SARD UNDERGROUND「ZARD tribute Best Selection」インタビュー|5年かけてつかんだ、ZARDを歌い継ぐ覚悟

SARD UNDERGROUNDが、デビュー5周年記念作品としてZARDのトリビュートベスト「ZARD tribute Best Selection」を3月20日にリリースする。

“ZARDの作品を後世に伝える存在”として2019年に活動をスタートさせ、これまで3枚のトリビュートアルバムやオリジナル楽曲を発表してきたSARD UNDERGROUND。今作には「負けないで」「揺れる想い」「マイ フレンド」といったZARDの代表曲に、「Just believe in love」「GOOD DAY」という2曲の初カバーを加えた全14曲が収録される。音楽ナタリー初登場となるこのインタビューでは、アルバムの聴きどころはもちろん、デビューからの5年の歩みを振り返ってもらい、自身の成長や変化について語ってもらった。

取材・文 / 小林千絵

ZARDの曲を歌い継ぐことのプレッシャー

──デビューからの5年間は早かったですか? それとも長くて遅く感じましたか?

神野友亜(Vo) めちゃくちゃ早かったです。

杉岡泉美(B, Cho)坂本ひろ美(Key, Cho) うんうん!

神野 最初は長く感じていた気がするんですよ。メンバーと仲よくなる前は自分の中ですべての感情を完結させていたので、その分いろいろと考える時間も多くて。でも今は2人になんでも話せるし、全部を共有するようになったら、すべてのスピードが早くなっていきました。

坂本 それもあるし、目の前のことに無我夢中で取り組んでいたらあっという間に時間が過ぎていったなという感覚もあります。

杉岡 私も最初はメンバーとの距離感もあんまりつかめていなかったし、こういうインタビューもソワソワしながら受けていたんですが、今は心強い仲間になっているので、もうインタビューも楽しくできています。

──よかったです。このインタビューもぜひ楽しんでください。

杉岡 はい!

──SARD UNDERGROUNDは“ZARDの作品を後世に伝える存在”として、2019年にアルバム「ZARD tribute」でデビューを果たしました。結成当初、ZARDの作品を歌い継ぐことにプレッシャーや不安はありませんでしたか?

神野 すごくありました。最初の作品からZARDさんの曲をカバーさせていただいて、その楽曲でライブもさせていただいたんですが、まだ自分たちの色も見つかっていない状態で。自分を出すべきなのか、ZARDさんに似せようとがんばって歌ったらいいのか全然わからなくて、ZARDさんの曲をカバーする意味をずっと考えていました。ZARDさんを広い世代に伝えていくといっても、私たちはまだ無名だし、どんな気持ちで歌ったらいいんだろうって。いろいろ考えて不安になっていました。

SARD UNDERGROUND

SARD UNDERGROUND

──その不安はどうやって乗り越えたのでしょうか?

神野 ライブの回数を重ねていくうちに、少しずつ解消されていきました。イベントでファンの方から直接「(坂井)泉水さんが亡くなってからZARDの曲を聴けずにいたけど、SARD UNDERGROUNDのカバーを聴いてまた聴けるようになりました」とか、そういう声をいただくようになって。そうやって徐々に「あ、私たちが演奏していていいんだ」と思えるようになって、堂々と、楽しく活動できるようになりました。

杉岡 私も、みんなの応援の声があるからがんばれているなと思います。

坂本 ファンの方から直接もらう言葉って本当に大きくて。「SARD UNDERGROUNDを知ってからZARDの曲を聴くようになった」という方がいたり、「親子で聴いています」と言ってくれる方がいたり。

神野 「子供がSARD UNDERGROUNDが好きで、(イベントに)連れてくるうちに私も好きになりました」と言ってくださる方もいるんですよ。

坂本 そういう1つひとつがすごく励みになるし、がんばっていてよかったなと思います。

5年間の活動での成長

──ZARDに似せるべきか、自分たちの色を出していくか悩んでいたとおっしゃっていましたが、神野さんのボーカルは5年間でどんどん変化しています。歌い方の変化をご自身ではどのように考えていますか?

