ナタリー PowerPush - 紗羅マリー
“音楽の先生”渡辺俊美と奔放対談
ギリギリのラインで言葉を紡いだ「HONEY」
──そんな数々の素敵な経験を踏まえた上でリリースされた新曲が、「HONEY」なんですね。
紗羅 はい。今までリリースしていた曲は、言ってしまえば人任せな部分が多かったんですよ。そんな中、自分でできることがもっとあるんじゃないかって思うようになったんです。その時期に、仕事やプライベートでイライラしたり、考えることがたくさんあったことも影響して、自分の音楽にはスカッとするものを入れ込みたくなったんです。
──その答えが、ロカビリーサウンドだったと。
紗羅 そうですね。元々ロカビリーが大好きで、聴いていてすごくスカッとするんです。もちろん、本気でロカビリーをしている人がたくさんいるからこそ、私がロカビリーに挑戦することが本当に許されるのかどうかは悩んだんですが、普段J-POPしか聴かないような若い子たちが、私というフィルターを通してロカビリー調の曲を聴き、こんなジャンルがあるんだって気付いてもらえたらうれしいなって思ったんです。
──歌詞はとても生々しくて、リアルですよね。
紗羅 そうですね。歌詞に“ピー”(※自主規制音)って入らないようにギリギリのラインで言葉を紡ぎました。
──女子の醜い部分がよく描かれていて……。
紗羅 ね! 私自身、こういう女性は嫌いですよ(笑)。でも、恋愛って相手に対しての信頼と不信のギリギリのバランスで保っているからこそ、ちょっとのことで普段の自分の醜い部分が露呈しちゃうことがあると思うんですよ。これはどんな女性でもあると思うんです。そんなギリギリの顔を出せたらいいなと思ったんです。
──「あの女 早く死んじゃえ」っていうフレーズはスゴイですよね。
渡辺 でも、あるよね。そういうふうに思うことは。
紗羅 うん。あると思うんですよ。
──男性から見て、この歌詞はどう思われますか?
渡辺 いや、この部分は男女ともに一緒だよね。ギリギリの部分でお互いを許したり、許さなかったりするから。
なんだか、親の気分なんですよね
──おふたりは普段恋の話はするんですか?
紗羅 してきましたね(笑)。包み隠さず、お互いの現状をつらつらと話したり……。
渡辺 紗羅マリーちゃんは悩みすぎて、肌に吹き出物が出ちゃったりしたんですよ。だから相談に乗ることはよくありましたね。
紗羅 でも、深いところまでは訊いてこないんですよ。だからすごく話しやすいんです。
渡辺 僕、余計なお世話はしないんですよ。見守るタイプなんです。
──今でもいい関係が続いているんですね。
渡辺 そうですね。Twitterとか見て、ちょっと落ち込んでいるかな、って思ったら「どうした?」ってメールはするし。それから本当に辛かったら最後に僕に相談しに来るだろうし。なんだか、親の気分なんですよね。実は昔、その共演していた音楽番組に知り合いのDJが来ていたんですよ。そのDJは紗羅マリーちゃんが音楽を始めるのを知って、「俺らと紗羅マリーちゃんで絡んでCD出しましょうよ! 売れますよ!」って言ったんです。その「売れますよ」という言葉に僕はキレちゃって(笑)。「そういうんじゃねえだろ!」って路上で大ゲンカになったんです。
紗羅 うれしい! そんなふうにまで思ってくれていたなんて!
渡辺 あはは。でも、紗羅マリーちゃんの音楽に対する気持ちが純粋なのは知っていたから、売れる売れないじゃなくて好きだからいい曲をリリースする、という気持ちじゃない人は近づいてほしくなかったんですよね。まあ、好きだからこそ、妥協ができないので大変なんですけど……。
うちの息子とコラボしてほしい!
──こんなふうに思ってくれる人がいるのは幸せですね。
紗羅 本当ですね! 私自身、まだ人のことを信じるのが怖いんですよ。だからこそ、心から信用できる人は5人くらい。少ないけど、その人たちがずっといてくれればそれでいいんで。
渡辺 いいよ、そのスタンスで。僕なんか40歳まで反抗期だったからね。それまではだいたい人のせいにしていたから(笑)。
──今は自分のせいだと受け止めるんですか?
渡辺 もちろん! やっと受け止める覚悟ができました(笑)。
──あはは。では、俊美さんから、これから進化し続けていく紗羅マリーさんにメッセージをお願いします。
渡辺 ゆっくりマイペースに、友達100人なんていらないから、少なくても信じられる人と素敵な信頼関係を作ってほしいなって思いますね。あとは、うちの息子とコラボをしてほしい! できたら息子と結婚して、紗羅マリーちゃんの本当のお父さんになりたいですね(笑)。
紗羅 あはは!(笑) 何年後か、あるかもしれないですね!(笑) 俊美さんこそ、変わらずそのまま素敵な人でいてください!
CD収録曲
- HONEY
- 一期一会
STYLE PHOTO BOOK
52ページにも及ぶ撮り下ろし写真+αで、紗羅マリーの頭の中をモロに解剖。
紗羅マリー(さらまりー)
1986年12月12日生まれのファッションモデル、歌手。10代の頃からモデルとしてキャリアをスタートさせ、現在もファッション誌やショーで活躍しながら、若い女性を中心に絶大な人気を獲得。2010年4月にシングル「Cherry / Gossip」で歌手デビューを果たす。その後、自身の作品を発表する傍ら、TOKYO No.1 SOUL SET、SEAMO、Miss Monday、K.J.の楽曲に客演で参加。2012年7月、約2年ぶりのシングル「HONEY」をCD+スタイルフォトブック形式でリリースした。
渡辺俊美 ソロデビューアルバム「としみはとしみ」/ 2012年6月13日発売 / 3000円 / felicity / PECF-1048 / felicity cap-149
CD収録曲
- 安らぎの場所
- 僕はここにいる
- 沈黙の言葉
- 死んでしまう事が...
- バニラ
- 夏の約束
- コトコト・グツグツ
- ピノキオ
- 気絶するほど悩ましい
- オトコのリズム
- rain stops, good-bye
- 夜の森
渡辺俊美(わたなべとしみ)
1966年12月6日生まれ、福島県出身のアーティスト。1990年に結成したTOKYO No.1 SOUL SETのシンガー、ギターとして、1995年にメジャーデビューを果たす。その後、ソロユニットTHE ZOOT16も始動。2010年には、ともに福島県出身の松田晋二(THE BACK HORN)、山口隆(サンボマスター)、箭内道彦(風とロック)と猪苗代湖ズを結成する。2012年2月にTHE ZOOT16のベストアルバム「Z16」、ジャズコンピレーション「BRUSHING WORKS INTER PLAY -My Favorite Swings- selected by TOSHIMI WATANABE」、3月にTOKYO No.1 SOUL SETのアルバム「Grinding Sound」を発表。さらに6月に初のソロアルバム「としみはとしみ」をリリースした。