ナタリー PowerPush - 佐藤聡美
過去の言葉と今の言葉で追う! “謎多き女”しゅがぁの正体
アニメ「けいおん!」シリーズの田井中律役などで知られる声優・佐藤聡美がミニアルバム「☆」(スター)をリリースした。
佐藤の1stミニアルバムとなる今作には豪華制作陣が参加。安野勇太(HAWAIIAN6)、森勇介(locofrank)、エンドウ.(GEEKS)らが詞曲を提供し、そのlocofrankの面々やエンドウ.、さらにはピエール中野(凛として時雨)、原昌和(the band apart)など、これまた豪華なプレイヤー陣が彼女の脇を固めている。
自身も語るとおり「『けいおん!』メインキャスト最後のデビューアーティスト」となった佐藤はなぜ今ソロボーカリストの道を選ぶのか? そしてなぜ、スタークリエイターたちとともにハイレベルなガールズパンクアルバムを作り上げたのか? その理由に迫るとともに彼女の横顔を追った。
取材・文 / 成松哲
何も私が歌わんでも
──過去のインタビュー記事を掘ってみて気付いたんですけど、佐藤さんって謎多き女なんですよ。
謎ですか?
──例えば「以前は歌うことについて、あまりポジティブな気持ちを抱けていなかった」と繰り返していたりして。
そうですね。
──でも2月にはシングル「ミライナイト」でCDデビューしていて、今月ミニアルバム「☆」も発表した。なのでまずは「佐藤聡美はなぜ歌を苦手とするようになり、そしてそれでもなぜ歌うのか」。この謎を解かせてください。
おー! なんか壮大な感じがします(笑)。
──ではその壮大な物語の幕開けから(笑)。小さい頃、楽器の経験ってありました?
小学校に入る前くらいから中学3年の受験の前までエレクトーンを習ってました。
──10年近く。
そうなるんですけど、本格的に弾けますっていう感じでは全然なくて(笑)。ピアノを習ってた子みたいに「バイエルをしっかりやりました」っていうわけでもないですし、グレード試験(エレクトーンの昇級試験)も「1回くらい受けたことがあったかな?」みたいな感じですし。楽器屋さんや本屋さんに行って「エレクトーンで弾くSPEED」みたいな楽譜を見つけてきては先生に「この曲を弾いてみたいです」って渡して、弾き方を教わっていただけといえばだけなんです。しかもその楽譜にはフロッピーディスクが付いていて、それをエレクトーンにセットすると、音色も自動的に設定してくれるという。すごくマイペースに弾いてました(笑)。
──でも、なんかいい音楽体験ですね。自分の好きな曲のスコアを自分で掘ってきて、プロの指導のもと実際に弾いてみるのって楽しそうだし。
音楽を聴くのも、エレクトーンを弾くのもすごく好きだったんですけど、とにかく歌だけは……。クラスで合唱とかをすると必ず1人くらいすごく歌の上手な子がいるじゃないですか。自分の歌がうまいと思ったことはなかったこともあって、そういう子の歌を聴いていればいいかなあって思ってたんです。友達とカラオケに行っても2、3曲歌ったら、あとはタンバリン係(笑)。みんなを盛り上げたり、「何歌おうかな?」って言ってる友達に「これ歌ってよ!」って言ったりするほうが好きでした。
──「☆」を聴けばわかる話なんですけど、歌がヘタだというわけではもちろんない。当時も友達に笑われたとかっていう話では……。
ないんですけど「周りにもっとうまい人がいるんだから、何も私が歌わんでも」みたいな感じというか……。
──あはははは(笑)。
しかも歌わなくてもカラオケを楽しめることに気付いてからはホントに歌わないようになっていたので、いざお仕事で「歌ってください」ってお話をいただくようになったとき「あれっ!?」ってなっちゃってました(笑)。
皆さん、歌うまいもんなあ
──でも佐藤さんが声優になった頃には、キャラクターソングってすでにアニメ関連アイテムの重要なピースになっていたし、自身の名義で歌う先輩声優さんもいましたよね?
