佐咲紗花のアニソンカバーアルバムシリーズの第3弾「SAYAKAVER. ~triangle~」が3月23日にリリースされた。
佐咲は昨年6月よりアニソン×アコースティックカバー企画「SAYAKAVER. ~triangle~」と銘打って、ピアニストのパスタとバイオリニストの星野沙織とのアコースティックアレンジによる一発撮りのカバー動画を毎月公開。「牙狼<GARO>」のオープニングテーマ「牙狼~SAVIOR IN THE DARK~」や「探偵オペラ ミルキィホームズ」のオープニングテーマ「正解はひとつ!じゃない!!」といったアニメや特撮ドラマの歴史に刻まれた名曲から「呪術廻戦」オープニングテーマ「廻廻奇譚」や「BEASTARS」第2期オープニングテーマ「怪物」といった近年のヒットナンバーまで全9曲の動画を発表してきた。アニソンカバーアルバムシリーズ第3弾には、これらにテレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」第4期オープニングテーマ「ポラリス」のカバーを加えた計10曲が収録される。
少数編成のシンプルなアレンジによって、佐咲のシンガーとしての実力が際立ったこの企画。音楽ナタリーでは彼女にインタビューを行い、企画の発足経緯や選曲理由、一発勝負のレコーディングについて話を聞いた。
取材・文 / 須藤輝
佐咲紗花「SAYAKAVER. ~triangle~」収録曲
- 正解はひとつ!じゃない!!
テレビアニメ「探偵オペラ ミルキィホームズ」オープニングテーマ(2010年)
オリジナル:ミルキィホームズ - 花ハ踊レヤいろはにほ
テレビアニメ「ハナヤマタ」オープニングテーマ(2014年)
オリジナル:チーム“ハナヤマタ” - カレンダーガール
テレビアニメ「アイカツ!」オープニングテーマ(2014年)
オリジナル:わか・ふうり・すなお from STAR☆ANIS - 徒花ネクロマンシー
テレビアニメ「ゾンビランドサガ」オープニングテーマ(2018年)
オリジナル:フランシュシュ - 廻廻奇譚
テレビアニメ「呪術廻戦」オープニングテーマ(2020年)
オリジナル:Eve - 怪物
アニメ「BEASTARS〈ビースターズ〉」2期オープニングテーマ(2021年)
オリジナル:YOASOBI - Stay Alive
テレビアニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」後期エンディングテーマ(2016年)
オリジナル:エミリア(CV:高橋李依) - 回レ!雪月花
テレビアニメ「機巧少女は傷つかない」エンディングテーマ(2013年)
オリジナル:歌組雪月花 - ポラリス
テレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」第4期オープニングテーマ(2019年)
オリジナル:BLUE ENCOUNT - 牙狼~SAVIOR IN THE DARK~
テレビドラマ「牙狼<GARO>」オープニングテーマ(2006年)
オリジナル:JAM Project
この曲をアコースティックでやったらどうなっちゃうの?
──今回の「SAYAKAVER. ~triangle~」は、過去2作のカバーアルバムとは趣向が違いますね。まずピアノとバイオリンのアコースティックアレンジによる一発撮りで、なおかつその動画と音源を毎月YouTubeとデジタル音源で配信していくという形ですが、この企画はどのようにして生まれたんですか?
きっかけは、2020年の終わりにやった「SAYABEST 2010-2020」(2020年11月発売のベストアルバム)のリリースイベント的な配信ライブですね。この年は私のデビュー10周年で、今回ピアノを弾いてくれたパスタくんと2人で2月から毎月アコースティックライブをやる予定だったんです。でも、コロナ禍で3月以降の開催が難しくなってしまったこともあり、オンラインで何度かアコースティックライブを届ける試みをした経緯もあって、ベスト盤のリリース記念配信もパスタくんと2人でお届けすることになったんです。
──はい。
そのベスト盤のために10周年を象徴する曲として園田健太郎さんに書き下ろしていただいた「ダイアログ」という新曲が、弦のアレンジにすごくこだわっていたんですよ。なので「私が激推ししているバイオリニストがいるので、その子を加えて3人でやりたいです」とプロデューサーに直談判して、星野沙織さんを引き入れることに成功しまして。そしたら、会場で直にライブを観終わったプロデューサーが「この3人のケミストリーを1回だけで終わらせるのはもったいない」と言ってくださって、今回の「SAYAKAVER. ~triangle~」という企画につながったんです。
──パスタさんは今おっしゃったマンスリーアコースティックライブの相棒であり、佐咲さんのバックバンドのメンバーでもありますが、星野さんとはどういうお知り合いなんですか?
