ナタリー PowerPush - 指田郁也

AORの魅力伝えたい 「バクマン。」エンディングテーマ

昨年10月に鮮烈なデビューを飾り、その卓越したボーカリゼーションとソングライティング能力が大きく評価されているシンガーソングライター、指田郁也。5カ月ぶりのリリースとなる2ndシングル「パラレル=」は、NHK Eテレのアニメ「バクマン。」(第2シリーズ)のエンディングテーマとしてオンエアされている爽やかなAORナンバーだ。

ナタリー2度目の登場となる今回は、AORというジャンルを今のJ-POPシーンに鳴り響かせようとする自身の思いや、デビュー以降より明確になってきたという歌に対するこだわり、そしてカップリングに収録される、活動初期の大切な曲「君とさよなら」のことなどをたっぷりと語ってもらった。

取材・文 / もりひでゆき インタビュー撮影 / 中西求

誰かの作品と自分の作品が合わさるのはすごく楽しい

──「パラレル=」はどのように生まれた曲ですか?

インタビュー風景

これはアニメ「バクマン。」のために書き下ろした曲です。アニメ制作サイドから、主人公の真城最高くんと亜豆美保ちゃんの関係をテーマにしてほしいというリクエストがあったので、内容に沿った恋愛の歌詞にしました。夢に向かっていったん離れることを決めた2人が、夢を叶えたときに一緒になるっていうストーリーで。

──アニメの内容にかなり寄り添った歌詞ですよね。

そうですね。原作を読んだんですけど、目標を追いかけるっていう内容にすごく共感できたんですよ。「バクマン。」はマンガ家の話ですけど、僕も歌手として目標に向かっているので。だからアニメを観ている方はもちろん、アニメを離れたところでも楽しんでいただける曲になったと思います。恋愛としてだけでなく、今の自分と将来の自分を当てはめてみるっていうのもひとつの聴き方だと思いますし。

──テーマを与えられての曲作りは楽しいものですか?

すごく刺激がありますね。「バクマン。」のような誰かの作った素晴らしい作品と、自分の作品が合わさって新たなものができるっていうのはすごく楽しいことだと思います。それにアニメに寄せて書いているとは言え、結局はそこに自分の姿も入ってくるので、フィクションなんだけどノンフィクションでもあるっていう感じもしますし。

この曲をきっかけにAORの世界を知ってもらえたら

──今回、サウンドには指田さんの好みが明確に出ていますね。

僕の好きなジャンル、AORにガッツリ寄せた曲にして、そこにポップな歌詞を入れるっていうのを最初の目標にしていたんです。もちろん、今の若い人でも聴きやすいようにっていうところは意識しましたけど、大人の方からするとかなり懐かしいサウンドになってるんじゃないかな。聴きどころのひとつは、世界的に活躍されている本田雅人さんのサックスソロですね。今のJ-POPにはない感じが出てると思います。

──指田さんはAORのどんなところに惹かれますか?

インタビュー風景

AORにもジャズ系とかフュージョン系とかいろいろジャンルがあるんですけど、僕が好きなのはポップスに寄ったAORなんですよ。例えば、ボビー・コールドウェルとかデイヴィッド・フォスターのような、メロディのラインがキレイで心地良い雰囲気が好きで。AORのすごくシンプルなんだけどサウンドはかなりこだわって作られていて、なおかつ聴きやすいものになっているっていうところに惹かれるんだと思うんです。今回の「パラレル=」はちゃんとそっちに寄せられたかなって思います。ちょっとウエストコーストな感じというか。

──確かにそんな景色が見えます。ものすごく気持ち良い仕上がりだと思いますよ。ただ、若い世代だとAORになじみがない人も多いだろうし、今のJ-POPシーンでそこを打ち出すのって結構冒険でもあるような気がします。

そうですよね。しかも果たしてアニメのエンディングに合うのかなっていう、そういう不安は僕にもありました。でも曲ができてみて、アニメと一緒になった映像を観たときにピッタリはまってたんですよ。これは全然アリだなと思えたんです。それに、AORにはいい曲がホントにたくさんあるので、この曲をきっかけにそういう世界のことを知ってもらえたらいいなっていう思いもあったんです。例えばボビー・コールドウェルにはヒット曲もいっぱいあるから、きっと街中で耳にしたこともあると思うんですよ。で、それがAORっていうジャンルの曲なんだって知ってもらえたらいいなって。

──なるほど。これをきっかけにAORブームが来ちゃったりして。

AORブーム! 来てほしいですねえ(笑)。そもそもアニメのテーマ曲でAORって今はほとんどないと思うので、テレビの前のちっちゃい子がこれを歌ってくれたりしたら、それだけで面白いなあってすごく思います。

2ndシングル「パラレル=」 / 2012年3月21日発売 / 1000円(税込) / Warner Music Japan / WPCL-11050

  • Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. パラレル=
  2. 君とさよなら
  3. パラレル= (instrumental)
  4. 君とさよなら (instrumental)

初回プレス分のみ「バクマン。」描き下ろしトレカ封入(3種類のうち1枚ランダム封入)

指田郁也(さしだふみや)

1986年東京生まれ。3歳からクラシックピアノを習い、15歳から作曲活動を開始。2010年にワーナーミュージック・ジャパンが主催する「VOICE POWER AUDITION」で、約1万人の応募者の中からグランプリを受賞する。同年10月にシングル「bird / 夕焼け高速道路」でデビュー。同時期に東京・日本武道館で開催された「WARNER MUSIC JAPAN 100年MUSIC FESTIVAL」ではオープニングアクトとして出演し、新人とは思えない堂々としたパフォーマンスを披露した。2012年3月、2ndシングル「パラレル=」をリリースする。