たくさんいらっしゃいました。同じスターチャイルドで言うなら堀江由衣さんは私が専門学校に通っていたときから音楽活動をなさっていましたし。
──堀江さんはまさにそうですよね。声優としてはもちろん、アーティストとしても息の長い人気を誇っている。まだ“17歳”だけど(笑)。
そうだっ! 私のほうが“お姉さん”でした(笑)。あとキャラソンでいうと「魔法先生ネギま!」の「ハッピー☆マテリアル」がすごくヒットしていて。私が学生だった頃、声優になりたての頃って、声優さんのCDやキャラクターソングがランキングの上位にくる先駆けみたいな時代だった気がします。
──ということは当時の新人声優・佐藤聡美さんも、キャリアを積んで人気キャラクターに声をあてるようになれば、いずれ歌う機会が巡ってくることは想像できていたはずですよね。
そのはずなんですけど、まったくイメージになかったんですよ。「けいおん!」に出会うまで声優と音楽、私と音楽がまったく結びついてなくて。
──なぜそこで見て見ぬフリを(笑)。
ふふふふふ(笑)。当時は新人だったし、頭が完全にお芝居のほうにしか向かってなかったんです。うちの事務所(青二プロダクション)にも白石涼子さんとか野中藍さんとか音楽活動をやっている先輩はいて、そのポスターが貼ってあるんですけど、その頃は「そういう先輩もいらっしゃるんだなあ。すごいなあ」っていう気持ちでした。「皆さん、歌うまいもんなあ」って。
──だから「何も私が歌わんでも」と(笑)。
中学生や高校生の頃とほぼほぼ同じことを思ってました(笑)。
- 1stミニアルバム「☆」 / 2014年6月18日発売 [CD+DVD] 3024円 / スターチャイルド / KIZC-253~4
- 1stミニアルバム「☆」 / 2014年6月18日発売 [CD+DVD] 3024円 / スターチャイルド / KIZC-253~4
- CD収録曲
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- ♡’s☆cReaM♪
[作詞・作曲・編曲:エンドウ.(GEEKS)] - さよならギャラクシー
[作詞・作曲・編曲:安野勇太(HAWAIIAN6)] - Starlight Fortune
[作詞:eNu / 作・編曲:R・O・N] - 魔法のようなもの
[作詞・作曲・編曲:安野勇太(HAWAIIAN6)] - sweet! sweet!! sweet!!!
[作詞・作曲・編曲:エンドウ.(GEEKS)] - You Know
[作詞・作曲:宮崎誠 / 編曲:宮田リョウ] - White Canvas
[作詞・作曲:森勇介(locofrank)/ 編曲:locofrank] - オレンジ days
[作詞・作曲・編曲:エンドウ.(GEEKS)]
Bonus Track
- ミライナイト -Studio Live ver.-
[作詞:moyu / 作曲:KEYTARO / 編曲:Coral Echo、しゅがぁず。]
- ♡’s☆cReaM♪
- DVD収録内容
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- 勇者サトミ Lv.1 ~アーティストデビューの章~
- 「☆」メイキングMV
佐藤聡美(サトウサトミ)
宮城県仙台市出身の女性声優、ボーカリスト。2007年に声優デビューを果たし、2008年にはアニメ「地獄少女 三鼎」の御景ゆずき役、2009年からは「けいおん!」シリーズの田井中律役を務め、知名度を全国区のものにする。「けいおん!」シリーズの劇中バンドにして、出演声優陣で結成された放課後ティータイムが歌う楽曲は軒並みビッグヒットを記録し、2010年には埼玉・さいたまスーパーアリーナでのライブ「けいおん!!ライブCome with Me!!」に出演。関連楽曲を歌うだけでなく、劇中の役と同じドラムプレイも披露する。以降も人気アニメの主要キャストを歴任する一方で、2014年2月、シングル「ミライナイト」でアーティストデビュー。そして同6月には安野勇太(HAWAIIAN6)、ピエール中野(凛として時雨)、原昌和(the band apart)、locofrankらが参加する1stミニアルバム「☆」(スター)をリリースした。