ゲーム仲間です(笑)。共通でお世話になっている先輩ギタリストがいて、その方を介して知り合いまして。普段からゲーム中にボイスチャットでおしゃべりしていたので人となりもよくわかっていましたし、演奏もめちゃくちゃライブ映えするというのを知っていたので、ずっと共演したかったんですよ。
──選曲に関しては本作でも佐咲さんのオタクぶりが反映されていますが、過去2作と比べると新しめの曲が多いですね。
今回は毎月1曲ずつ配信していく形だったので、その反応も見つつ選曲していった結果、当初予定していたラインナップとは違ったものになりました。もちろん全曲、「私が好きだから」という基準で選んでいるんですけど、普段だったらもっと年代に広く幅を持たせるんですよ。でも今回は、今まさにたくさん聴かれているフレッシュな曲や、めちゃくちゃ懐かしいというよりは微妙に懐かしい曲のほうがフィットしそうだと思ったんです。
──アコースティックアレンジにするという点がある種の制約になったりは?
むしろ「この曲をアコースティックでやったらどうなっちゃうの?」「これ、3人で再現できるんだ?」みたいな、アコースティックバージョンが想像できない曲のほうが変化があって面白いんじゃないかなって。その1つが「廻廻奇譚」だったりもしますね。
──2枚目のカバーアルバム「SAYAKAVER.2」(2020年1月発売)リリース時のインタビューで、「SAYAKAVER.」には“紗花によるカバー(COVER)”と“紗花バージョン(VER.)”という二重の意味があるとおっしゃっていましたが、そのコンセプトは一貫していますね(参照:佐咲紗花「SAYAKAVER.2」インタビュー)。
やっぱりそこにカバーをする意味があると思っていて。原曲をリスペクトしつつ、それとは別個の曲としても楽しめる。そういうものを今回も目指しています。
3人の世界に入ることができた
──アルバムの収録曲順は配信での発表順にほぼ沿っていますが、最初に投稿された「正解はひとつ!じゃない!!」から絶妙な懐かしさがありますね。と同時に「これ12年前の曲か……」みたいな感慨も。
早いですねえ、時が経つのは。
──この「正解はひとつ!じゃない!!」と、続く「花ハ踊レヤいろはにほ」「カレンダーガール」はいずれも女性声優グループによるアッパーな楽曲です。それをアコースティックでエレガントに、テンション的にはミディアムバラードに近い感じに仕上げていて、とても新鮮でした。
この3曲目あたりまでは、アコースティックだからこその違いを出そうかどうしようか、いろいろ思案していた頃で。元気いっぱいな原曲を、この音数と楽器のバランスで、39歳の佐咲紗花がカバーするならどういう形がふさわしいのかを考えましたね。あと序盤にグループ曲が続いたのは、まだ一発撮りに慣れていなかったからというのもあって。私は原曲をあまりにもたくさん聴きすぎているので、ともするとボーカルスタイルも似通ってしまいがちなんですよ。でも、グループ曲を1人で表現するとなれば自ずと別個のものにはなるし、そのグループのメンバーそれぞれの素敵な色を自分なりに消化してアウトプットしたかったんです。とはいえ、やっぱり一発撮りの緊張感がありすぎて、いっぱいいっぱいだったんですけど(笑)。
──そうなんですか? 確かに歌う前は緊張感がありましたが、歌い出してからはとてもリラックスしているように見えました。
それは、2人のおかげですね。パスタくんはバンドメンバーとして一緒にいる時間も長くなってきましたし、星野さんはプライベートでお付き合いもあるので。「お二方のお力を拝借して……」みたいにへりくだるのではなく、本当にミュージシャン仲間として一緒にジャムっているというか、セッションの延長のような感覚で歌うことができました。3人の位置関係にしても「triangle」に、つまり正三角形に近くなるように、お互いが必ず視界に入るように配置してもらったんですよ。それもあって、演奏と歌が始まった瞬間から3人の世界に入ることができました。
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誰か正解を教えて!