sweet! sweet!! sweet!!!
[作詞・作曲・編曲:エンドウ.(GEEKS)] - You Know
[作詞・作曲:宮崎誠 / 編曲:宮田リョウ] - White Canvas
[作詞・作曲:森勇介(locofrank)/ 編曲:locofrank] - オレンジ days
[作詞・作曲・編曲:エンドウ.(GEEKS)]
Bonus Track
- ミライナイト -Studio Live ver.-
[作詞:moyu / 作曲:KEYTARO / 編曲:Coral Echo、しゅがぁず。]
- ♡’s☆cReaM♪
- DVD収録内容
-
- 勇者サトミ Lv.1 ~アーティストデビューの章~
- 「☆」メイキングMV
佐藤聡美(サトウサトミ)
宮城県仙台市出身の女性声優、ボーカリスト。2007年に声優デビューを果たし、2008年にはアニメ「地獄少女 三鼎」の御景ゆずき役、2009年からは「けいおん!」シリーズの田井中律役を務め、知名度を全国区のものにする。「けいおん!」シリーズの劇中バンドにして、出演声優陣で結成された放課後ティータイムが歌う楽曲は軒並みビッグヒットを記録し、2010年には埼玉・さいたまスーパーアリーナでのライブ「けいおん!!ライブCome with Me!!」に出演。関連楽曲を歌うだけでなく、劇中の役と同じドラムプレイも披露する。以降も人気アニメの主要キャストを歴任する一方で、2014年2月、シングル「ミライナイト」でアーティストデビュー。そして同6月には安野勇太(HAWAIIAN6)、ピエール中野(凛として時雨)、原昌和(the band apart)、locofrankらが参加する1stミニアルバム「☆」(スター)をリリースした。