神野 言い訳はしたくないんですけど、結成当初のライブは本当に緊張していて喉が震えてしまって。うまく歌えないし、ピッチも取れないし、「本当はこんなんじゃないのに」と思いながら歌っていたんです。もちろん実力も全然足りていなかったですし。そのときSNSに「めっちゃ下手」というコメントをたくさん書かれたんです。それがめちゃくちゃ悔しくて、すっごく練習しました。私、負けず嫌いなので。

──ご自身の色と、坂井泉水さんの歌声との距離感についてはどのように考えていますか?

神野 最初は似せようと思っていたんですが、似せるだけじゃダメだなと思うようになっていって。曲やパートによって、「ここはSARD UNDERGROUNDらしく」「ここはZARDさんっぽく」と使い分けるようになりました。

──杉岡さん、坂本さんは、ご自身がこの5年間で特に成長や変化をしたなと思うところはどこですか?

杉岡 演奏に感情を乗せられるようになってきたなと思います。昔はテンポに合わせて演奏することで精いっぱいだったんですけど、今はちょっとずつ音に自分の色を付けられるようになってきたかなと。

坂本 最初は自分が間違えないことばっかり考えていました。でもライブを重ねることで今は余裕が出てきて、歌を聴いたり、ほかの楽器の音を聴いたりできるようになってきて。それによって演奏に気持ちも乗せやすくなりました。

神野 一体感も生まれますしね。私も最初は自分のパートのこと以外考えられませんでした。

杉岡 今思えば、私も最初の頃は歌声すらあんまり聴けていなかったと思います。最近はしっかり友亜ちゃんの歌声を聴きながら演奏できています。

「坂井泉水さんの歌声は深いのに甘い」

──結成から5年経った現在、SARD UNDERGROUNDがZARDを歌い継ぐ意味や理由をどのように考えていますか?

坂本 ZARDさんには本当にいい曲がたくさんあるから、ZARDさんを知らない私たちと同世代の方や、もっと若い方にも届けたいなと思っています。

神野 ライブで届けられるということも大きいと思うんですよ。生で聴いてもらうことでZARDさんの曲の壮大さや歌詞の世界観がさらに伝わると思う。私たちの演奏をきっかけに、広い世代の方にZARDさんの曲をもっと知ってもらえたらいいなと思います。

──そんな中でデビュー5周年記念アルバム「ZARD tribute Best Selection」が完成しました。できあがった率直な感想を教えてください。

神野 改めて、ZARDさんの曲をカバーさせていただけるのがうれしいです。あとは、ZARDさんは本当にすごいなって。言葉選びも優しいし、その言葉を歌っている歌声も歌詞ごとに全然違う。その歌声には透明感もあって、深いのに甘い。本当に唯一無二の歌声だと思います。

神野友亜(Vo)

神野友亜(Vo)

杉岡 どの曲の歌詞も、前向きな気持ちにさせてくれるような言葉ばかり。個人的には、最近の音楽って歌詞よりもノリを重視している曲が多いように感じていて。実際私もZARDさんをカバーさせてもらうまでは、ノリで音楽を聴くタイプだったんですが、ZARDさんに出会ってから「歌詞って大切なんだな」と思ったので。このアルバムを聴くときには歌詞を意識しながら聴いてもらえたらなと思います。

──今作では、「ZARD tribute」でカバーしていた楽曲もアレンジを変えて再レコーディングしたことで、全曲がオリジナルに近いアレンジになりました。そのうえで意識したことはありますか?

神野 SARD UNDERGROUNDらしさは残しつつも、ZARDさんの色は消したくなかったので、「これがZARDサウンドだ」と思ってもらえるように、ボーカルのアクセントや強弱もオリジナルを踏襲するようにしました。伝えたい気持ちや言葉があるからこその歌い方だと思うので、そこで歌い方を変えてはいけないなって。原曲をたくさん聴き込んでレコーディングに挑みました。

坂本 リズムは正確なんだけど、ちょっと後ろめに取るんですよね。そのリズムの取り方はずっと変わらずに意識しています。

杉岡 今、ろみさん(坂本)が言っていたみたいに、後ろ後ろに音を奏でるというのはもちろんなんですけど、「ZARD tribute」でのアレンジに比べてオリジナルのテンポはゆっくりなので、感情を乗せるということも意識しながら演奏できたかなと思います。